2024年11月22日( 金 )

【日韓問題・インバウンドへの影響】市内繁華街周辺 観光地柳川市の今(後)

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福岡県柳川市~例年同時期と比べ約半分に

 柳川市の観光課観光推進係の担当職員は、「2018年度はおよそ23万人の外国人観光客が訪れました。このうち韓国人観光客の割合は50.9%(約11万7,000人)と半分以上を占めています。3年前くらいまでは圧倒的に台湾人観光客が多かったのですが、ここ2年で韓国人観光客の割合が急激に伸びていました」と話す。

 今年度については「まだ情報収集の段階である」としたうえで、この時期に訪れる韓国人観光客については、日韓関係悪化にともない、「例年の同時期と比べると利用は約半分に減っている」と話した。減少の傾向が見られたのは7月ごろ、日韓関係悪化が顕在化し、頻繁に報道が出始めたころとしている。

 市内観光業界への影響については、「市内で宿泊する観光客があまり見受けられないため、観光消費額全体でみると大幅な落ち込みはない」としつつ、「韓国人観光客がこれまで団体ツアーを利用して柳川市を訪れる場合、川下り後に近隣店舗で食事をして次の場所に移動するという『通過型』あるいは『日帰り型』がメインでしたが、ツアー客自体が減っていることから、川下りの利用も当然落ち込んでいると思います」と述べた。

 市は現在、韓国以外のアジア諸国へのPR、近日中に開催が予定されているラグビーワールドカップを前に、欧米諸国へのアプローチを強化しようとしているとのことだ。

団体ツアー客の利用は“ほぼゼロ”

 記者は週末を利用して福岡県柳川市を訪れたが、土日であるにもかかわらず、やや閑散としている印象を受けた。市内随一の観光スポットである「柳川藩主立花邸 御花」周辺の人通りはまばら。取材中、韓国人と思われる人に出会ったのは10人にも満たなかった。

 観光案内所の職員によると、「例年この時期、国内外問わず観光客は少なくなる傾向にある」とのことだが、韓国からの観光客は確実に減っているという。

 市内で川下りを行っている主要な会社のうち、最も古くから川下りを行っているというY社は、「例年この時期(夏期)は1年のなかでも利用客が減る傾向にあります」と前置きをしたうえで、「当社の場合、もともと個人で利用されるお客さまが多いので、今のところ大きな影響は出ておりませんが、それでも韓国人を見かける機会は減った気がします」と答えた。

 D社は、「うちの場合はツアー客がメイン。30分のショートコースがあり、海外のツアー客が利用されるのですが、韓国人観光客の利用は、ほぼ“ゼロ”。日韓関係が悪化する前の予約はぽつぽつありますが、それ以降の予約はありません」と答えた。S社は個人、団体双方の利用があるとのことだが、「個人での利用はあるが団体の利用はほぼゼロ」と答え、J社は、「利用もそうですが、市内を歩く韓国人はほとんど見かけなくなりましたね」と答えた。

 D社のような団体客をメインに受け入れる会社の場合、多い時には土日祝日に20~30人乗りの貸切バスが15台程度訪れ、船頭が1日当たり4、5回程度川下りを周るとのこと。しかし今は韓国人の団体ツアー客が訪れなくなり、川下りは多くて1日1、2回程度、それも中国や台湾など、韓国以外のアジア諸国からの観光客だという。

 現地で乗船の案内をしているD社の従業員は、「例年この時期は売上が落ち込むなか、今年はもともと多かった韓国人旅行客が減り、さらに厳しいと思います。会社も厳しいと思いますが、現場で舟を漕ぐ船頭の場合は、給与が乗船1回あたりいくらという日当で支給されるため、今は彼らにとっても生計的に厳しいといえるでしょう」と答えてくれた。

(了)
【長谷川 大輔】

(前)

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