2024年12月01日( 日 )

AIoTを軸に新しいかたちの日台産業連携を模索する!(前)

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 7月26日(金)東京駅前JPタワー4階のホール&カンファレンスにおいて、2019台湾最新ビジネスセミナー「日本企業にチャンスを生み出す台湾のAIとIoT最新事情」(主催:台湾経済部工業局 協力:台北駐日経済文化代表処、財団法人資訊工業策進会(III)、スマートエレクトロニクス産業プロジェクト推進オフィス(SIPO) 後援:公益財団法人日本台湾交流協会、ITコーディネータ協会 実行:台日産業連携推進オフィス(TJPO))が開催され、台日OBネットワークメンバーを中心に、約200人の企業人が参集した。

2018年においては、台湾人の5人に1人が観光客として訪日

峯岸進 氏

 峯岸進・日台OBネットワーク会長(TJPO東京常勤特別顧問)が開会を宣言し、続いて台湾からの来賓の挨拶があった。来賓の1人目は何美玥・台湾総統府国策顧問である。経済部長(経済相)や経済建設委員会主任委員を経験、TJPO栄誉顧問でもある何女史は現在の台湾経済の見通しを次のように語った。

 米中貿易摩擦、日韓貿易摩擦など、今世界全体の経済に緊張が走り、台湾経済にも少なからず影響を与えています。台湾経済の今年第一四半期(1月‐3月)の実質GDP成長率は前年比1.7%、第二四半期(4月‐6月)は1.8%になることが見込まれています。1月から5月にかけて輸出は4%落ちましたが、これは昨年12月に米中貿易摩擦を懸念したうえで、大幅に輸出を増やした影響と考えられています。この期間の台湾から日本への輸出は2%伸びています。

何美玥 女史

 一方、台湾と日本の間の観光については、安定成長をしています。2018年の台湾から日本への観光客は483万人でした。これはとても大きな数字です。台湾の人口は約2,300万人なので、5人に1人が訪日したことになるからです。日本から訪台いただいた方も178万人と大幅に増え、ともに過去最高の数字になりました。今年も好調で、1月‐5月で訪日観光客は約200万人、訪台観光客は約84万人に達しています。

 今、台湾には日本の方が1万数千人(注:居留証のある日本人は約1万2千人)住んでいます。最近は就労ビザを取得する方も増えてきました。大企業ばかりでなく、日本の中小企業の皆さんが台湾に来ることが多くなって、ビジネスチャンスをつくっていることの表れだと考えております。業種についても、当初は飲食業などが中心だったのですが、次第にさまざまな業種に拡大されてきています。将来的には、AIoT(AI+IoT)はもちろんのこと、5Gなど最先端の科学技術領域に拡がっていくことを期待しています。

日本から見て台湾は第4位、台湾から見て日本は第3位

曽文生 氏

 2番に目に挨拶に立ったのは、曽文生・経済部政務次長(事務次官)である。今回の訪日団の団長でもある曽氏は次のように語った。

 日台OBネットワークは2007年に設立されてから13年が経とうとしています。この間日台関係は順調に発展してきました。2019年は世界の貿易や経済が不透明と言われておりますが、そのなかでも日台の経済交流はより深まっていることを嬉しく思います。日本と台湾は歴史的・文化的なつながりが強く、ビジネスにおいても互いに重要なパートナーです。日台貿易総額は、日本から見て台湾は第4位、台湾から見て日本は第3位の関係にあります。

 また、グローバルにビジネスを展開するうえで、日台企業は日本、台湾のみならず、東南アジアなど第3国市場でも連携を行っています。最近の米中貿易摩擦や日韓貿易摩擦などによって、日台企業による連携、協業はますます重要になってきています。

「5+2の産業イノベーション計画」と「Society5.0」

 最後に、曽氏は蔡英文総統の推進する新しい経済発展プランである台湾政府「5+2の産業イノベーション計画」に言及、日本の未来投資戦略2018「Society5.0」と全方位的にパートナーシップを組める可能性があることを示唆した。

 台湾政府「5+2の産業イノベーション計画」の“5”とは、(1)グリーンエネルギー(2)バイオ医薬品(3)スマート機械(4)国防航空(5)アジアのシリコンバレーを意味し、“2”とは(1)循環経済:「資源サイクル推進計画」を立案し、物の生産、消費、廃棄および再生などの段階において、廃棄物の資源化を適切に行い、天然資源の採掘を止め、すべてのものを循環させ、廃棄ゼロのビジョンを実現する(台湾行政院環境保護署)(2)新しい農業:農業の新たな模範を確立、グリーン環境の付与、安定した農業収益、家畜産業の競争力向上、エコロジーな耕作、農業資源の永続的利用、テクノロジーイノベーションの盛んな発展の推進、を意味する。

【日台OBネットワーク】

 2007年設立の日台産業の連携に熱意をもつ企業人で構成されたボランティア団体。現在の会員は約360人。最高顧問は安藤国威・Sony元社長兼COO、会長は峯岸進・台湾Sony元董事長。毎年日本で1~2回の交流会を開催。会員ほか、日本企業の各界名士および台湾政府高官や産業界も参加する。台湾政府の重点政策方向、産業の趨勢、将来の推進方向や日台の連携成果など日台双方の重要な情報交換の場となっている。

 

(つづく)
【金木 亮憲】

(後)

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