2024年11月30日( 土 )

世界一の超大型造船会社の誕生(前)

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 日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国の造船産業は1980年代に日本から世界1位の座を奪い、韓国産業発展の中心的な役割をはたしてきた。しかし、2008年の世界金融危機発生後、世界的な貨物の減少と、中国企業との低価格競争などの影響をもろに受けることになり、韓国の造船会社は巨額の赤字を計上し、試練が続いていた。とくに、中国企業の存在は大きな脅威となっていた。ところが、昨年から世界的に環境規制などが厳しくなって、LNG船の発注が増加し、韓国の造船会社に久しぶりに明るい光が差しこむようになった。しかし、一部では国内の造船3社が過当競争する今の状況より、合併してグローバルな競争力を向上させた方が、韓国の造船産業にはむしろ良いという指摘もあった。

 そのような状況下、買収相手を探していた大宇造船が現代重工業に合併され、世界1位の超大型造船会社が誕生することとなった。産業銀行と現代重工業は3月8日、合併のための本契約を締結し、韓国の造船業界では今までの現代重工業、大宇造船海洋、サムスン重工業の3強時代から「ビック2」の時代に入った。

 世界市場1位と2位である現代重工業と大宇造船が1つになると、世界市場占有率は21.2%になり、世界3位である日本の今治造船所(6.6%)との差がさらに開くことになる。グローバル造船·海運分析会社であるクラークソンリサーチ社によると、昨年末基準で世界受注残1位は現代重工業(1,114万CGT,シェア13.9%)で、 2位は大宇造船海洋(584万CGT, 7.3%)で、 3位は日本の今治造船所(525万CGT, 6.6%)だ。

 今回の合併にはどのような背景があったのだろうか。大宇造船は2015年、産業銀行から4兆2,000億ウォンの融資を受けていて、その後も毎年数兆ウォン規模の公的資金がつぎ込まれ、10兆ウォン以上の公的資金が投入されている。産業銀行はその間、買収相手を探していたが、なかなか取引が成立しなかった。ところが、造船の市況が少し回復したことに、政府の支援なども相まって、大宇造船は2017年に7,330億ウォンの営業利益を叩き出した。中国と日本が造船業界で合併などを通じて会社の大規模化を図っているなかで、現代重工業もこれに対抗するためにも規模の経済を実現しないといけない状況だったし、国内企業同士の過当競争を避けることによって、収益性を確保したいという狙いから、今回の合併は進められた。

 中国と日本の造船産業の状況をもう少し見てみよう。中国政府は「中国製造2025」を発表し、造船産業は10大重点育成分に選定されたし、これとともにLNG船などの付加価値の高い船舶の建造と、海洋ブラントの競争力強化を図ろうとしている。また、自国の貨物は自国で建造した船舶で運ぶという政策まで樹立し、造船産業への全幅的な支援に乗り出している。しかし、中国の造船産業が競争力をもつようになった源は、中国政府の破格的な金融支援にあることを知る人は少ない。中国政府は自国の造船会社に直接補助金を出してはいないが、その代わり船舶を発注してくれる海運会社の船舶購入代金の何と20%の補助金を支援している。また中国の国営金融機関は、中国の造船会社に発注をかける外国の海運会社に対して、船舶代金の全額を年利1%を下回る金利で貸し付けている。このような金融支援策のおかげで、中国の造船産業は発展したわけだ。

 (つづく)

(後)

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