【検証・野党再編】選ばれるのは、大きな塊=強い野党か、「違いはあるがアベよりまとも」か~小沢氏と枝野氏の埋まらない溝
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「強い野党」にこだわる玉木代表~橋下氏に熱視線も、原発政策は不透明
「来週、橋下徹さんと玉木代表がネット番組で対談する日程調整をしています」
こう話すのは、将来の合併を視野に自由党との統一会派結成に踏み切った国民民主党の関係者。28日配信の「国民民主党と自由党の統一会派・合併の行方~原発政策と橋下徹氏擁立の有無がポイント」で紹介した通り、国民民主内には『政権奪取論――強い野党の作り方』を出版した橋下氏に期待する声があり、「立憲民主と共産党を除く野党と無所属で統一会派をつくり、事実上1つの政党にしたうえ、やがて立憲との連携につなげる。そのときのトップは橋下にする」(11月24日号の『週刊現代』)という“橋下氏擁立案”が語られているという。
このシナリオに沿って玉木雄一郎代表が本格的に動き出すのか。1月28日午後6時すぎ、小沢一郎代表との有楽町駅前での初街宣を終えた囲み取材で聞いた。
――橋下徹さんと組むことはあり得るのですか。
玉木代表 彼はいま政治家ではありませんから、すぐに何かすることはないと思いますが、まあ、いろいろな人とお話は、政治家、民間人関係なく、コミュニケーションはとっていきたいと思っています。
――橋下さんは、小沢一郎さんと前原さんと昨年会っていますが、政界復帰もあるのでは。
玉木代表 それはわかりません。
――橋下さんに対する評価は。
玉木代表 ツイッターで時々やりとりをしています。橋下氏との意見交換の可能性を否定せず、重要法案成立などで安倍政権を補完してきた維新批判もしない玉木代表からは、橋下氏への共感ぶりが透けて見える。この日の街宣でも、“橋下本”のタイトルにある「強い野党」という表現を使って次のように訴えた。
「私たち野党が強くなって力を合わせて、『強い野党』となって安倍政権にしっかりと向き合っていかなければなりません。今回の小沢一郎代表の自由党との統一会派は、そんな大きな新しい政治をつくっていくための第一歩です。第一章では終わりません。第二章、第三章、第四章と。そして働く皆さまのために、普通に頑張る皆さまのために、一生懸命働く政府をつくっていきましょう」。
「強い野党」という言い回しは玉木代表のお気に入りらしく、1月26日のブログ「自由党との統一会派について」でも3回登場していた。「何が違うかではなく、何が同じかを見出しながら、塊を大きくして強い野党をつくっていかなくてはなりません」「何とか今の膠着状態を打破し、強い野党の結集につなげていきたい」「今回の自由党との連携強化は、あくまで、野党の大きな塊をつくるための『第一歩』です。引き続き、協力が得られる政党や会派とは、『強い野党』をつくるための協議を積極的に続けていきます」。
“橋下本”のタイトル発信の玉木代表から橋下氏野党連合トップ擁立に向けた熱意が伝わってくるのは確かだが、もう1つのポイントである「原発政策の食い違い」については冷ややかな回答しか返ってこなかった。
――自由党は原発ゼロ政策。これに対して国民民主党は条件付き再稼働容認と、原発政策に食い違いがあるが。
玉木代表 国民民主党(が目指しているの)は2030年代原発ゼロなので。自由党も原発ゼロ、我々も原発ゼロ、そういうことです。
――現時点の原発再稼働についてはスタンスの食い違いがあります。
玉木代表 各党それぞれ、いろいろな違いがあると思いますが、ただ明確にゼロを掲げているという意味では同じですので、あとは山の登り方、辿り着き方の違いだと思いますので、具体的には廃炉をどうしていくのか。廃炉の費用を誰が出すのか。どうやって調達するのか。技術者をどうするのか。こういったことを1つひとつ具体的に詰めて、原発ゼロにつながる道筋をしっかりと描いていきたいと思います。
――原発ゼロ政策について、電力総連(労組)は説得できるのですか。原発ゼロ法案の時もだいぶ反発していましたが。
