【業界ウォッチ】中川政七商店
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商業施設でアパレルの比重が低下し、生活雑貨ショップの存在が高まるなかで、勢いのあるのが「中川政七商店」。
2010年11月、京都のファッションビル「ラクエ四条烏丸」に1号店がオープンして以来、ショッピングモールや駅ビルなどに出店、全国に急速に店舗網を拡大、現在43店舗を展開する。
デベロッパーからの出店依頼も多く、今月1日開業した「渋谷スクランブルスクエア」には旗艦店を設けた。
工芸にフォーカスした専門店で、そのルーツは1716年、初代中屋喜兵衛が、奈良で「奈良晒」の商いを始めた300年余り前まで遡る。
それ以降、幾多の変遷を経てのれんは守り続けられてきたが、大きな転機となったのが、1985年、卸しから小売に進出、製造も手がけるようになったこと。
その後、13代目の中川淳は、ものづくりの想いを「正しく伝える」ためには、自分たちで直接お客さまに届けなくてはならないという考えのもと、直営店出店を加速させる。
SPA業態を確立し、2003年には「表参道ヒルズ」にフラッグシップをオープンし、さらに同社のものづくりを広く知ってもらえるきっかけとなった。
そして、2008年には、「日本の伝統工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、「中川政七商店」の展開をスタートした。
13年にはJR東京駅前の商業施設「KITTE」に、初めての大型店となる「中川政七商店 東京本店」を設けた。
その間、工芸の産地と密接に関わり合い、衰退する日本の伝統工芸に危機感を抱き、メーカーや工房を支援するコンサルティング事業も行い、メーカーとの合同展示会も開催、販路開拓にも力を入れ、その存続に尽力してきた。
その結果、川上から川下まですべてに関わることで工芸品の流通を維持し、ショップはその出口機能の役割をはたしている。
「渋谷店」は消費者から見た"日本の工芸の入り口"をコンセプトに掲げ、過去最大となる約130坪のスペースに、生活雑貨、衣類、食品など、全国800を超えるメーカーとともにつくり上げた約4000点の商品をそろえた。
誰が、どうやって、どのように、どれほどの時間をかけてつくっているか。そしてそれにはどのような歴史の積み重ねがあるのか、ものづくりの背景にある物語を見て・読んで・食べて・触って・感じることができる新しい試みの店舗だ。
店の中央には、「仝(おどう)」と名付けたスペースを設け、method 山田遊氏のバイイングのもと、全国各地から、工芸の"今"を代表する品々を展開、イベント・企画スペースも設けた。
オープンを記念して、同社のものづくりを初めて紐解いたブランドブック「中川政 七商店のものづくり ものざね」を出版し、販売するなど情報発信に力を入れている。
奈良県産の「かや織ふきん」を約100種類そろえたコーナー、世界でいちばん薄くて軽い生地をつくることができるテキスタイルメーカーのカジレーネが手がける、軽さと高い機能性が売り物であるトラベルブランド「TO&FRO」のショップインショップも設けて、工芸の魅力を発信する。
男性を取り込むために仕事の時間に使いたい日本のモノづくりのアイテムを集めて、小物、バッグ、衣類などをそろえた「仕事の道具」コーナー、生地を用意し、タペストリーや座布団などのオーダーを受け付け、ハンカチなどへの刺繍サービスも行う「おあつらえ処」も初めて導入した。
今後はオンリーワン業態である工芸の総合SPAとしてさらに磨きをかけ、産地とは観光の分野まで入り込んで活性化を図っていこうとしている。
【西川立一】
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