2024年12月05日( 木 )

豊洲市場における設計偽装 政商・日建設計(6)

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東京地方裁判所が東京都に忖度?

 仲卸業者が東京都を相手取って提訴して豊洲市場の使用禁止を求める訴訟において、東京地裁民事第51部清水知恵子裁判長は審理に入ることなく結審しようとした。これは原告が主張する機会を奪い、一方的に被告に有利な裁判進行を目論むものであり、我が国の司法制度に対する冒涜である。

 東京都としては、豊洲市場が使用禁止となれば、都民を巻き込み大混乱となるので、市場の使用禁止は絶対に避けなければならない。そんな東京都の思惑に対し、東京地裁が「忖度」したとは考えたくないが、客観的には、忖度と受け取られてもしかたないほど、裁判所の対応には大きな疑問を感じざるを得ない。

 日建設計の設計偽装により、東京都は非常に苦しい立場に追い込まれている。豊洲市場を所有・管理する東京都は、日建設計による違法行為の被害者でもあるので、日建設計に対し、12億円の設計料の返還と損害賠償を請求すべきである。東京都も東京都民も、日建設計の暴挙を決して許してはならない。

JSCA(一般社団法人日本建築構造技術者協会)会長と副会長による茶番劇

 JSCAの森高前会長は、東京都の市場問題プロジェクトチーム(以下「PT」)において構造の専門家という立場で委員を務めていた。PTの会議に日建設計が出席して説明を行ったことがあるが、この時PTで説明を行ったのが日建設計の常木氏であり、JSCAの森高会長は日建設計を擁護する姿勢に終始していた。

 この時点で常木氏はJSCAの副会長という役職であり、PTにおける日建設計側の説明者と 建築構造の専門家としてPTに出席した委員が、実は同じ組織の会長・副会長という「身内の庇い合い」だったのである。そして、よりによって、豊洲市場の設計偽装の張本人がJSCAの新しい会長に就任したのである。

 市場問題PTは、豊洲市場の違法性・安全性などを検証する場ではなく、単に「専門家を集めて検討しましたが問題ありませんでした」という結論ありきの会議だったのである。東京都にとっては、豊洲市場を早く開場し、既成事実にすることが大命題だったのである。仲卸業者が起こした訴訟も事実上のフリーズ状態であったし、豊洲市場も世間に根付きつつある。東京都および東京地裁は この既成事実化を狙っていたのであろう。

(下記はメーカーのカタログに日建設計が追記して偽装したPTでの説明資料)

※クリックで拡大

 この日建設計の説明資料では「Dsを割増す必要がない」と追記されているが、豊洲市場の建物において問題とされているのは「Dsが不正に低減されている」ということである。日建設計は「不正な低減」を「割増し不要」にすり替えて、PTに虚偽の説明資料を提出したのである。前述の森高委員(JSCA会長)がこの資料を見れば、即座に虚偽資料であることがわかったはずである。しかし、前述の通り、森高委員は、日建設計を擁護する姿勢に終始したのであった。

 日建設計にしても、冒頭で触れた福岡市の傾斜マンションを分譲したJR九州にしても、自社の利益を最優先し、適法で価格に見合った価値の建物をつくるという使命を忘れている。設計における偽装や販売価格に見合う価値がないほどの瑕疵が明らかになっても逃げ回る姿は見苦しいとしか言いようがない。

 日本では9人に1人がマンションに居住している。マンションの不具合についてJR九州のような対応をする販売会社も多いと思われ、現状では区分所有者側が泣き寝入りしているケースがほとんどである。

 今回、話をうかがった構造設計一級建築士の仲盛昭二氏は「マンションにおける瑕疵は、原因が設計であっても施工であっても、本来のマンションの価値を大きく毀損させているのです。3,000万円で購入したマンションに不具合があり、現状の価値が1,000万円と考えられる場合、既存された2,000万円を販売会社が補償するか、もしくは本来の価値の状態に戻すべきです。私には マンションの瑕疵に関する相談も多く寄せられていますが、『本来の価値の状態に戻す』ことを念頭において技術者としてアドバイスをしています」と語っている。

 豊洲市場の裁判は、仲卸業者による訴訟の審理が2月20日に再開することとなり、今後の裁判がどういう方向に進んでいくのか。東京都民だけでなく、全国から注目を集める裁判となるであろう。東京地裁の東京都への忖度は続くのか?それとも三権分立を貫き、司法として誇りをもって公正な審理を行うのか?注目される裁判であるが、関係者の話によると、2月20日の審理再開の期日に結審するという憶測が流れており、実質第1回目の審理において結審ということになれば、東京地裁の東京都への忖度が続くということになるのか?データ・マックスでは、今後も取材を続ける予定である。

(了)
【桑野 健介】

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