2024年12月22日( 日 )

「健康コンサル」も担う 佐賀の鍼灸師、長尾良一氏(後)

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毎日健康でなければもったいない

「患者を健康にしたい」という強い気持ちで治療に当たる長尾良一院長
「患者を健康にしたい」という強い気持ちで治療に当たる長尾良一院長

 長尾院長はいつも朗らかに口ずさむ。「1日1日消えゆく毎日、健康で楽しく生きなければもったいない、もったいない」。1人ひとりの健康の重要さを説いてくれる。そして「1人でも多くの患者さんを健康にしたい!笑顔にしたい!」という自分の役割を具体的に語ってくれる。

 長尾院長がよく口にしていることを紹介しよう。

 「超高齢社会の現在、『親としての尊厳』を保ち続けてほしいと願っている。最期のときまで尊厳を保つことができることこそ、人生においてとても大切なのではないか。鍼や灸を通じてそのお手伝いをさせていただいている」

 「頭も身体も使わないと使えなくなる。死ぬまで使い続けることが大切である。痛み、痺れ、だるさ、不安、イライラ、高血圧などは、身体を守るための現象であり、そのメッセージと考えてどこに原因があるか探すことが重要だ」

 「『長尾治療院の理念戒め含む心得の十か条』があり、その心得を守って患者さんと接することを、治療院全員で実行するように心がけている」

 中国で会うことすら難しい鍼灸師と一緒に、さまざまな活動に取り組んでいる長尾院長は、日本で唯一無二の存在であろう。これからさらなる活躍が期待される。人生100年時代を迎えるなか、健康コンサルタントともいえる長尾院長のような存在が必要なのかもしれない。

(了)
【青木悦子】

<プロフィール>
長尾 良一(ながお・りょういち)

 1949年福岡県生まれ。手技療法の大家であった父・松造氏の後を継ぎ、1980 年佐賀県唐津市で長尾治療院を開業。長尾流の手技による独自の鍼灸治療を行う。現在、長尾治療院院長。1991年に日中特種鍼法研究会を発足させ会長に就任。中国遼寧省中医研究員座教授、中国雲南省中華耳針学友会名誉会長、中華人民共和国雲南省耳針研究所名誉教授など役職多数。中医学の手法を用いた有効性の高い独自の健康法を民間に普及すべく講演活動を行う。

<COMPANY INFORMATION>
長尾治療院

所在地:〒847-0014 佐賀県唐津市西城内6-7
治療内容:内科・外科・婦人科・皮膚科眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・精神科・脳神経科系
TEL:0955-72-7243
FAX:0955-74-7072
URL:http://nagao-chiryouin.jp

伝統医学の復権を目指した「中国特種鍼法研究会」が源流

西洋医学に押され危機感が募る

中国を起源とする陰陽五行説は伝統医学に取り入れられている
中国を起源とする陰陽五行説は伝統医学に取り入れられている

 「中国特種鍼法研究会」という組織が中国にある。1990年4月に「遼寧省特種鍼法研究会」として発足した。「眼針」の創始者である彭静山氏を会長に、遼寧中医研究院院長や孫啓鳳氏の尽力により、省内の著名な中医、漢方医をつのり、結成された研究会である。

 このような会が設立された背景には、当時直面していた中国伝統医学の危機にあった。

 中国においては西洋医学のめざましい台頭があり、伝統的な医学を否定する傾向が強まった。毛沢東政策では新風を吹き込むことにより、法統的文化遺産の破壊に拍車が掛けられる時代であった。

 中国伝統医学の関係者は、その存在意義すら危ぶまれるとの共有認識に至った。脈々と受け継がれてきた民間医療、家伝の針法等の1つひとつを、「焦式頭皮針」の焦順発氏らが中心になり、審査委員会を組織して詳細に吟味してきた。結果、中医、漢方医を選考し、より高度な研究と内外に向けての普及を目的に設立されたのがこの研究会なのである。

長尾院長も研究会に参画

 1992年、「蟒針療法」の権威者、王実古氏を実行委員長に、学術交流大会を重ね、大連で開催された中国全国大会をもって、遼寧省特種鍼法研究会は中国特種鍼法研究会と名称を改めた。

 中国国家第2級の学会として認定を受け顧問には、世界鍼灸学会会長、王雪苔氏を迎え入れてより多くの人材を集める門戸を広げた。いうなればこの研究会の国際化である。現在では、韓国、台湾からも会員が多数入会し、より大規模な研究会としてその存在意義も増し、今後の活動が期持されているところとなった。この国際化の流れに沿って、長尾院長も参加することを決断した。長尾院長の最大の貢献は、日本人に適応できる療法を開発したことにある。

 長尾院長は、遼寧省特種鍼法研究会の時代から王実古、彭静山教授らとともに同志として活動してきた実績がある。国際大会などの大きな大会には、常に王雪苔教授とともに主席として参加してきた。

 数々の成果の蓄積の上に、長尾院長が中心となり中国全国の特種鍼法の創始者、最高権威者を結集して、「日中特種鍼法研究会」を発足された。長尾院長が会長となり特鍼の追試を中心に、現在まで臨床でのデータ集積、治験発表、特鍼普及伝達講習など国内外でさまざまな活動が展開されている。

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(中)

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