2024年11月25日( 月 )

グループ再編進行中 セメント事業と教育が肝(後)

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ぎょうせいと日特建設、買収2社を検証する

 麻生グループは積極的にM&Aを行っており、18年10月にも上場企業である日特建設(株)を連結子会社化した。

 12年に出版社である(株)ぎょうせいを買収した際には「麻生家によるメディア支配か」とさえ噂されたが、同社は出版事業のなかでも特異な位置にある。というのも、官公庁の記録などを出版する事業を稼ぎ頭としており、かつては自治体職員への訪問販売で成果を上げていたという。

 当時を知る公務員は、「よくできたビジネスモデル」と呆れ半分に評する。「部長や課長などの部署の上長のところにきて、売りにきた本を説明する。だいたい官公庁内の研究会が書いたか、職員が書いた報告書をまとめた本。あるいは自治体関連の法律の解説本。説明したら、上長には売り込みをかけずに、『誰に売ったらいいでしょうか』とおうかがいを立てる。上長も買いたくないから、部下を指名する。部下は部下で、上長からの『推薦』だから、無下にできない」と組織の性質を熟知した販売ノウハウをもっていたことがうかがえる。

 上記と並んでよい「買い物」になったのが、麻生の子会社である(株)エーエヌホールディングスを介して18年10月にグループ傘下に入った日特建設だ。同社は公共工事の受注が多い土木企業の大手で、とくに基礎工事や地盤改良、法面などに特殊土木に強みをもつ。近年の災害続きで防災・減災意識が高まり、ニーズに合った事業内容から広島や北海道などで工事受注が続いている。一方、人材確保の難航や労務費の増加などを課題としてきた。

 同社とその子会社5社を含めた19年3月期の連結決算は632億6,400万円。これが麻生グループの「拡大」のカラクリである。

M&Aは人手不足が追い風か?教育事業への魅力

 一方で、堅調に業績推移するぎょうせいや日特建設がなぜこのタイミングでM&Aを受け入れたのか。2社も、また麻生もその理由を明らかにしていないが、同社グループの人材確保に強みをもっていることが魅力的に映ったとしても不思議ではない。

 麻生グループの中核である麻生の大株主は(学)麻生塾で、同法人は福岡市内を中心に13校の専門学校を運営し、「就職に強み」と広報している。実際、就職率97.6%という高水準だが、一方で建築や公務員など、定員割れではない学校はほんの3校に過ぎない。

 麻生グループ傘下の(株)アソウ・ヒューマニーセンター(AHC)率いるAHCグループも同様だが、麻生グループの教育・人材派遣事業は専門職特化を志向している。これは技術という「腐らない」強みが欲しいという就活者の実情に見合っている一方で、「よい企業」の選定にも必死になっている。企業側からすれば技術者不足、人材不足の昨今に安定的な供給が見込まれると同時に、早いうちから認知されることでほか企業との競争にアドバンテージが得られる。

 また、シナジーだけでなく、麻生塾自体が産業側と協業を図るケースも出ている。17年には(株)ドワンゴ、(株)カラーとともに、アニメ・CG制作を手がける(株)プロジェクトスタジオQを共同設立した。同社はカラーが製作する人気アニメ『エヴァンゲリオン』シリーズの最新作の製作に加わるなど、実際に福岡を舞台にアニメ業界で活躍している。

 麻生グループの存在感が増していることは、九州経済連合会の会長を泰氏が4期連続で務めていることからもわかる。九州の雄は他地域や時流も捉えて、ますます壮健である。

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(了)
【小栁 耕】

(前)

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