2024年12月26日( 木 )

【検証・野党再編】ついに実現、「小沢×玉木×橋下」のそろい踏み~玉木氏は橋下擁立に手ごたえ

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小沢氏が橋下氏に「秋波以上のものを送った」? 

橋下徹氏と玉木雄一郎代表と小沢一郎代表がネット
番組で対談(店内での囲み取材に応じる玉木代表)

 前回記事で「橋下徹さんと玉木代表がネット番組で対談する日程調整をしています」(国民民主党関係者)と紹介した翌31日、ネット放送「AbemaTV」で橋下徹・前大阪市長と玉木雄一郎代表、さらに小沢一郎代表との三者対談が実現した。統一会派結成をしたばかりの国民民主党と自由党の両代表は対談で、橋下氏に政界復帰を強く働きかける「秋波」を送り、国民が期待できるような政治をやらないといけないことでは一致したという。

 三者対談は生放送ではなく、2月7日夜に放送予定。六本木の収録現場への立入は禁止だったが、収録後に玉木代表はすぐ近くの飲食店で囲み取材に応じて「今日は3人で会ったことがニュースだ」などと熱っぽく語り、最後は上機嫌でカラオケで持ち歌を何曲も披露して帰路についた。

囲み取材後、カラオケで
何曲も披露した玉木代表

 みぞれ交じりの雨が降りしきる31日午後9時すぎ、六本木の収録現場に最初に姿を現したのは玉木代表。「何を話すのですか」と聞いても笑みを浮かべただけで具体的には語らず、続いて直前に飛び入り出演が決まった小沢代表に同じ質問をしたが、「僕は聞いていない」の一言。最もガードが堅かったのが橋下氏で、番組スタッフが「私人ですから」と取材厳禁を要請する中、入口で止まったワゴン車のスライドドアが開くと、中のスタッフがまず人垣をつくって報道関係者の接触を遮断したうえで、最後尾に座っていた橋下氏がスタジオ入りする大物芸能人並のVIP扱いだった。

 番組収録は午後9時40分から1時間。終了後は小沢代表が何も語らずに車に乗り込んだのに対し、玉木代表は「どんな話をしたのか」との直撃に対して、「いやー、面白かったよ。小沢さんが(橋下徹さんに)しきりに働きかけていたよ」と答え、近くの飲食店を借り切っての囲み取材に応じた。10名ほどの記者がカウンター席とボックス席に座り、ボックス席の玉木代表の熱弁に耳を傾けた。

 三者対談は、すでに決まっていた橋下氏と玉木代表の対談予定を小沢代表に直前に伝えて急きょ実現したという。『橋下×羽鳥の番組』(2016年4月から2017年9月)に何度も出演した玉木代表は、橋下氏とは「時々会って食事をする仲」という。「森友問題の時も一緒に出ていました。(野党が)ガンガン追及していく頃で橋下さんは『追及しないと政府の規律が緩むから』と評価してくれた」(玉木代表)と評価し合う関係のようだった。そこで、「結局、橋下さんは政界復帰に前向きなのか」と聞くと、玉木代表は「(橋下氏が政界復帰を)否定する理由が『自分は嫌いな人を含めてまとめるのができませんよ』と言っていたのですが、逆にいうと、それだけしか理由がない」と強調、政界復帰説得に自信を見せた。『政権奪取論――強い野党の作り方』を出版した橋下氏への期待が滲み出てくるような話ぶりだった。

 続いて玉木代表は「(三者対談ではカメラを)全部、回したまま。それでも結構面白い話が出た。さすがにカメラが回っているので、それほど突っ込んだ話は出なかったけれども、かなり面白かった」と収録を振り返ると、秘書が「小沢さんが、橋下さんに秋波以上のものを明確に送っていました」と明かした途端、「ハメハメ波を送っていた」と玉木代表が補足して笑いを取るなど、次第に橋下氏の政界復帰をめぐって盛り上がってきた。

橋下氏は、「安倍には歯向かわないが、自民党には歯向かう」感じ(玉木氏)

 「(橋下氏の出馬については)『比例でどうだ』ぐらいの話ですか」との質問に、玉木代表は「もっと大きな話」と意気込み、「(国民民主党内の声である)『野党のアタマになってもらいたい』とか、そんな感じですか」「(立憲民主党と共産以外で)統一会派をつくった後、橋下さんを野党のアタマにする」という週刊現代の話は現実味を帯びているのか」と聞くと、玉木代表は「週刊現代に聞いてください」とはぐらかしながらも、「いろいろな話をした」「(橋下氏とは)『国民が期待できるような政治をやらないといけないな』ということでは一致した」と意気投合したことを明かした。そして「まあ、時代を動かして行こう(ということ)」と、次第にテンションアップ。

 支持率が1%程度で低迷する国民民主党内から、「メデイア露出度抜群の橋下氏を担ぎたい」という待望論が出てくる事情はわからないではない。しかし、橋下氏と松井一郎大阪府知事は、安倍首相や菅官房長官と定期的に会うなど政権とのパイプが太く、野党が反対した対決法案(安保法制や特定秘密保護法やカジノ法案など)に賛成する見返りに、大阪のインフラ整備促進やカジノと一体の大阪万博誘致への協力などの恩恵に預かってきた。安倍政権補完と地元への利益誘導がギブ・アンド・テイクの関係で、橋下氏は「古き田中角栄型政治の代表選手」「『政権奪取論』は『政権補完論――利益誘導型弱いゆ党(与党か野党か分からない中間的政党)の作り方』というのが実態」と批判されてもおかしくない。そこで、「橋下氏は菅官房長官や安倍首相とひんぱんに会っていて、仲が良いのでは」と聞くと、玉木代表はこう答えた。

