2024年11月30日( 土 )

韓国の若者たちはなぜ子どもを産まないのか?(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 それでは、このように出産に対する意識が変化するようになった原因は何だろうか。昔は韓国の女性は男性と結婚して、経済的にはその男性に依存することが一般的であった。しかし、女性の高学歴化と経済活動が増加することになって、結婚は必須ではなく選択となってしまった。最近、韓国の20代~30代の結婚、出産に対する意識は大きく変化している。結婚をしなくても良いと考えている20、30代は過半数を超えている。それに、結婚に対する認識がだんだん否定的になりつつある。

 このような状況なので、未婚と晩婚の比率が増加している。結婚しないので出産率も低くなるし、また結婚が遅れたことで、出産による健康への負担が気になり、出産をあきらめたりする。それに、女性の高学歴化と社会進出は増加の一途をたどっている。そのような中、仕事と育児を両立させるのも難しく、育児支援がしっかりしているわけでもないので、出産という重荷をできるだけ負いたくないという女性が増加している。

 結婚をしている女性と、そうではない女性の家事の時間にも、1日に1時間49分の差があるという統計もある。それに、日本などと違って、韓国人の夫婦にとって大きな負担になっているのは私教育費である。塾通いに月平均50万ウォン~100万ウォン使っている家庭は28.8%で、30万ウォン~40万ウォンの家庭は18.5%である。

 最後に韓国の低出産率に、同棲やシングルマザーに対する社会的な偏見も大きな原因となっている。イギリスの2012年の非婚出産率は47.6%.である。1995年には33.5%であったが、増加している。非婚出産率が伸びると、出産率も増加する。ベルギーも似たような状況である。非婚出産率は55%である。出産率も急激に伸びているのはいうまでもない。フランス(53%)、ノルウェー(55%)米国(41%)も同じような状況である。しかし儒教国である韓国では、同棲や未婚出産はタブー視され、制度も整備されておらず、社会の偏見もひどい。韓国は非婚出産率は1.5%で、日本(2.0%)と同じように非常に低い。このような硬直した社会では一部の恵まれた人たちだけが出産することになるだろう。

 それでは、最後に出産率を上げるためにはどのような対策があるだろうか。韓国では米国と違って、結婚の費用を当事者が解決するのではなく、親が面倒を見ることになっているので、親にとって、その負担は並大抵のものではない。そのような社会構造なので、子どもを産んで育てるには、親は教育費だけでなく、結婚費用まで考慮する必要がある。お金がなければ結婚もできなければ、結婚しても家庭を維持するのが大変である。なので、少し冷静に考えてみると、子どもを簡単に産まなくなる。低出産問題を解決するための政策としては、育児費用の支援が一番求められている。それだけでなく、社会の変化に合わせた意識の変化も急務だ。シングルマザーや同棲した人が産んだ子どもに対して、政府が育児に責任をもつような制度が整備されない限り、低出産率は解決されないだろう。

(了)

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