2024年11月03日( 日 )

異色の投資家、ソフトバンクグループ孫正義社長が喝!~「日本はAI(人工知能)後進国だ」(後)

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ソフトバンク系フォートレスはユニゾのホワイトナイト

 この夏、ホテルなどを運営するユニゾホールディングス(HD)に対する旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)の敵対的TOB(株式公開買い付け)が株式市場の話題になった。

 ユニゾHDは「ホワイトナイト」(白馬の騎士、友好的な第三者の買収者)」に米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループを招き、対抗TOBを実施。

 フォートレスのTOB価格は1株4,000円。HISのTOB価格3,100円を29%上回る。投資額は総額1,368億円にのぼる。

 HISのTOBの締め切り日の8月23日に応募者はなかった。ユニゾHDは、HISによる買収を撃退した。

 フォートレスは17年2月、ソフトバンクグループが3,700億円で買収。約8兆円を運用する投資会社だ。ホワイトナイトを買って出た狙いはどこにあるのか?

孫氏が「世界一のホテル王」になると持ち上げる「OYO(オヨ)」

 孫氏は10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を立ち上げてから、AIを活用して急成長している東南アジアやインドの企業に投資してきた。

 代表的な例として、よく取り上げるのが、インドの格安ホテル運営会社OYO(オヨ)。オヨは2013年創業の新興企業ながら、AIを活用してインド最大のホテルチェーンに急成長した。OYOはソフトバンク・ビジョン・ファンドから1,000億円規模の出資を受けた。

 ソフトバンクとソフトバンク・ビジョン・ファンド、オヨの3社は、今年3月、合弁会社を設立。AIを駆使する格安ホテルを日本で展開する。

 ソフトバンクG系のフォートレスが、ユニゾHDのホワイトナイトに応じたのは、オヨ・ホテルズと連携する狙いがあるのでは、と取り沙汰された。

 実は、オヨには、不正建築で揺れるレオパレス21の買収に動くとの観測が株式市場を駆けめぐっている。狙いはレオパレス21が大量に保有している賃貸物件だ。

 オヨ・ホテルズと、ソフトバンクG傘下のヤフーは合弁会社をつくり、今年3月から不動産賃貸仲介事業を開始した。敷金・礼金・仲介手数料は無料、契約手続きはすべてスマホで完結。不動産屋に出向くことはおろか、紙でのやり取りも一切なし。賃貸住宅でも、AI旋風が吹き始めた。

 孫正義氏は7月18日、法人顧客向け行事「ソフトバンクワールド2019」で講演。「日本はいつの間にか人工知能(AI)後進国になってしまった」と述べ、インドでAIを活用して急成長している企業としてオヨを紹介した。

 〈孫氏は「オヨの創業者はまだ25歳。これから数カ月で世界最大のホテル王になる」と持ち上げた〉と日本経済新聞電子版(7月18日付)が報じた。

社員を投資家に育てるため、社員に2.1兆円融資

 孫氏の商法は、未上場の優良なAI企業に出資、株式上場させて、莫大なキャッシュを手にするというもの。すべてが、うまくいくとはかぎらない。損を出すことある。

 投資先を見分ける目利きが勝負どころだ。孫氏が「AI後進国」と嘆く日本で、どうやって目利きを育てるか。いかにも、孫氏らしい奇想天外の構想を打ち出した。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは8月17日、ソフトバンクGが、自社の従業員らが10兆円ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の2号ファンドに出資できるように従業員らに最大200億ドル(約2兆1,000億円)を融資することを計画していると報じた。

 見返りは大きい。同ファンドが大きなリターンを得られれば、従業員は融資を返済したうえで、利益を手にすることができる。当然、リスクもある。投資利益を手にできないばかりか、融資の返済にも窮することにもなる。投資は常に両刃の剣だ。

 従業員を目利きの投資家に育てる大作戦は、はたしてスタートできるのだろうか。

(了)
【森村 和男】

(前)

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