2024年12月05日( 木 )

トラック運送と倉庫の両輪で成長医薬品、住宅設備、食品、日用雑貨が4本柱

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物流
(株)博運社

若者がワクワクする会社に

代表取締役社長 眞鍋 和弘 氏
代表取締役社長 眞鍋 和弘 氏

 「物流は経済の血液で、国民生活を支える社会的に意義のある仕事なのに正当な評価をされているとは言えない。物流の魅力を知ってもらい若い人をわくわくさせる会社にしたい」と話すのは(株)博運社の眞鍋和弘社長。

 博運社は約450台のトラックを保有し、年商109億円の九州を代表するトラック運送会社。運送だけでなく、商品を保管する倉庫を持ち、その総面積は約4万5,000坪(14万6,500m2)と九州最大規模を誇る。

 眞鍋社長の父・故眞鍋庸人氏が1957年創立した。トラック運送と倉庫が別々だった業界で、両事業を組み合わせることに着目。九州の主要拠点に倉庫を併設した営業所を設置していき、業績を飛躍的に伸ばした。今日では当たり前になったが、荷主の企業にとって保管と輸配送を1社に任せるだけで済む革新的なサービスだった。

医薬品は7割シェア

博運社本社
博運社本社

 同社が手がけるのは(1)医薬品、(2)住宅関連設備、(3)食品、(4)日用雑貨の4分野。このうち、医薬品は九州内の輸配送で7割という圧倒的なシェアを占める。

 医薬品は輸送中のわずかな温度変化でも品質が劣化し患者の生命に影響しかねない。約200台の医薬品専用車には庫内の温度が一定に保たれているかどうかを監視する装置が取り付けられている。本社の医薬品専用ターミナルと神戸市西区にある医薬品ターミナルは冷蔵5℃、冷蔵10℃、常温と3つの温度帯で定温管理され、管理薬剤師が常駐し品質管理に目を光らせる。メーカーから集荷し神戸市の医薬品ターミナルを経て本社ターミナルへ、そして各地の代理店・病院まで一貫した温度管理で運営されている。高いシェアを占めるに至ったのは、厳しい品質管理の賜物なのだ。

 住宅関連設備はメーカーに代わって在庫と入出庫を管理し、各地の代理店に送り出すのが主な業務。拠点である福岡県糟屋町の第3ターミナルでは約1万5,000品目の住宅資材を在庫する。近年増えているのが、代理店や建材店を経由せず直接マンションや戸建住宅の建築現場に運んで欲しいというニーズ。代理店の倉庫を経由すると時間がかかり、在庫がない場合は発注をかけねばならず、二度手間になるためだ。

 食品の業務は広範におよぶ。常温から冷蔵、冷凍と温度帯だけで3つあり、それぞれ専用の車両で店舗に配送する。物流施設での庫内作業は個人単位でのピッキングが増えるなど高度化・複雑化している。

 同社は日用雑貨における共同配送のパイオニアで、複数のメーカー製品を混載して代理店に届ける仕組みを九州でいち早く実現した。現在力を入れているのは情報システムの活用。専門のシステムエンジニアが物流センターでの情報をデータベース化し、たとえば商品別の在庫回転率や売れ筋情報などを荷主にフィードバックする。

 物流と一口にいっても奥は深く、知識集約型産業の要素が強いのだ。

医薬品定温輸送車
医薬品定温輸送車

時代先取りした福岡南流通センター

鳥栖JCT近くに立地する福岡南流通センター(小郡営業所)
鳥栖JCT近くに立地する福岡南流通センター(小郡営業所)

 1994年、鳥栖ジャンクション近くに建設した福岡南流通センター(現・小郡営業所)は延床面積3万m2を超え、当時物流新時代を先取りした画期的な施設と言われた。保管と在庫・入出庫の管理だけでなく、荷主の要望に応じ小分け、値札付け、梱包などの流通加工を行い、オンラインで情報を荷主とやりとりする。企業では物流を外部に委託するアウトソーシングの時代が始まっており、そうしたニーズに応えたものだった。

 その後、バブル崩壊とリーマンショックを経て国内の物流は伸び悩むようになった。人口減時代の到来もあって今後も医薬品を除くと物流需要の伸びは期待しにくい。

 眞鍋社長は「医薬品、住宅設備、食品、日用雑貨の4本柱は変わらないが、周辺分野を掘り起こすとともに新規事業を開拓する」と今後の成長戦略を示す。周辺分野の掘り起こしでは、ネット通販の配送を始めた。まだ、小規模の取り組みだが、物流では数少ない成長市場と目されている。食品と日用雑貨で培った多品種少量配送のノウハウを生かせるのが強みだ。

 もう1つの挑戦は「物流人材派遣業」とも言うべきもの。もともと、深刻な人手不足に対応するため、ベトナム人学生を採用したことから始まった。2017年ベトナム・ホーチミン市に窓口となる現地法人「博運社ベトナム」を設立、18年4月に第1陣として4人、秋に第2陣11人を受け入れた。全員大学を卒業したばかりの若者で、来日前に日本語教育を行い一定の基準をパスすることが条件。ベトナムは高学歴の若者の就職の場が少なく、日本で働きたいという人が多いという。

日本とベトナム結び新規事業

 国内では日本語学校で学ぶかたわら、同社の倉庫で庫内作業に従事する。待遇は日本人従業員と同じで、住居も同社が用意する。19年末までに第3陣が到着する。

 2年の勤務期間を終えた後は希望者にベトナムの日系企業への就職を斡旋することを計画している。中国から拠点を移転する企業が増加しており、日本語を話す若者へのニーズは強い。物流要員への需要も今後急増が見込まれる。現地法人は人材紹介会社の役割を果たす。日本国内での人手確保と新規事業育成の一石二鳥になる。

 眞鍋社長がとりわけ力を入れているのが人材育成。「物流は肉体労働のイメージが強いが、実はそうではなくITなどの高度な知識を求められる情報産業に変わりつつある」。庫内作業などの肉体労働はパート化し、頭脳部門を担う人材に積極投資する。といっても現場を軽視するのではなく、トラック乗務員は高卒新卒者を採用し長期的に育成する。

 眞鍋社長自ら、九州の学生サークルの会合に足を運び、飲み会に顔を出すことも。学生が物流と博運社をどう見ているか探るためで、結果的に同社に入社してくれればそれで良い。

 社名は「博愛の心を持って運ぶことを使命とする」という創業理念から取ったもの。「この原点を忘れてはならない」と同社長は言う。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:眞鍋 和弘
所在地:福岡県糟屋郡志免町別府北3-4-1
設 立:1957年1月
資本金:約8,918万円
TEL:092-621-8831
URL:http://www.hus.co.jp/saiyo

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