成功体験から抜け出せず 役割を終えた女性向け情報誌(後)
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(株)アヴァンティ
フリーペーパーは生き残れるか
インターネット広告の自由度の高さに押されるフリーペーパー。全国的に有名なものから、地域密着型のものまで、近年、フリーペーパーの休刊・廃刊が続いている。先述の福岡都市圏でフリーペーパー「ガリヤ」を発刊していたガリヤは、2000年7月期には6億円を超える売上高を計上していたが、14年4月末に取引先への支払いが不能となり、そのまま破産となった。
また、発刊元となる企業間の統廃合も散見される。16年に大阪の(株)サイネックスが福岡の(株)サンマークを子会社化したのは記憶に新しい(株式の取得金額は6億8,500万円)。サンマークは月刊の地域情報誌「Nasse(旧・めさーじゅ)」で知られ、福岡市を拠点に、北九州市、熊本市でも同誌を発行している。
サイネックスは地域社会貢献事業に強いサンマークをグループに取り込むことで、事業領域の拡大、サービスの拡充を目指していた。しかし、後にサンマークは株式を買い戻し、再び独自の道を歩み始めている。ターゲット(読者層)やエリアに特化した誌面構成が特色のフリーペーパーは、発刊元の企業風土も反映されるため広域展開は容易ではない。
費用削減のため、ページ数や部数を減らすといった対応を行っている発刊元もある。フリーペーパーに対して企業が割く広告費用が年々減少していることも考えると、フリーペーパーの広告媒体としての存在感の希薄化、市場の規模縮小は避けられない。
25年の歴史に幕
2億円台で推移していたアヴァンティの売上高は、18年9月期には約1億1,200万円まで減少した。企業のHP制作を請け負うほか、自社HPへのバナー広告提案なども行っていたが、これらの取り組みが、既存の紙媒体に対する広告収入に匹敵するような収益基盤になることはなかった。
業績の低迷に歯止めがかからないなか、アヴァンティは18年12月28日、福岡地裁に破産手続きを申請。19年1月4日、同地裁より破産手続開始決定を受けた。負債総額は債権者192名に対し、1億993万円。女性による女性のための情報誌「アヴァンティ」も、多くの愛読者に惜しまれつつ、会社とともにその幕を閉じた。創刊から25周年を迎えた矢先の出来事だった。
アヴァンティの未来
倒産したアヴァンティではあるが、同社のインターネットサイト「アヴァンティオンライン」は19年5月現在も更新され続けている。アヴァンティの愛読者であり、アヴァンティから取材を受けた経験もある1人の女性が、同サイトの運営・管理を村山氏から引き継いだのだ。
引き継いだ竹内香織氏は主に戸建住宅の提供を手がける、でんホーム(株)の代表取締役を務める福岡の女性経営者だ。竹内代表は山口県出身。広島大学を卒業後、四国の建設業者や実家で住宅設計の経験を積み、07年6月、福岡県に移住。設計事務所で公共施設、店舗設計に携わり、11年に独立。でんホーム一級建築士事務所を開設し、翌12年3月、でんホーム(株)を設立した。
竹内代表は、アヴァンティオンラインでは福岡で働く女性へのインタビュー記事を中心に情報発信するほか、メールマガジン「アヴァンティ便り」の配信業務を行っている。アヴァンティオンラインの管理・運営を引き継いだ経緯を、同代表は「今までの貴重な情報が消えてしまうのはあまりにも残念で、途中のままのコラムの続きも読みたいと思っていました」と述べている。
アヴァンティの創刊の理念、歴史、名称は次世代へと託された。今後は、ネットメディアとしての真価が問われる。
(了)
【代 源太朗】<COMPANY INFORMATION>
代 表:村山 由香里
所在地:福岡市中央区大名2-6-26
設 立:1993年10月
資本金:1,000万円
売上高:(18/9)約1億1,200万円関連キーワード
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