2024年12月04日( 水 )

【政商・日建設計】と行政の結託(前)

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

 昨年10月にオープンした豊洲市場の建築物について、私は建築構造専門家の立場からそれらの建物が「重大な耐震強度不足を抱えている事実」を指摘し警告を発してきました。これに端を発する現在進行中の豊洲市場の設計偽装(設計は日本最大手の日建設計)に関する裁判についても発言を重ねてきました。

 その経過は、平成28年に日建設計の設計偽装を指摘し、日建設計・東京都・日本建築構造技術者協会(JSCA)の森高会長(豊洲市場問題プロジェクトチームの委員でもある)などに対して、耐震強度不足の事実の根拠を添付し質問状を送付しました。また東京都議会議員全員にも文書を送付し、都民のために事実認識と詳しい技術説明をするよう求めました。

 私は建築構造専門家として「是は是・非は非」という立場で追及したのですが、建物の設計者である日建設計および東京都、またJSCAからは何1つ回答が得られませんでした。

 東京都の貴重な税金を注ぎ込んで建設された豊洲市場は、多くの市場関係者が毎日仕事に携わる場であり、国内外から大勢の観光客が詰めかけ、さらに都民の台所でもあります。その豊洲市場の建築物について 構造上の安全性に払拭しがたい重大な問題点を抱えていることを指摘されながら、完全無視を続ける日建設計や東京都の姿勢をどう理解すればいいのでしょうか?

 日建設計や東京都は、「都民や豊洲市場の来場者の安全などは重大な問題ではない」とでも考えているのでしょうか?

 二者の沈黙から「日本最大手の設計事務所」と「行政である東京都」との間に深い癒着の構造が存在しており、質問に対して安易に回答できない姿が浮かび上がってきます。

 豊洲市場問題プロジェクトチーム(以下「PT」)においても、東京都は 事実隠蔽に奔走する姿勢を貫いているので、本裁判でも東京都は、内容のまったくない形式的な虚偽の技術書面の提出に終始しています。

 豊洲市場を設計した日建設計は、日本最大手の設計事務所であり、設計に関わった物件の数もまた最大数です。それらの建物において 豊洲市場と同様の構造設計の偽装が行われていた場合、一体何十件・何百件の建物に影響がおよぶことになるのか?と憂慮されます。

 この設計偽装については、豊洲市場問題PTにおいて徹底的に追及すべきでしたが、残念ながら追求は皆無でした。PTの場においてさえ、日建設計の偽装に満ちた回答説明(業者のカタログにも巧妙に手を加え)に対して、PTの専門委員たちも完全に偽装を見抜けませんでした。PT内の力学的要素が働いて、騙されたふりをせざるを得ない状況だったのかも知れません。

 事前にPT各委員が質問を封じ込まれたことなども判明しており、この問題の根深さを象徴しています。税金を投下した市場問題PTは、何のための第三者委員会だったのか、都民やマスコミの批判をかわすための単なるガス抜きの儀式だったと言わざるを得ません。これでは耐震構造の偽装や違法建築が行われても、行政に都合の良い特殊フィルターをかければ、問題点はもみ消され無罪放免となってしまいます。

 日本を代表する大都市東京都が 「人命に関わる重要な法規に違反する建築物を看過している」というこの事実はとても異常な事態です。これは悪質な犯罪ともいえるのではないでしょうか? 

 この異常な事実が世間に知れわたれば、東京都は 世界にとんでもない恥を晒すことになります。オリンピックを直前にして、東京都のこの大失態は関係者に大変な不信感を与え、大会の開催や運営にも影響する深刻なダメージを与えることは避けられません。

(つづく)

(後)

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