2024年12月22日( 日 )

【日韓問題・インバウンドへの影響】パチンコツーリズムの可能性を探る(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
韓国人利用客が多いGION1・1(博多区)
韓国人利用客が多いGION1・1(博多区)

韓国人のパチンコホール観光

 パチンコ・スロットを観光資源として生かすためには、広報活動が必要不可欠だ。パチンコホールやパチンコ・スロット台の情報を外国人観光客向けに提供する専用サイトはいくつか存在している。

 広告業を主業務とする(株)アガルタが運営する「PACHINKO PLAY.COM」では、店舗情報や遊技の仕方、台の仕様などを英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・ロシア語で情報発信。ホールまでの動線整備に注力している。また、同社はマルハンや京楽産業.(株)からの協力を受け、ショールームでパチンコの打ち方を学んだ後、実際にホールでパチンコやスロットを遊技する「パチンコ体験ツアー」も手がけている。外国人観光客をターゲットにした、パチンコツーリズム商戦はすでに始まっているのだ。

 6カ国語に対応する「PACHINKO PLAY.COM」に対して、アジアフューチャー(株)が展開する「Pachinko777」はターゲティングが明確だ。同サイト内は全編韓国語。東京・山口・沖縄・壱岐・福岡エリアのお勧めパチンコホールや遊技の仕方を掲載するほか、ピックアップニュースとして、福岡のグルメ情報(飲食店のオープン情報など)をインスタグラムで情報発信している。韓国人と福岡に焦点を絞り作成しているため、パチンコ・スロット遊技を旅行の目的とする来福韓国人からの需要を一手に引き受けている。

 韓国では「メダルチギ」と呼ばれる遊技機が一世を風靡した。メダルチギはカジノのスロットマシーンを流用したもので、内部に組み込まれた電子機器のプログラムによって当落抽選を行い、遊技機中央部に設置された液晶画面内で抽選結果に対応したさまざまな演出が展開される。「韓国版パチンコ」と呼ばれることもあるが、先述の通りカジノのスロットマシーンを流用したものであり、盤面に釘や入賞口(銀玉を入れる場所)はない。日本のパチンコと違い、技術介入要素(釘読み、止め打ちなど)は皆無となっている。

 さらに、景品への交換率は最大200倍(法定)、ダブルアップに成功すれば最大2万5,000倍(韓国では違法行為にあたる)。たとえば1,000円で大当たりを引ければ、最大20万円(法定)、ダブルアップ成功で2,500万円(違法)を手にすることが可能なのだ。日本のパチンコと比べ、いかに射幸性が高いかはいうまでもない。メダルチギは2006年に法律の改定により完全廃止となった。

 このメダルチギの代替として、日本のパチンコ・スロットは韓国人から注目を集めていると考えられる。若い世代にとっては、日本のアニメ・漫画作品の派生作品としての楽しみ方もあるようだ(パチンコ・スロット用に新たにつくられるオリジナルエピソードやキャラクターソングは少なくない)。こうした背景と、日本(とくに福岡)と韓国の地理的な近さが、韓国人向けパチンコツーリズム需要を喚起している。以下、パチンコホールに通う来福韓国人観光客の特徴をまとめた。

・複数店舗をめぐる。エリアとしては博多駅周辺で、その際の移動手段はバスが多い。
・ホールはデートスポットとして、カップルで遊技することが多い。
・店内の様子やパチンコ・スロット機(主に液晶画面上の演出)を写真に撮り、SNS上で共有する。
・商業ビルにテナントとして入っている店舗は敬遠されやすい(怖いと感じるらしい)。
・ホール巡りを主な観光目的としている韓国人の軍資金は10〜20万円におよぶ。

 日本企業が手がけた専用サイトによる情報発信、メダルチギがあったことによるパチンコ・スロットに対する理解度の高さ(景品交換の仕方など)により、韓国人観光客を迎え入れる日本のホール側の業務負担は、その他の外国人観光客への対応と比べ、軽度なもので済む。海外賭博制限のある韓国人にとっても「遊技」であるパチンコ・スロットはありがたい存在といえよう。

 韓国人のホール観光を定着させることは、日本国内で市場規模が縮小を続ける遊技業界にとっても、今後ますます重要になってくるだろう。

日韓問題はホール観光に水を差すのか

【図1】国別消費金額

 【図1】にあるように、来日韓国人だけで年間5,881億円のインバウンド消費が算出されている。日本が輸出管理優遇措置の対象国、いわゆるホワイト国から韓国を除外したことで、この消費額に影響はでるだろう。だが、パチンコ観光に限っていえば、ほとんど影響はないというのが関係者の見方だ。そもそも、韓国から日本にパチンコを打ちにくるのは個人旅行者。SNSなどで情報を得る手段をしっかりともっており、過熱する日韓の不仲報道に左右されない層なのだ。

 コト消費の部類に入るパチンコ・スロット遊技は、既存のツアー旅行では味わえない。だからこそ、かなり余裕のある所得層の韓国人がスポット的に楽しみにやってくる。

 今回の日韓問題程度では揺るがないコアなファン層を獲得しているところに、パチンコツーリズムの可能性を感じる。あとは、韓国人以外の外国人観光客をいかに取り込めるかがカギとなる。

プラザ博多(博多区):韓国語での案内が目立つ
プラザ博多(博多区):韓国語での案内が目立つ

(了)
【代 源太朗】

(前)

関連キーワード

関連記事