入場料のある本屋「文喫」、アマゾンとの差別化は“検索しない”本探し(後)
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喫茶室でラテを飲みながら本を開いてみた
本をめくると、手つかずの自然が広がる南極の荒野の魅力が目に飛び込んでくる。今まで想像もつかなかった世界がこの地球上に広がっていることを知った。なんとチリやアルゼンチンから南極行きのツアーが出ているようだ。地図で名前しか知らなかった世界が、一生のうちには足を踏み入れられるかもしれないという現実に変わる。
旅行の楽しみは、ふだんの生活からは想像もつかない世界や考え方、価値観に出会えることだ。本屋に行き、本を手に取って新しい世界が広がる驚きは、旅行に心惹かれることと、なんだか似ている気がした。
検索しない本探しは、思いがけない世界が広がる
アナログな世界は、思いがけない出会いがあるから面白い。読みたい本が決まっているときは、ネット書店で本を探すのが最短距離で本にリーチでき、とても便利だ。だがインターネット検索はおすすめ機能が強く、自分がふだん興味あることに近い情報が表示されやすい。それはイコール、自分がふだん見ていることから離れた場所には手が届きにくいということだ。
検索しない探し方は、いまのAmazon(アマゾン)などのネット書店とは真逆を行く。しかし、おすすめ機能で自分の好みに近いものをすすめられることに慣れている時代だからこそ、アナログな世界で、リアルなものに触れて自分の感覚を使って探したいというニーズがある。
文喫は、「検索しない」本屋だが、実は店内には普通の本屋と同じように本の在庫がわかる検索機がある。しかし、使う人はほとんどいない。「検索をしない本探しをしたい人が文喫にきている」と伊藤氏はいう。世の中の流れとは真逆をいく戦略が、グローバルサービスでは手が届ききっていないニーズをつかんでいる。
文喫では大勢で使える会議スペースやテーブルもあり、デザイン業界などのアイデアが決め手の企業が、ミーティングで使っているという。「わかっていること」や「決まっていること」はデジタルの世界が便利だが、アイデアという「まだかたちになっていないもの」に関しては、アナログで人間的なやり方のほうが、思いがけない閃きや解決策が思い浮かぶのではないだろうか。
文喫のこれからは?
ネット書店が広がるなか、文喫はこれからも「本との出会い」を演出する本屋として、新しい時代の本の売り方を模索していきたいと考えている。これからも「検索しない」本探しを、1つのかたちとして、たくさんの人に伝え続けられる本屋でありたいからだ。
世の中の大きな流れがあるからこそ、その流れでは拾いきれない人々の気持ちがあることはたしかだ。流行を反対の向きから見てみると、思いがけない発見がたくさん見つかるのかもしれない。
(了)
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文喫HP<プロフィール>
石井 ゆかり(いしい ゆかり)
みどりの宇宙(株) 経営コンサルタント。筑波大学卒業。京都大学農学研究科修士課程修了。ヘルスケア関連メーカーに勤務後、人の健康と企業の発展に貢献したいという想いから、経営コンサルタントとして中小企業の経営支援を行っている。関連記事
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