2024年11月30日( 土 )

シベリアよりAIを込めて~ノヴォシビルスク使節団が語る展開と展望(1)

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ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社 CEO
アレクサンドル・ズィリャノフ 氏
ソフトラボ-NSK社 CEO/業界団体シブアカデムソフト 代表
イリーナ・トラヴィナ 氏

 ロシア・ノヴォシビルスク州のIT(情報通信)業界団体シブソフトコムと同州設立の企業投資発展エージェンシー社(以下、投資エージェンシー社)による使節団が2月下旬、(一社)ロシアNIS貿易会の招聘で東京と福岡を視察した。日本でノヴォシビルスクの潜在能力を広報し、日本企業との協力を探る目的で来日したもの。今回は、投資エージェンシーCEOのアレクサンドル・ズィリャノフ氏とシブソフトコム代表でソフトラボ-NSK社CEOイリーナ・トラヴィナ氏ら使節団のメンバーに話を聞いた。

福岡との共通点

 ―シベリアについて(ノヴォシビルスクは“新しいシベリアの街”の意)、とくにその経済状況は日本で知られていません。当地域の経済状況、またビジネス環境はどのようなものなのでしょうか。

左から、ヴャチェスラフ・アナニエフ(データ・イースト社CEO)、
イリーナ・トラヴィナ(ソフトラボ-NSK社CEO、業界団体シブソフトコム代表)、
アレクサンドル・ズイリャノフ(ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社CEO)、
ワシーリー・プロトニコフ(ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社投資部門ディレクター)

 アレクサンドル・ズイリャノフCEO(以下、ズイリャノフ) 私たちと日本の関係は非常に緊密であり、ほかの国々と比べても非常に密な関係にあります。札幌とは姉妹都市であり、両都市の寄附金で設立された「シベリア北海道文化センター」があるからです。それは「小さなセンター」があるという程度の規模ではなく、ノヴォシビルスク市の中心部に大きな建物を構えているのです。

 また、非常に重要な側面として、この街にあるシベリア抑留者の大規模な埋葬地で、6月に追悼式の挙行を予定しています。大きな慰霊碑の除幕式も予定されていて、設計図を見る限り、御影石を使用した大変美しいものになるようです。

 私たちの街は、学術研究都市としてロシアにその名を轟かせています。たくさんの学術研究機関、大学などがあり、毎年12万人の学生が勉強しています。

 産業の構造は多様化していますが、一方で、ノヴォシビルスクはシベリアの大都市でも唯一石油も天然ガスも産出していない街。それ以外のもので経済を進めなければならないという考えで活動してきました。資源を算出しないことは残念な面もありますが良い面もあります。それは世界の原油価格の変動に経済が左右されるがないということです。

 ノヴォシビルスクはシベリア最大の都市ではありますが、食料の生産という点で優位に立っています。ロシアの農業生産、その量におけるランキングではロシア国内でトップ10に入るほどです。また、ロジスティクスにおける他地域へのハブとしても知られています。交通の要衝として、西から東、南から北へ。それらすべてに通じる地域として存在します。ノヴォシビルスクはシベリアの中心都市として、ヨーロッパから入ってきたものが一度は私たちの街にきて、そこから先、さまざまな都市に向かいます。トルマチョヴォ空港もハブ空港として知られ、ロシアでの旅客者数はモスクワについで多いのです。

 ―27日に福岡市を訪ねられて、国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」についてお聞きしたそうですね。どのような感想をもちましたか。

 ズイリャノフ 非常に良い印象をもちまして、すべてにおいてすばらしいと思いました。私たちが行っていることと非常に似ているところがあると思いましたが、一方で、福岡のほうが私たちよりも数歩、先を行っているという印象を受けました。「世界展開」という点で大きく異なっています。

(つづく)
【小栁 耕】

アレクサンドル・ズィリャノフ(Zyrianov, Aleksandr)
ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社CEO。1993~2008年まで起業家として活動したのち、ノヴォシビルスク市・市民課副課長、ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー第一副社長を経て現職。

イリーナ・トラヴィナ(Travina, Irina)
ソフトラボ-NSK社CEO、業界団体シブアカデムソフト代表。1985年にノヴォシビルスク国立大学を卒業後、同市近郊の研究所でエンジニア、プログラマーとして勤務。ソ連崩壊後は同僚とともにソフトラボを起業。ITクラスター育成の非営利団体「シブアカデムソフト」の設立にも参加し、副会長を経て現職。

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