2024年11月30日( 土 )

中国勢の追撃で危機に直面した韓国ディスプレイ産業(前)

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 日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 ディスプレイ(液晶ディスプレイ、有機EL)産業において、韓国は世界一の座を占めていた。韓国は2001年に電子産業で世界の王座に君臨していた日本から王座を奪い、その後、2017年までその座を守ってきた。なぜそのようなことが起きたかというと、2000年度にITバブルがはじけ、日本企業は装置産業であるディスプレイ産業に設備投資を控えていた反面、韓国勢、とくに、サムスンディスプレイとLGディスプレイは、日本をしり目に、果敢に巨額の設備投資を行った。それが功を奏し、韓国はディスプレイ産業の王座に就くことになった。

 ところが、韓国が編み出した成功の方程式を、今回は中国にやられ、ディスプレイ産業の王座が韓国から中国に移る羽目になっている。最近の統計を見ると、そのトレンドが如実に表れている。2012年の韓国のディスプレイ世界市場シェアは50.7%だったが、市場シェアはその後ずっと減少を続け、2017年には45%にまで下がっている。とくにディスプレイ市場の40%を占めている液晶ディスプレイ市場の場合、韓国の2012年世界市場シェアは47.5%であったが、2017年には33.2%となり、シェアを相当落としている。

BOE、CSOTなど、中国ディスプレイ企業は政府の支援をバックに、巨額投資を実行した。その結果、中国発の供給過剰によるディスプレイの価格下落が引き起こされ、韓国企業は業績悪化に追い込まれている。一方、BOEは世界最大の液晶ディスプレイの生産メーカーに浮上し、その勢いはとどまるどころか、次世代のディスプレイと言われている有機ELにも影響がおよびそうで、韓国企業にとって大きな脅威となっている。

 BOEは大型テレビをはじめ、パソコン、スマートフォンなどのパネルをファーウェイ、シャオミなどに供給している中国の代表的な企業である。今回はディプレイ市場でどのようなことが起きているのかを取り上げてみよう。

 中国は「第12次5カ年経済開発計画」「2014~2016新型ディスプレイ産業発展行動計画」などを発表することによって、ディスプレイ産業を中国の戦略的産業とし、ディスプレイ製造メーカーを強力に支援している。BOEは2015年から安徽省合肥市に10.5世代のパネルを生産する工場建設に着手した。現在、その工場は稼働しているが、中国政府はその工場建設に傘下の国営企業と公共ファンドに資金の55%を直接支援させ、また低利の銀行融資で資金の40%を間接支援した。BOEが資金を負担したのは、全体の設備投資金額の5%に過ぎない。このような中国政府の積極的な支援に支えられ、中国のディスプレイ産業は急速に成長している。

 中国の世界市場シェアは2018年の8.2%から2017年には20.5%に伸長している。とくに同期間の液晶ディスプレイの市場シェアは8.7%から24.8%へと三倍ほどに成長している。このような状況下で、とくに中国で注目に値する企業はBOEである。BOEは2017年、大型液晶パネルの出荷枚数で世界1位に躍進し、世界で25%のシェアを獲得している。また、市場調査会社ガートナーによると、BOEは有機ELディスプレイでは世界3位で、有機ELスマホディスプレイでは世界2位となっている。ところが、中国企業のこのような躍進とは裏腹に、韓国の大手メーカーは業績が赤字に転落し、市場に衝撃が走っている。ディスプレイは韓国の輸出品目のなかでも大きな比重を占めていただけに、余計にショックが大きい。

 (つづく)

(後)

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