 「安倍さんがやっていることも小沢さんは全否定だったけれども、橋下さんは『“いいところはいい”と言った方がいいじゃないですか』と言っていた。(橋下氏は)『安倍さん(政権)の時に攻めよう』という気はないと思うけど、『安倍さんの後は(橋下氏の政界復帰など)いろいろなことがあるのではないか』という感じは受けたね。安倍さんには歯向かわないけれども自民党には歯向かうという感じです」。

 この瞬間、「そんなぬるいことを言っていたら、安倍4選は結構あるのではないですか」との質問が飛んだ。これに対して玉木代表は「(4選は)あるね。だから、そこは厳しく言った。そうしたら(橋下氏は)『民間人だから』と(答えた)」と釈明。重ねて「橋下さんは『今の安倍政権を倒す』という姿勢ではないのか」「過去の『ゆ党路線』は否定して、生まれ変わるという感じなのか」と確認すると、玉木代表はこう答えた。

 「今日はそこまで明確に言っていなかったが、ただ倒すことをやらないと。今までの維新の“ゆ党”ホジションではない。『やるなら、野党として、強い野党としてガンとやる』という感じでした。今日は3人で会ったということがニュースだよ」「いわゆる国政、これは(橋下氏の『政権奪還論』という)本にも書いてあるが、今やっている国政の維新議員が自民党かなんだかわからないポジションにあることは否定的だ」。

 カジノ法案をめぐるギャップについても「橋下氏とはカジノ法案などでだいぶ考えが違うところがあったではないか。その辺のギャップは埋まったのか」と聞くと、「受け皿でできることですね。それで、政策の調整が始まることが大事です」と玉木代表は答えて、質疑応答が続いた。

カジノ賛成とパチンコ規制強化で、橋下氏と玉木代表は一致

―― “橋下本”のなかでは、安倍政権に協力をして大阪でハコモノ・インフラ整備をしてうまくいったという利益誘導型(手法が書かれている)。
玉木代表 過去のことは評価しているけれども、その先は完全野党という感じだった。

――「(維新が)ゆ党的な恩恵に預かって成功したのだ」と書いてある部分もある。
玉木代表 それはそうでしょうね。今まで、それでやってきたし。
 

――それでは、(橋下さんは)ゆ党路線を否定するようになったということですか。
玉木代表 そういうトーンが強まっている感じはしましたね。

――だったら一気に安倍政権打倒で突っ走れば良いのでは。
玉木代表 (橋下さんを受け入れる)態勢ができればね。

――党内に橋下アレルギーはないのか。
玉木代表 すぐ(橋下さんと一緒に)やるとは決めていないから。

――国政維新と橋下さんの考え方は違うのか。
玉木代表 違う。国政維新は潰れた方がいいと言っている。大阪維新は思い入れがあると思う。国政と地方は分かれてもいいのではないか。

――大阪維新にこだわりがあることはIR、カジノ推進でしょうし、そのへんは大分食い違うのではないか。
玉木代表 小沢さんはIR議連のメンバーなのですよ。

――でもカジノ法案反対していた。
玉木代表 法案はできが悪いから。

――条件付カジノ賛成なのか。
玉木代表 私はカジノ賛成派です。ただ条件がある。パチンコを廃止しろと。パチンコを廃止してカジノに一本化する。そして包括的な依存症対策を講じるというのが私の従来から言っていることです。北朝鮮にお金は流れ、依存症は増えて、主婦は自殺する、これ(パチンコ)は絶対に止めた方がいい。でも金をもらっている人がいるからできない。カジノなんて可愛いものだ。「日本にはびこる巨大なカジノ産業のパチンコをなくせよ」ということを言わずに。

――海外のカジノ業者に日本人の国富が流出する話があるのではないか。
玉木代表 (パチンコ業界から)北朝鮮に流れるよりもいいのではないのか。パチンコから流れているお金のほうが(カジノ法案成立で国内に)カジノを3カ所つくるよりも大きい。

――1回で損する額が(パチンコより)カジノのほうが大きいではないか。
玉木代表 上限規制をすれば良い。パチンコなんか細かく庶民の人の金を巻き上げて。金を持っている人はカジノでスってもいいのだよ。

 ちなみに1月に出版した橋下徹著『沖縄問題、解決策はこれだ! これで沖縄は再生する』のなかで橋下氏は、沖縄へのカジノ誘致構想を熱っぽく語りながら、パチンコ批判をしていた。「カジノ賛成とパチンコ規制強化」でも橋下氏と玉木代表は意見が一致していたのだ。

 しかし橋下氏に熱い視線を送る玉木代表に対しては、野党国会議員や政界関係者から冷ややかな声も出ている。

 「安倍政権の補完勢力を続けてきた橋下氏を野党連合のトップに担ぎ出すことになれば、かえって野党分断と支持者離れを招くのではないか」「小池百合子都知事を希望代表に担ぎ出したことで、民進党がバラバラになった二の舞になりかねない。民進党支持率低迷の打開策として前原誠司代表(当時)も基本政策のすり合わせが不十分なまま、知名度の高い小池知事に飛びついて野党分裂を招いて安倍政権をアシストした。同じ失敗を繰り返そうとしている」。

 玉木代表と小沢代表の「橋下氏政界復帰・擁立」への熱意は伝わってきたが、安倍政権打倒のための「強い野党」結集にプラスなのかマイナスなのかは見極める必要がある。橋下氏の動向がダブル選挙も取り沙汰される今夏の参院選に大きな影響を与えることは間違いない。

【横田 一/ジャーナリスト】

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