2024年11月30日( 土 )

中国巨大バッテリーメーカーの誕生と日韓のバッテリーメーカーの応戦(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 既存の自動車産業では、中国は日本や欧米と競争しても、あまり勝ち目がないと判断。これからの市場である電気自動車(EV)分野で、自動車先進国として優位に立つべく、中国政府は電気自動車産業の育成に力を入れてきた。その結果、中国は電気自動車における世界最大の市場だった米国を抜き、2015年以降、世界最大のEV大国となった。中国の2017年度のEVとPHEV(プラグインハイブリッド)の生産・販売台数は77.7万台で、27.8万台の販売台数を記録したEUや、20万台を販売した米国を、大きく引き離している。

 中国ではEV、PHEV、燃料電池車をひっくるめて新エネルギー車と呼んでいるが、中国の新エネルギー車の販売台数は2020年に200万台、2025年に700万台、そして2030年には1,000万台になることが見込まれている。ところが、新エネルギー車の販売は、まだ中国自動車販売全体の2.7%程度に過ぎず、EV市場の成長は、これからがむしろ本番となるだろう。

 中国がEV大国になったことで、EVにおいて一番大事な車載バッテリー分野でも、目覚ましい技術発展が行われている。今回は中国、日本、韓国を代表するバッテリーメーカー間で、どのような競争が繰り広げられているかをみていこう。

 中国だけでなくEUでも、EVの需要は高まっている。EUでは2030年までに二酸化炭素の排出量を37.5%削減すると目標を掲げており、電気自動車の需要が高まることが見込まれている。ドイツのフォルクスワーゲン、BMW、フランスのルノー、イギリスのジャガー、ランドローバーなども、2020年前後に電気自動車を量産する計画である。

 とくにフォルクスワーゲンは2028年までに70車種のEVを発売する計画などがあり、世界の自動車市場は急激にEVを中心にして再編されつつある。そのような状況下、車載バッテリー市場では、中国のCATLとBYDは、世界市場シェア15.5%と10.1%を記録し、1位と3位に浮上している。中国企業より先に市場に参入し、技術力も高いと評価されていたパナソニックは、シェア14.6%で2位に、LG化学はシェア6.7%で、4位となっている。2018年の統計だが、世界の車載バッテリーの合計容量は、97GWhで、前年対比で64%も成長している。

 世界最大の電池メーカーになったCATLは、どんな会社だろうか。中国福建省を本社の所在地としているCATLは、2011年に設立された。もともとは小型家電用バッテリーを製造していたAmperex Technology(ATL)という香港の電池メーカーで、その自動車用電池部門を別会社化したものだ。そのATLは、米アップルのiPhone用電池の生産を請け負ったこともあり、業界ではそれなりに有名であった。

 またこのATLは、日本の電子部品大手TDKによって2005年に買収された電池を生産する子会社でもあった。その間のCATLの成長は凄まじい。14年の売上高は8億7千万元であったが、17年の売上高は199億元となり、わずか3年間で23倍という驚くべき成長を遂げ、18年には上場もはたしている。このように急激に成長するようになった背景には、いくつかの要因がある。

(つづく)

(後)

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