2024年11月23日( 土 )

日本のクルーズ振興のカギは中国・海外船社経営者から船上カジノ緩和求める声も~福岡クルーズ会議

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パネルディスカッションには、各船社経営者が登壇した。

 世界のクルーズ船社経営者らが出席する「福岡クルーズ会議」(福岡市主催)が1月30日、アクロス福岡で開かれた。国内外のクルーズ業界関係者、自治体港湾担当者ら約300名が参加する中、世界シェアの1割を占め、急速な成長を続ける中国などアジアのクルーズ市場への各船会社の対応、博多港など九州各地のクルーズ船受入れ体制などをめぐり、話があった。

 国土交通省によれば、2018年の訪日クルーズ旅客数は245万人、クルーズ船寄港回数は3000回近くに達し、いずれも過去最高を記録している。このなかで、博多港への寄港回数は279回を数え、4年連続日本一となっている。クルーズ船受入れをめぐっては、インフラやおもてなしなどによる自治体間の誘致合戦の様相を呈している。

 近年、日本に寄港するクルーズ船の多くは、中国からのショートクルーズが多くを占めており、その多くは距離的に近い九州に寄港している。日本、九州のクルーズ振興のカギは、中国が握っているといえる。中国には現在、200万人を超えるクルーズ需要があり、今後さらなる需要増加が見込まれている。現地国営企業がクルーズビジネスに乗り出すなど、新たな商品開発などをめぐって、船社間の競争なども激化しており、各社戦略の練り直しを迫られている。

 船社からは「日本は、中国クルーズ船の目的地としてベストのポテンシャルをもっている」「上海就航便については、博多港がベスト」などと高く評価する声が相次いだが、「船上カジノに関する規制を緩和してほしい」「入国審査の時間を短縮してほしい」「各寄港地の魅力が似たり寄ったり。もっと特化する必要がある」などの注文も出た。

 基調講演に立ったロイヤル・カリビアン・インターナショナルのジナン・リウ氏は、世界のクルーズ旅客数は約2,800万人(2018年)。そのなかで、中国などアジア地域は、わずか10年の間に世界シェアの1割を占める市場へと急速な成長を遂げたと指摘。中国では今後も、中間所得層を中心に需要増加が見込まれていることから、各船社では旅客数5,000人規模の大型クルーズ船を新造している。中国は世界最大のクルーズ市場になる可能性があるが、そのためには、日本を始め目的地のインフラ整備、魅力の向上が重要だなどと述べた。

 船社6名によるパネルディスカッションでは、旅行代理店を通じた商品販売から、各船社による直販にシフトしている現状について紹介。「販売チャネルの多様化により、商品を差別化できる」「直販率は将来的に増えていくだろう」などと指摘した。目的地としての日本の寄港地のあり方をめぐっては、「その土地ならではのユニークな体験ができることが必要だ」「リピーターを増やせるかが、クルーズ市場形成のカギになる」などと提言した。

各船社からの登壇者は以下の通り。
 ▽ジナン・リウ(ロイヤル・カリビアン・インターナショナル中国・北アジア太平洋地区社長)▽ポール・チョン(カーニバル・アジア/カーニバル・コーポレーション&PLCビジネスディベロップメント担当副社長)▽ゲリー・ロバート・ラーション・フェッド(コスタ・グループ・アジアマリンオペレーション担当副社長)▽ヘレン・フゥアン(MSCクルーズ中国担当社長)▽アレックス・シァン(ノルウェージャン・クルーズライン・ホールディングス中国担当社長)▽マーカス・リン(ゲンティン・クルーズラインポートオペレーション担当第2副社長補佐)

【大石 恭正】

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