2024年11月30日( 土 )

翔んで上海~現地視察レポート(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

どこまでやるか アダルという勇気

 カントリーリスクも同じだ。かの国を利用し、自利を図れば、そこに必ず問題が発生する。以前は輸出のための加工工場を目的にして日本企業が大挙して中国に進出した。しかし、中国内需の高まりで、その構造が変化する。一例がチキンの加工工場だ。当初は中国で加工し、日本に輸出するかたちだったが、いつの間にか中国内需の高まりで、その出荷が中国国内に向けられるようになった。その後の展開が合弁先による企業の乗っ取りだ。国内向けだけで収益の確立が見えた途端、合弁相手が会社を政治的な手法で日本企業から取り上げるというやり方が日常化する。

 さらに今は生産コストの上昇だ。かつては日本の5分の1以下だったそれが、今や我が国のそれとほとんど変わらなくなってきている。一方、この四半世紀で、かの国の技術は我が国とそん色ないレベルまで向上した。

 それを意識して、かの国にさらなる傾注をしているのが福岡市に本拠を置く業務用家具メーカーのアダルだ。現地会社のトップとナンバー2は中国人女性姉妹である。

 アダルの創業会長は、おそらく企業を個人に帰属すると考えていない。企業は別人格という極めて明確な考えで、迷うことなく中国に新たな投資をした。カントリーリスクというエクスキューズに終わることなく、それを克服するために積極果敢に現実に挑戦する。まさにそこにチャイナドリームがある。建物面積10,000坪の新工場を建てたこの企業は、厳しい競争のなかでもおそらく強かに生き抜いていく。

 格差がエネルギーを呼び、自分しか寄る辺のない環境。チャイナドリームはかつてのアメリカンドリームと同じだ。格差がエネルギーを呼ぶ。自分優先は寄る辺のなさ。甘えが許されない。日本はアメリカに習い、中国は日本に習い、途上国は中国に習う?

 かくて歴史は繰り返す。日本ではその構図がもはや消えて久しい。

コンビニ

 ローソンやファミリーマートといったコンビニもあるが、上海周辺に展開する地元コンビニは国営の「好徳」だ。中国便利店発展報告によると国営と外資FCで10万店を超す店舗がある。売上は1,900億元。市場実績は小さい。

 国営コンビニの日商は10万元。日系の3分の1でしかない。面白い逸話がある。国営コンビニ好徳のある店舗が、ある日から突然日商が1万元になった。あわてて副社長が飛んできて原因を調べると、すぐ近くにファミリーマート(中国全家)が新規出店した結果だということがわかった。甘いマーケティングで主婦をターゲットにした加工食品中心の便利店舗は 惣菜構成を高くして若者をターゲットにした日系のコンビニに完敗した。中国にはもともと冷たいおにぎりや弁当を食べる習慣がない。しかし、そのタブーにあえて挑戦し、若者に視点を当てた日系コンビニは消費者の支持を得た。しかし、人口比で見る中国のコンビニ数は我が国の6分の1。これからまだまだ増加するだろうから、その過程でこの差がどうなるかは分からない。

何百年も焼けなかった黒い村

 1300年の歴史をもつ水郷烏鎮。そこではいまも人が暮らしており、古来の手法で伝統的な酒がつくられ、干し肉がつくられている。しかし、それは毎日大挙して押しかける観光客用だ。

 この村にはある奇跡がある。それは木造家屋の集合にもかかわらず、何百年も火災を出さなかったことだ。屋根の神獣こそないものの、故宮を連想する地主の家が、そのまま残されている寝室は、まるでミニ故宮だ。消火ポンプを置いた小屋もある。そこに印された龍の彫刻。龍は嵐を呼び、雨を降らせる。いわゆる『龍吐』だ。やはり中国は奥深い。

(了)

(中)

関連記事