2024年12月23日( 月 )

OCHIホールディングス(株)創業の礎を守り進化させる胆力

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 2010年10月1日に越智産業(株)の単独株式移転により、持株会社として設立されたOCHIホールディングス(株)。直近の2019年3月期で1,000億円の売上高を突破した。業界内の熾烈な競合のなかで、堅実に実績を積み上げる同社の強さについてレポートする。

■会社のブレーンとして

越智 通広 氏
越智 通広 氏

 OCHIホールディングスは、越智産業(株)をはじめ17社を傘下に置く。その事業体は、建材、環境・アメニティー、加工、その他建設および介護関連事業で形成されている。

 同社のルーツは1955年5月、越智文哉氏が福岡市博多区大博町で、越智商店を創業。木材と合板などを中心とした建築材料の販売を立ち上げた。その後、58年10月に株式会社へ改組し、越智商店を設立。70年6月に本社を現在地に移転し、越智産業(株)に商号を変更した。

 1996年2月、福岡証券取引所に株式上場され、2010年10月の株式移転で同社が設立された。14年10月に東京証券取引所市場第一部に上場し、今日に至る。この越智産業および同社の歴史を見つめ続け、越智通広現代表取締役社長のブレーンとして、さらに同社傘下の西日本フレーミング(株)の役員として活躍し、現在は地域に適した健康創造住宅を提案するのが、『九州山口匠の会』事務局長をつとめる舩倉弘明氏だ。

■謙虚・実直・勤勉

 舩倉氏は、ヤマハのホーム用品事業部で活躍し、建設資材と住宅機器の分野を飛躍させた立役者だった。

 「ヤマハ時代から、越智通広社長の父で創業者である文哉さんとお取引していただき、多大なご厚情をいただきました。今でも尊敬する経営者・リーダーです。業績を着実に伸ばされ続けて、企業規模が大きくなっても控えめで腰が低い本当に謙虚な方でした。仕事は、誰もが認める実直さで勤勉であり、お客さまのため、そして自社の社員の皆さまのために、自ら汗水流しておられました。そして奥さまで通広社長の母・八千代さんと2人3脚で、ベニヤ板など木材関連資材を中心としたご商売を築き、今の礎を築いたのです」(船倉氏)

 その後、越智通広社長との交流が始まった。

 「私がヤマハの大阪支店時代に、通広社長との交流が始まりました。通広社長とは大学(早稲田大学)の同窓で、“舩倉先輩、よろしくお願いいたします”と丁寧に挨拶いただいたことは今も覚えております。通広社長も父の文哉さんと同じ謙虚で実直なお人柄で、社交性の高い方です。文哉さんの人間力と仕事ぶりを受け継いでおられました。世間でよく “企業の二代目は、苦労知らずのボンボンで商才などない”などと揶揄されることがありますが、通広社長は優れた商売の才覚をお持ちで、“さらに越智産業を発展させる”と確信しました。文哉さん、そして母の八千代さんの教えを正しく理解し、具現化しておられます。機を見て敏そのものです」と、舩倉氏は越智通広代表との出会いを語る。

 そして越智産業(株)が1996(平成8)年2月に福岡証券取引所に株式を上場した直後に、越智通広社長から声がかかった。

 「“舩倉先輩、福岡に戻ってきて、私の事業を手伝っていただけませんか?”と打診がありました。以前から通広社長は、“自社を上場させてMy companyからOur companyにして、父が興した事業をより進化発展させたい”と、とても熱く語っておられました。想いだけでなく、どのようにして越智産業を進化・発展させていくのかを、具体的かつ精妙に計画されていたのです。当時私は、50歳でした。いろいろ迷いましたが、通広社長のもとでお手伝いさせていただくことを決心したのです」

■冷静な判断力と人情味ある経営者

OCHIホールディングス本社
OCHIホールディングス本社

 舩倉氏は、越智社長の友人として、ヤマハ時代の営業経験や25歳時に取得した中小企業診断士のノウハウを駆使し、同社の進化発展に貢献してきた。そのなかで、同社傘下である西日本フレーミング(株)の取締役(専務)として、不調であった業績を、復調・上昇させた。

 「西日本フレーミングはランバー販売パネル製造の会社でした。通広社長から“西日本フレーミングを買って欲しいとオファーがあり、買収しようか慎重に吟味している。自社事業と関連するので買収したい”と相談がありました。私も“ぜひそうすべきです”と進言いたしました。そして、2010年6月に西日本フレーミングを買収し、通広社長から“西日本フレーミングのマネジメントを頼みます”と打診され、専務を拝命したのです」

 その後越智産業は、全国の建設資材や住宅機器に関わる企業のM&Aを実行し、現在17社を傘下に置く事業体をつくり上げた。

 「M&Aのイメージは、買収して完全に支配するような強引な感じがありますが、通広社長にはいっさいそうしたところがありません。買収先の企業風土と社員やスタッフの立場を尊重し、これまで同様もしくはそれ以上の働きやすい環境にするマネジメントを実行しています。さらに、買収先企業の得意先を丁寧に訪問し、お客さまと向き合ってきました。通広社長の経営マネジメントは、とくに上場後、もともとバンカーであった人脈と上場後に交流の領域が広がった人脈により、さらに研ぎ澄まされた情報収集力が源流となっています。群を抜いて冷静な経営判断だけでなく、西日本フレーミングをはじめとする買収した企業文化を尊重する人間味溢れるマネジメントを実行するのです。通広社長は今後もOCHIホールディングスを、建設資材と住宅機器の総合商社としてさらなる発展を成し遂げるでしょう。それは、創業者文哉さんの遺訓と母の八千代さんの“謙虚・実直そして勤勉であること、お客さまを大切にする”商売の鉄則の教えを正しく受け継いで、事業をつくり上げているからです」(舩倉弘明氏)

 越智社長の、冷静沈着な眼力と経営マネジメントに加えて人情味溢れる豊かな人間力を持ち合わせたリーダーとしての器の大きさが、同社進化発展の源であることは明らかだ。そして、「本業専念」─創業の礎である遺訓を正しく踏襲していることも大きい。今後も同社は、業界トップクラスの住建材総合商社として、建設業界を支え貢献し続けていく。

【河原 清明】

<COMPANY INFORMATION>
代表:越智 通広
設立:2010年10月
所在地:福岡市中央区那の津3-12-20
資本金:4億円
事業内容:建設資材、住宅機器の販売ほか
売上高:1,046億7,100万円(19年3月期)

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