2024年12月24日( 火 )

中小企業の大廃業時代到来~地銀は生き残れるか(中)

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 NHKが10月6日(日)午後9時から、NHKスペシャル「大廃業時代~会社を看取(みと)るおくりびと~」を放映した。

 それによると、「中小企業の廃業件数はこの5年で20万件、経営者の8割以上が周囲の誰にも相談できず、孤立したまま廃業に追い込まれており、専門家は『企業の孤独死』と呼び、警鐘を鳴らしている。取引先企業や地元の金融機関に大きな損害を与え、地域経済の生態系を崩壊させかねない「リスクある廃業」が広がっているのだ。そうした事態を未然に防ごうと、弁護士や経営コンサルタントなどの専門職が廃業に寄り添う活動に乗り出し、通称「企業のおくりびと」として動き始めている。

 中小企業の大廃業時代の背景には、リーマン・ショック後、借入金の返済を猶予する政策やマイナス金利など超低金利政策などで、利益がほとんどなくても“生き延びる”企業が数十万社にも上ったことがあげられる。番組では、“おくりびと”がリスクの高い企業を無用に延命するのではなく、取引先や従業員、そして地域経済にも大きなダメージを与えない「いい廃業」へと導く過程を密着ルポで描き出していた。さらに、帝国データバンクと共同で、全国140万社の「廃業予測データベース」を解析。専門家の分析も交えながら、地域経済を循環・再生するヒントも探り出すことが大切だという。

 奥村聡経営コンサルタントは、三重県志摩市で印刷業を営む社長(娘)と会長(父親/いずれも当時)に廃業の相談を受けた際、「廃業にあたり、まず借金返済のめどを立てる。」ことを提言し、資産を売却する方針を確認。

~いい廃業の道程について~

(1)工場用地を売る見通しがついた。
(2)金融機関を訪れて借金をすぐに返済できると説明し、廃業することを納得してもらった。
(3)取引先に頼まれていた仕事は、その大部分を地元の他の印刷会社に引き継ぐことにした。
(4)従業員の再就職の支援も行った。

 社員たちと再出発を誓い合った会社最後の出勤日、それぞれが次の人生を歩き出す余力を残しての廃業だった。

 誰にも迷惑をかけずに廃業を成し遂げ、第二の人生を「地元デパートの婦人服売り場」で販売員として歩み始めた、彼女の笑顔は印象的だった。

【表1】を見ていただきたい。2017年度の47都道府県別の中小企業開廃業率表である。

※クリックで拡大

~この表から見えるもの~

 開業率が一番高いのは沖縄県で9.3%(廃業率4.0%)。

・次が埼玉県で7.4%(廃業率3.0%)。以下、千葉県7.2%(廃業率3.2%)。神奈川県、7.1%(廃業率3.2%)で、いずれも首都圏にある。ここまでが7%以上でいずれも人口が増加している県である。

 廃業率が一番高いのは富山県で4.3%(開業率3.3%)。廃業率が開業率を1%上回っている。

・次が大阪府で4.2%(開業率6.4%)。以下、茨城県4.1%(開業率6.0%)。岐阜県4.0%(開業率4.4%)に沖縄県を加え5県が4%以上となっているものの、いずれも開業率が上回っている。

 九州で開業率トップは福岡県で6.9%(廃業率3.8%)。次が熊本県で5.5%(廃業率3.1%)。以下、佐賀県4.9%(廃業率3.3%)。大分県4.8%(廃業率3.7%)。長崎県4.7%(廃業率3.4%)。宮崎県4.4%(廃業率3.1%)。鹿児島県4.4%(廃業率3.6%)となっている。

<まとめ>

 2017年の全国の人口は、2015年の国勢調査人口より38万9,000人減少して1億2,670万人となったが、開業率は5.6%で廃業率の3.5%を上回っている。ただ、廃業率が開業率を上回っている県が青森県、岩手県、秋田県、新潟県、富山県の5県。いずれも東北・北陸地方となっているものの、今後人口の減少にともなう地域経済の衰退の影響を受け、全国的に廃業率が開業率を上回る県が増加するものと予想される。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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