ブロックチェーンの覇権をめぐる熾烈な戦い 全力で基盤を築き上げ、新たな市場の創造へ(前)
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(株)chaintope 代表取締役社長/(株)ハウインターナショナル 取締役会長
正田 英樹 氏
(株)ハウインターナショナル代表取締役社長
田中 貴規 氏福岡県飯塚市に開発拠点を置き、「アジアのシリコンバレーe-ZUKAの実現」というビジョンを掲げる(株)ハウインターナショナルと、関連会社の(株)chaintope(チェーントープ)。今、両社が連携して全力で進めているのが、ブロックチェーン(※)の基盤技術の研究開発だ。業界は今どういう状況にあるのか、これから何が起ころうとしているのか――。ハウインターナショナルの正田英樹会長と田中貴規社長に聞いた。
(聞き手:永上 隼人)※ブロックチェーン:「ブロック」と呼ばれるデータの単位を生成し、鎖(チェーン)のように連結していくことによりデータを保管するデータベース。「分散型台帳技術」「分散型ネットワーク」ともいわれる。各ブロックには、タイムスタンプと前のブロックへのリンクが含まれており、理論上は一度記録すると、ブロック内のデータを遡及的に変更することはできない。仮想通貨などを始め、さまざま分野での活用が期待されている。
故・高橋剛氏が結んだ縁、全力投入するための新体制へ――まずは今回、田中社長が(株)ハウインターナショナル(以下、ハウ)の代表に就任された経緯について、お聞かせください。
正田英樹会長(以下、正田) 我々はもともと、同じ時期に九州工業大学情報工学部(以下、九工大)でともに学生時代を過ごした仲間です。私と田中、そして昨年亡くなった高橋剛が、それぞれ学生委員会や学生自治会、新聞会などの大学内の団体の責任者を務めていて、新入生歓迎をする機会に顔を合わせたのが出会いのきっかけでした。卒業後、私と高橋はハウを立ち上げ、ずっと一緒に事業をやってきていたのですが、一方で田中とは疎遠になっていました。
田中と再会するきっかけとなったのは、2018年3月24日、高橋が滞在中のインドで交通事故によって亡くなったことでした。高橋はハウの創業メンバーの1人ですし、高橋家とハウとで合同葬を執り行ったのですが、そこで私は田中と久しぶりの再会をはたしたわけです。高橋が亡くなったことは非常に悲しく、またハウにとっても大きな痛手ではありましたが、田中と再会できたのは、ひょっとすると高橋が結んでくれた、改めての縁だったのではないかと思い、お互いの近況報告でもしようかと、葬儀から1週間後くらいに彼と再び会うことにしました。そのとき、「今、ブロックチェーンをやっていて、そこに高橋剛も最後の命を注いだ」「ゆっくりしている場合ではないのではないか」といった話をしたのですが、彼はすぐに「ぜひ一緒にやりたい」と言ってくれて、それから2カ月も経たないうちに参画してくれました。
田中貴規社長(以下、田中) 4月に葬儀に行った際に正田と再会し、その後にブロックチェーンの事業に関する話を聞き、5月の連休後くらいのタイミングには、すでに参画する意思は固めていました。当時勤めていた会社にも話を通し、「ぜひとも行って頑張ってこい」と送り出してもらって7月末に退職し、8月から(株)chaintope(以下、チェーントープ)に入りました。
――すぐに参画する決意を固められたそうですが、田中社長はブロックチェーンのどういったところに魅力を感じられましたか。
田中 ブロックチェーンについては、ニュース記事などでテクノロジー的に「面白いな」と思って見てはいたのですが、まだその時点では、自分が携わる話ではないとも思っていました。ところが、高橋の訃報を聞いた後、彼の名前が「ブロックチェーン」で検索するとヒットするくらいの有名人になっているということを初めて知ったのですが、そのときに「あのブロックチェーンの技術を高橋がやっていたんだ」「ここで終わらせてしまうのは非常に惜しいな」という思いと、「高橋がやろうとしていたことを追っかけたい」「彼が何をしようとしていたのかを掘り下げたい」という気持ちが強く湧き上がりました。そこから正田に「どういう技術なのか」「チェーントープという会社、ハウという会社は何をやろうとしているのか」といった話を聞かせてもらうなかで、技術そのものに惚れ込んだといえます。
ブロックチェーンはやはり面白い技術ですし、今から20年前くらいのインターネット黎明期に、ウェブの技術やインフラなどが一気に広がっていったときと同じような、世界的な“波”が来ることを確信しています。その波がきたときに、自分がその波に乗っているという当事者でありたいという気持ちが強く、先ほどお話ししたように参画する決意を固めた次第です。
正田 そうして田中が我々に参画したわけですが、18年9月にチェーントープが外部のVC(ベンチャーキャピタル)から資金を調達しようとした際に、私が言われたのが、「機関投資家から資金を入れるのであれば、もうそこに集中してください」「ハウとチェーントープの両方の社長は困ります」ということでした。そこで悩んだのですが、本当にギリギリのタイミングで田中をハウの取締役に就任させ、今年1月から代表取締役になってもらいました。また同時に私は取締役会長となり、現在はチェーントープの代表取締役社長として、そちらに集中させてもらっています。
――田中社長に任せてみようと思った決め手は何でしょうか。
正田 それはやはり信頼と適正、そして、同じ方向を向いている、ということでしょう。学生時代から知っていますが、彼は逃げませんからね。これからハウとチェーントープとが足並みをそろえてともに成長をしていくフェーズに入っていきますが、現在のさまざまな状況において、今回の判断は、ひょっとしたらベストではないのかもしれませんが、間違いなくベターな選択ではあると思っています。
(つづく)
【文・構成:坂田 憲治】<COMPANY INFORMATION>
(株)ハウインターナショナル
代 表:田中 貴規
所在地:福岡県飯塚市幸袋560-8
設 立:1999年7月
資本金:7,756万円
売上高:(18/6)3億1,064万円(株)chaintope
代 表:正田 英樹
所在地:福岡県飯塚市幸袋560-8
設 立:2016年12月
資本金:1億4,504万円<プロフィール>
正田 英樹(しょうだ・ひでき)
1972年7月、山口県光市出身。九州工業大学情報工学部を卒業後、高橋剛氏と2人で(有)Heart at Work(現・(株)ハウインターナショナル)を設立し、モバイル・クラウド導入支援と関連サービスの提供などを手がけてきた。2015年ごろよりブロックチェーンの研究開発を開始し、16年12月に(株)chaintopeを設立。現在、chaintopeの代表取締役社長と、ハウインターナショナルの取締役会長を務める。田中 貴規(たなか・たかのり)
1974年9月、熊本県出身。九州工業大学情報工学部を卒業後、富士通九州通信システム(株)に入社。その後、行政システム九州(株)などを経て、(株)ハウインターナショナルおよび(株)chaintopeに参画。2019年1月にハウインターナショナルの代表取締役社長に就任した。関連キーワード
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