三代で身代を潰すのは世の常~井上兄弟、政治業に就職する(後)
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博多中洲のドン、井上吉左衛門
さて、井上家についてである。福岡1区の代議士・井上貴博氏と福岡県議である博行氏の祖父が、井上吉左衛門氏である。同氏は中洲・博多のドンであった。事実、自宅は中洲1丁目に構えている(写真参照)。居住地区が中洲ど真ん中。
吉左衛門氏は昭和25年に西日本自動車を設立した。ほかに自動車学校など、関連会社がある。同氏は昭和30年代から、『博多祇園山笠振興会』会長を25年近く務めた。言わば博多の『顔役』であった。また、政治の方でも福岡県議会議長の要職に就くなど、才覚をフル稼働させた経緯がある。貴博代議士・博行県議にしてみれば、ビッグ・ビッググランドファーザー(偉大な祖父)であったのだ。
両人の実父が、雅實氏である。偉大な父の事業・政治遺産を継承した2代目になる。この人は、スケールの大きい面倒見の良い人物であった。今でも周囲からは慕われている。政治家としては、博多区の県議会議員を務めた。雅實氏は、政治票を固めるという姑息な目的で側近たちや周辺人物を中洲で接待したのではない。他人の喜ぶことを眺めるのが趣味で御馳走したのである。ただし、事業規模が10倍あれば接待費の吸収はできたのであろうが、現実は厳しい事態になったのであった。中洲の自宅は雅實氏に相続されていた。別資料の謄本参照通り、1992(平成4)年には根抵当額6億円が債務者・井上雅實氏で設定されていたのである。その後、関連会社(有)福岡市自動車学校に名義が移り、この会社債務で担保設定がなされている。この担保設定から読み取れることは、「雅實氏が接待交際費を個人で捻出していたのではないか」ということである。他人様が喜んでくれる行為は、素晴らしいことである。だが、自分の稼ぎ能力の範囲内に収めないと、周りに迷惑をかける最悪局面を惹起させることになる。表現を換えれば、『甘い二代目さん=ボンボン』と陰口を叩かれるのである。
厳しく言えば、偉大な父・吉左衛門氏の遺産(この場合は物質的遺産、政治遺産は孫まで継承される)を二代目・雅實氏が使い果たしたと言える。この大盤振る舞いがあったからこそ、2人の男子どもたちが政治家になれたのである。だが一方では、経営の面ではグループ中核企業・西日本自動車を身売りする破目になった。このタクシーに乗るたびに、運転手さんたちの険しい批判を耳にしたものだ。「我々の待遇を改善できないくせに、何が政治だ」と。
貴博代議士も博行県議も、ギリギリのところで素晴らしい就職先を確保できたのである。一般サラリーマンが生活できる環境ではない。井上家のメンツを潰すような、ケチな付き合いは許されない宿命を背負っている。だからといって、関連会社から高い給料、破格の交際費の調達は無理である。前述のタクシー運転手さんたちは「もう少しボーナスを上げてもらいたい」と、不満轟々だった現実があったのだ。今までの背景を述べてきたが、賢明な読者はもう理解したはずだ。「あー貴博代議士が税金にあたる政党助成金1,300万円をくすめた行為は、銭に瀕してやったのか!!」と。偉大な祖父・吉左衛門氏は、草葉の陰で怒っていることであろう。名門井上家も、三代目になるとさもしい行動に走るとは情けない。ただ2人の孫は政治業に就職できた。まだ運が残っていた。まーどこまで運が続くか、見ものである。
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