2024年12月01日( 日 )

映像制作業界の今後を考える(後)

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ドローン&スマホ時代を生き抜く人たち

 「スチールカメラマンがだんだん食えなくなってきた」と前章で述べたが、ここ数年は、仕事が減った分をドローン撮影で取り返すという動きが出てきているという。「一眼レフカメラの中堅モデルでも30~50万円ぐらいはしますが、ドローンの中堅モデルもこの値段ぐらいで買えます。知り合いのカメラマンでドローンスクールに学びに行っている人は多いです」と話すのは、別のベテランカメラマン。手に職をつけて、時代を乗り越えようとしている事例だ。

 一方で、スマホユーザーをターゲットにした動画制作講座が活況を呈している。素人でも簡単に動画を制作することができる時代、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSで動画を投稿するのが当たり前となったなか、各地で講座が開催されている。

 筆者も昨年は企業や自治体から数多くの依頼を受けた。講座の内容は撮影して、編集して、字幕CGをつけて、音楽をつけて、完成させるまでの一連の作業を3時間で行うというもの。使う機材はスマホ1つだけだ。たった1日で動画を制作するノウハウを身につけることができるとあって、日ごろから動画を活用したいと考える企業の広報担当者や個人事業主などが多く受講している。

映像制作は「量産」「手軽さ」の時代に突入

 一昔前では考えられなかった、自分で動画をつくるという流れ。今後ますます動画を使った広報PRは増えていくだろう。それに伴って、1つひとつのクオリティは低くても、数を量産するというニーズが高まってきている。先日、あるお取引先から、「動画100本つくるといくらになるか?」という相談を受けた。それは極端な事例だが、毎月2、3本の動画を定期的にアップしていきたいという依頼も以前よりも多い。たくさんの動画をSNSやYouTubeにアップし、それぞれから自社のホームページに誘導するという「チカラ技」が増えてきているのだ。

 Wi-Fi環境が整備されたことで、動画中継も手軽になってきた。以前は、中継といえば、大規模な中継車を走らせるか、アンテナを立てるか、いずれにせよ、無線技術の有資格者しかできない手の込んだ仕事だった。それが、いつのまにか簡易なものはスマホ1つでできるようになった。ちょっとつくり込んだ中継映像なら、数十万円も出せば機材がそろう。動画中継のメリットはいうまでもなく「速報性」だが、制作側のメリットとしては、編集の手間がかからない「手軽さ」だ。今後は、中継機材さえあれば、だれでも瞬時にテレビ並みの番組がつくれ、すぐさま全世界に配信できるのだ。

人間の頭脳でしかできない仕事をやるべき

 先の参院選で、テレビや新聞の大手メディアがほとんど取り上げなかった「れいわ新選組」がウェブメディアを中心とした戦略で世論を獲得し、一定程度の結果を残した。ウェブメディアが力をつけるのに伴って、映像制作の仕事はテレビからウェブへと活躍の場を広げることができる。

 カメラマンなどの技術職は、AI(人工知能)に取って代わられる仕事と揶揄されることが多い。AIどころか、スマホのアプリに仕事を奪われる時代がきている。そんな向かい風に立ち向かうためには、技術職の人たちはぜひ、企画構成力・文章力をつけてもらいたい。指示された通りに撮影・編集する能力は大事だが、手足よりも、頭脳になるべきだ。人間にしかできないこと、いわゆる、0から1を生む力を身に着ければ、映像制作業界に限らず、さまざまな逆境を乗り越えられるだろう。

(了)

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