玉木代表 すでに2030年代原発ゼロということで合意をいただいていますので、それをいかに具体化、精緻化していくことだと思います。玉木代表が剛腕の小沢代表を見習って、原発ゼロ政策に抵抗してきた電力系労組(電力総連)を説得して、自由党の原発ゼロ政策で一致する政策転換をすれば、両党の合併はプラスに働くだろう。しかも小沢代表提案の参院選統一名簿に対して、立憲民主党の枝野幸男代表が不参加と表明した大きな理由が原発政策の食い違いであったことから、統一名簿実現の可能性を高めることにもなる。
しかし国民の関心が高い原発政策のギャップを埋めないまま、国民民主党と自由党が合併すれば、山本太郎参院議員が離れる可能性が高いことに加え、支持者離れを逆に招いてしまうのは確実だ。「大きな塊=強い野党」と考えているようにみえる玉木代表が、原発などの重要政策の一致の重要性をどこまで認識しているのかは疑問なのだ。
統一名簿構想を一蹴する枝野代表~野党連携のかたちを模索
このままでは、野党結集どころか立憲民主党との距離感が広がる可能性もある。枝野代表は一貫して「大きな塊=強い野党」論を否定しているからだ。枝野代表は昨年11月2日の明治学院大学での講演で次のように訴えていた。長くなるが、引用したい。
「自民党はなかなか壊れないので、それに対抗する大きな政党をつくらないといけないと、私も間違えていました。『おかしいな』と思いながらずっといたのですが、みんながそう言っているので同調圧力に負けたのです。ところが選挙はそんな単純なものではないのです。『1足す1は2』というのが算数の世界ですが、政治は違うのです。有権者の意思というものは。
総選挙の前まで民進党に属していた人間が事実上、2つに分かれました。希望の党と立憲民主党。民進党での直近の全国の比例代表の得票数は1,000万票を切っていました。(しかし、選挙では)立憲民主党だけで1,100万票を取りました。希望の党も900万票取りました。『1割る2が2』になったのです。900万票しか取れていない政党が2つに分かれて選挙をやったら2千万票を取った。『1割る2が2』なのです。逆に、その2つの政党がくっついたら『1足す1が2』になるのでしょうか。ならないのです。『1足す1が0.5』になったりするのが政治なのです」
「有権者はわかりやすさを求める。とにかく大きな塊をつくることをやってきたことを反省しています。徹底して政策の明確さを出していく。安倍首相がそうです。自民党の支持者でさえ、安倍首相は右翼と思ってしまう。そういう人がいても明確な方向性を出す。それがわかりやすい。それに対抗するのに『自民党でなければまとまる』という話をして最悪の路線を取ってきた。自民党の政治がひどいから変えないといけない。よりましなものにする。そこから先の違いに目をつぶって大きな塊になってしまったら、どこからも支持してもらえなくなる。むしろそれぞれの党は『我が党はこういう党です。我が党はこういうことを目指しています』と違いを示したうえで、『(野党各党で)違っているけれども、今(の安倍政権)よりもましでしょう』ということを共有して、連携することはある。でも1つの政党になってしまったら政党としてどっちを向いているのかわからなくなるので、大幅に議員が減る。『1足す1が2』にならない。だから大きな塊にはならない。ましてや『(参院選の)比例名簿を1つにする』という訳のわからないことにはやらない。原発政策が典型です。180度違う政策を取っている政党が統一比例名簿になったら、どっちも投票しませんよ。ということを昨年の衆院選で、国民の皆様から教えられた」。
合併に向けて動き出した玉木代表と小沢代表が「大きな塊=強い野党」論であるのに対して、枝野代表は明確に否定している。野党連携が進まない根底にはこうした認識のギャップがあるといえるのだ。
【横田 一/ジャーナリスト】
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