【もつ鍋業界最前線】ラーメン、明太子に続く福岡の食のコンテンツ(前)
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とんこつラーメンや明太子など、福岡発で全国展開する食のコンテンツ。今、そこに並ぶものとしてもつ鍋業界が活況を呈している。福岡市役所の集計によると、2019年6月現在で市内のもつ鍋店は172店舗と全国の諸都市と比べても多い。福岡市内だけでなく、全国、果ては海外に進出する事業者も出てきたもつ鍋業界はまだまだ可能性を秘めている。
もつ鍋はラーメンに並ぶ知名度
「ラーメン、もつ鍋だけじゃない」と福岡市の広報が発信するほどに、現在では福岡の郷土料理としてのもつ鍋は知名度をもつようになっている。これは決して行政が発した宣伝というわけではなく、精肉業者などの関係業界も同様の自負をもっている。
1992年に東京で第一次もつ鍋ブームが起こり、10年ほど前にも小さなブームが起こったことで、以来、関東を中心に「もつ鍋=福岡」の図式ができ上がっているという。東京でのブームが、もつ鍋のイメージを変え、福岡の郷土料理として繰り返しテレビで紹介されている。
もつ鍋といえば、赤提灯が掲げられた居酒屋で提供されている、安くて量の多い鍋料理―という旧来のイメージからは対極的に、現在では和を意識した美しい内装の店内で、一人前1,300~1,800円ほどで提供される鍋を座敷でつつく。また、味付けが済み、すぐにでも食べられる状態で提供されるなど、食べ慣れない人への配慮もなされている。
福岡をにぎわす国内外の観光客
そもそも福岡市は人口増が続いており、2019年6月時点の福岡市全体の人口は158万8,924人との推計が出ている。同市の人口増は出生によるものではなくほかの自治体などからの流入に依存しており、これは死亡や転出を要因とする人口の減少を上回っている。福岡県内のほかの市町村からだけではなく、九州内外からの流入も多いとされている。
航空自由化によるLCC(格安航空会社)の参入や国際線ターミナル開設によって福岡空港の着陸回数は全国でも4番目に多いほか、九州新幹線の開通によって中国、韓国などのアジア圏を中心とした海外観光客からは「九州の玄関口」としての認知が進み、福岡からの入国者数は14年の約120万人から4年後の18年には300万人を超えた。また、日本全体の海外観光客と国籍別で割合を比較すると、韓国籍が24.2%なのに対し、福岡では51.2%と約半数を占めているなど、地理的な特性もうかがえる。
これらのアジアからの観光客が、もつ鍋を食べることも多いという。実際に中国人観光客に話を聞いたところ、「韓国や中国にはもつを食べる文化がある」と教えてくれた。
内臓肉価格は上下動
肉卸はもつ鍋の業界をどうみているのか。肉卸売業各社に販売する事業者は、「弊社では仕入れ頭数の減少などがなければ価格の変動は起こらない」としたうえで、「30年ほど前、あるいは10年ほど前のブームよりは落ち着いているのでは」と話す。実際に飲食店や小売業と取引をする肉卸売業者からは、「(価格は)上がったり下がったりで、一概にはいえない」とした。
もつ鍋は「ホルモン鍋」とも呼ばれ、主材料として牛や豚の小腸や、あるいは大腸とすることが多い。しかし同部位は牛1頭からとれる内臓肉のうちのさらに一部分。フランチャイズ展開をするもつ鍋店も出てくるなど供給を求められるなかで、特定部位だけが人気を博しているのが現状だ。
もつ鍋事業者からは、「ラーメン、明太子はこれ以上マーケットの拡大はできそうにない。だが、もつ鍋はまだ成長の余地がある」と市場の拡大基調は依然として続くとの見方だ。
(つづく)
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