2024年11月30日( 土 )

水素自動車は普及するのか?(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 現代自動車はなぜ水素自動車に社運をかけようとしているのか。現代自動車は1998年に水素車の開発を開始した。2006年には水素自動車の独自開発に成功し、2013年には水素自動車を量産することになった。2018年に出荷したネクソは航続距離609kmを実現した。現代自動車は2018年12月11日に「FCV ビジョン2030」を発表。2030年までに水素自動車年間50万台の生産体制構築と、そのために7兆6000憶ウォンを研究開発と設備増強に投資するとしている。

 現代自動車がこのように水素自動車にフォーカスを合わせるようになった背景にはいくつかの要因がある。

 1つ目には、電気自動車の開発に出遅れたことがあげられる。技術的に競争優位性がない上に、電気自動車は仕組みが簡単であるため、中国メーカーやテスラと競合しても勝つ確率が低いと判断したからだ。

 2つ目の理由としては、水素自動車は内燃機関の自動車以上に部品点数が多く複雑だが、現代自動車は10年以上水素車の開発をしてきて、技術をすでに確保しているので、有利に働くのではないかという判断。

 3つ目に内燃機関をずっと経験した経営陣の意思決定で、電気自動車に出遅れたことになり、それを挽回する方法として水素自動車を選んでいるという背景がある。

 しかし、この選択が正しい選択かどうかはまだわからない。普及が進んでいない関係で、水素自動車は現在生産すればするほど赤字が膨らむ状況のようだ。

 最後に水素自動車の普及にはどのような障害があるのだろうか。まず水素ステーションが普及していないという事実がある。電気充電所は1カ所の建設に50~70万円のコストが必要であるが、水素ステーションは1基に4億円前後の費用が必要だという。「卵が先か鳥が先か」の議論になるが、水素ステーションの普及なしには水素自動車の普及は期待できない。

 充電時間は5分程度だが、連続充電するためには準備が必要で、30分に2,3台充電できるというのが現実のようだ。

 それに、水素の確保の問題があるようだ。水を電気分解して水素を得る方法もあるが経済性がないとされている。それで現在、水素自動車で使われている水素は、原油から化学製品をつくる際に付加的に発生する水素である。問題はその水素の量が十分ではないということだ。

 専門家が指摘する水素自動車の一番大きな課題は水素タンクのようだ。水素は軽くて、十分な量を貯蔵しようとすると、タンクがどうしても大きくなる。サイズを抑えるため、水素は普段高圧に圧縮して貯蔵する。しかし、高圧にするのにも限界があるという。70メガパスカルからは圧力が上がるだけで水素の容量が増えないという。

 また燃料電池の発熱問題もある。水素自動車の発電装置である燃料電池は電気だけでなく、熱も発生する。しかし、発生した熱を放熱させる排出口がない。この熱が問題になって性能向上が難しいという問題に直面している。

 このようないろいろな損失を考慮すると水素自動車の熱効率は40%まで落ちることになる。一方、電気自動車の熱効率は約90%になるので水素自動車は電気自動車にかなわない。以上のような問題があって、水素自動車は普及していない。

(了)

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