2024年11月16日( 土 )

九州全体の連携を図り、持続的な発展を支援(1)

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九州経済産業局 局長 塩田 康一 氏

 九州は、自動車や半導体の生産拠点として国内で重要な役割をはたしている。また、成長著しいアジアに近い地理的優位性を生かしインバウンド需要を獲得するなど観光関連の市場も拡大している。一方、人口減少によって国内市場が縮小するなか、九州の農水畜産物の販路をアジアや欧米に拡大するため、九州全体としてのブランド化なども推進している。九州経済のけん引役である九州経済産業局の塩田康一局長に、九州の現状と今後の取り組みについて聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役・児玉 直)

自動車、半導体産業が好調

 ―「アベノミクス」景気と言われ、建設や不動産など景気の良さを実感する分野もありますが、九州全体ではその実感が乏しいように感じます。まずは、今後の九州一体の経済浮揚策の要について、経済産業局では、どのような政策が必要だと考えていらっしゃいますか。

 塩田康一局長(以下、塩田) 九州経済をマクロで見ると、業種や地域で多少ばらつきはあると思いますが、全般的にはだいぶ良くなっています。九州地域の経済動向について、毎月、定例記者会見で発表していますが、鉱工業指数や個人消費の動向なども含めた全体の基調判断としては、緩やかに改善してきていると思います。

 とりわけ、基幹産業である北部の自動車と半導体関連が非常に調子が良いですね。自動車も2012(平成24)年以来の高い生産水準で、昨年1~10月までの累計生産台数は約118万台と過去2番目の高水準です。

 半導体もIoT関連の需要が非常に旺盛で、皆さま調子が良いようです。南部を中心に農業も大きな産業です。九州は全国の「一割経済」といわれるなかで、農業は2割ほどを占めており、最近は農産物の輸出などの動きも大きくなりつつあります。

 景気は、全体としてマクロでみれば良いという感じは受けていますから、これをどこまで持続、発展させていくかということになります。他方、アメリカと中国の貿易摩擦の問題もあり、そのあたりの先行きがどうなるかを注視していく必要があると思っています。

 自動車では、EV化に向けてシフトしていくと言われていますが、今のまま製造拠点が維持されるか、部品の変化に九州の関連企業やサプライヤーがどのように対応していくべきか、EV化に対応した技術をこれからどう磨いていくかというようなことが課題と思われます。

 半導体は短期的な需要の増減はあるかもしれませんが、中長期的に見れば、第4次産業革命やAI、IoTなどの関連で半導体の需要そのものは世界全体で大きくなっていくと見ています。

 アメリカと中国の2国間の問題の影響など懸念材料もありますが、中長期的には九州においても引き続き好調に推移するでしょう。一方、半導体の多品種少量生産に対応するため、従来型の大型のクリーンルームではなく、非常に小さな装置で半導体チップの多品種少量生産を低価格で実現するミニマルファブという半導体製造システムの開発など新しい流れに対応する取り組みも必要になるでしょう。

 九州ではインバウンドも好調です。クルーズ船寄港回数が18年11月までの時点で、前年同期比が約15%減りましたが、全体的には非常に増えています。インバウンド向けのサービスや体験などのプログラムをつくるなどして、それをうまく発信するようなかたちでの取り組みを今後も引き続きやっていく必要があると考えています。

(つづく)

【文・構成:宇野 秀史】

<プロフィール>
塩田 康一(しおた・こういち)

1965年10月生。鹿児島県出身。東京大学法学部卒業後、88年4月通商産業省入省(大臣官房企画室)。2002年6月外務省在イタリア日本国大使館一等書記官、05年6月商務情報政策局環境リサイクル室長、11年7月製造産業局鉄鋼課長、12年6月中国経済産業局総務企画部長、14年7月内閣官房地域活性化統合事務局参事官、16年6月内閣府本府地方創生推進室次長、17年7月大臣官房審議官(産業保安担当)などを経て18年6月九州経済産業局長に就任。

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