シベリアよりAIを込めて~ノヴォシビルスク使節団が語る展開と展望(4)
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ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社 CEO
アレクサンドル・ズィリャノフ 氏
ソフトラボ-NSK社 CEO/業界団体シブアカデムソフト 代表
イリーナ・トラヴィナ 氏IT人材の宝庫
―2018年11月には日本の総務省がモスクワで日ロのスタートアップ企業の交流会を行うなど、モスクワでもスタートアップ(起業家)への支援の取り組みが行われていますが、ノヴォシビルスクだけがもっている強みはなんでしょうか。
トラヴィナ 先ほども申し上げましたけれども、同市はロシア最大の学術研究都市です。そういう意味では高スキル人材の輩出という点ではロシアのトップ3に入ります。スタートアップが私たちのところで生まれれば、技術的には練られていて完成しています。
しかし、ビジネス面が弱いという点がよくある傾向です。頭の良いハイスキルのエンジニアが自らやってきて研究を応用して製品をつくり出すものの、市場のニーズとは逆のかたちでできているということが多くあります。ですから、頻繁に若いスタートアップがシリコンバレーなどに移っていくということになっています。
福岡市の方の話を聞いて、今後、互い協力していく可能性があると感じました。福岡市が行っているFUKUOKASmartEASTというプロジェクトに対してはまさにぴったりの、今まで開発してきた技術がありますので、それを提案していきたいと思っております。
また福岡市のスタートアップ事業と力を合わせてやっていきたいと思っています。なぜかといえば、私たちのスタートアップが日本、さらにその先の東南アジアに進出しようとするときには、もちろんこれらの地域とはメンタリティなどの諸文化が違うということもありますので製品もそれに合わせたものでなくてはなりません。日本やアジアの文化の担い手であるネイティブの人たちに力を借りなくてはできないと思っているのです。
今回、3日間を日本人の通訳者と過ごすなかで日本人の視点を教わりました。1つ目は、“お見合いで恥ずかしいから自分でしゃべるのではなくてロボットを介して会話する”というような日本の技術。ルックスと関係なく話ができるというものですが、我々の方にはアバターを使って仮想教室で勉強するという技術があります。通訳者が、「この2つは引きこもりの子どもにいいのでは」といってくれたのです。
―IT企業が多いのは“その歴史ゆえ”、なのでしょうか。
トラヴィナ 約60年前にモスクワから科学者を連れてくることでアカデムゴロドクはつくられました。そこでアンドレイ・エルショフ博士が数学スクールをつくったことがここでの情報学の始まりです。私たちの街ではモスクワと同じように、1968年には大学の科目に情報学が生まれました。ここでは「プログラミングは第2の言語である」と標榜されていましたから、私たちが学生だったとき、言語学や文学といったいわゆる文系の専攻以外は全員、情報学も学びました。
学生たちのなかには新しいプログラミング言語をつくっている人たちもいて、彼らがロシア国外へと出ていったことで世界にロシアのIT技術の高さが知られるようになったのです。ですから、現在も多くのIT人材を輩出しているというわけです。
データ・イースト社CEO ヴャチェスラフ・アナニエフ氏 ノヴォシビルスクの特徴についてもう1つ。ノヴォシビルスクはすごくローカルな場所だけれども、非常に珍しいのはさまざまな分野の専門家が結集していることです。世界を見てみても、いちばん革新的なものは1つの分野だけでなく複数の分野にまたがったもので、研究者の結集は不可欠です。ノヴォシビルスクでやっていることは非常にレベルが高いので、大胆ですが、「私たちにとっては学術的な問題で解決できないものはない」のです。
IT業界では有名なジョークとして、「もし安く済ませたかったら、インドに行け。売りたかったら、アメリカに行け。難題を絶対に解決したいなら、ノヴォシビルスクに行け」と言われています。ですから私たちは、このような学術的な人材のポテンシャルをほかの国の市場で展開するという意味で日本の皆さまと協力していきたい、そうすれば向かうところ敵なしだと思っています。
ノヴォシビルスクにはよいゲームをつくっている企業もあります。日本でもオンラインゲームなど人気だと聞いているので、その点でも互恵的な関係の協力もできるのではないかと考えています。たとえば、日本のシナリオとロシアの技術を組み合わせたゲームなど。
トラヴィナ 日本のデザイナーにも参加してほしいですね。
(了)
【小栁 耕】アレクサンドル・ズィリャノフ(Zyrianov, Aleksandr)
ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社CEO。1993~2008年まで起業家として活動したのち、ノヴォシビルスク市・市民課副課長、ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー第一副社長を経て現職。イリーナ・トラヴィナ(Travina, Irina)
ソフトラボ-NSK社CEO、業界団体シブアカデムソフト代表。1985年にノヴォシビルスク国立大学を卒業後、同市近郊の研究所でエンジニア、プログラマーとして勤務。ソ連崩壊後は同僚とともにソフトラボを起業。ITクラスター育成の非営利団体「シブアカデムソフト」の設立にも参加し、副会長を経て現職。関連記事
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