2024年12月23日( 月 )

新型コロナウイルスの急速な拡大と韓国経済への影響(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 旅行客が減少したので、当然免税店の売上も減少している。THAADミサイル配備以来、中国人観光客の大幅な減少で、すでに大きなダメージを被っていた免税店業界は、徐々に中国人観光客が戻ってくることに期待をしていたが、今回の事態はさらに大きな痛手となりかねない。

 国内の航空業界も同じような状況となっている。武漢以外の中国路線を縮小もしくは中止せざるを得なくなっている。昨年第3四半期基準で国内航空会社の中国路線の比重は、アシアナ航空が19%で、チェジュ航空が15%で、大韓航空が13%で、ティウェイ航空が4%となっている。中国路線の縮小もしくは中止がどれほど航空会社の収益に影響を与えるかがわかるだろう。

 世界貿易機関(WTO)によると、中国人観光客は年間2,580億ドルを海外旅行で使っており、その金額は米国人の観光消費の2倍に達しているという。それが制限を受けるようになったので、韓国だけでなく、世界経済に与える影響も少なくない。

 このような影響は旅行業界だけではない。韓国は中国で生産された部品を輸入して、完成品を製造する場合が多い。中国からの車の部品調達に支障をきたし、現代自動車、KIA自動車は生産中止に追い込まれている。中国以外の地域からの調達を検討したり、その対策に追われている。韓国では今回の感染症発生で内需の落ち込みはもちろん、輸出にも一定の影響が出るのは必至である。

 その反面、今回の感染症で商売が繁盛している業界もある。マスクは品切れ状態で、工場をフル稼働しても追いつかないようだ。中国からもマスクの注文が相次いでいる。それに、空気清浄機、泡石鹸などが飛ぶように売れているようだ。しかし、これらは一部の話であって、全般的には経済にマイナスの影響をおよぼしているのは間違いない。

 そんな中、現代経済研究院は新型肺炎の流行で、今年の韓国の経済成長率は最大で0.2%減少すると明らかにした。この報告書では、今回の感染症は以前のSARSより中国の消費、投資、輸出に与える影響は大きく、韓国経済にもおよぶと予測している。

 最後にこの感染症は今後どのようになっていくのだろうか。感染症の潜伏期間が長く、今後もっと拡散するのか、それともピークを過ぎ、終息に向かうのかはもう少し様子を見る必要がある。今のところ、1人の感染者から2名、3名に感染することまでは突き止めているが、このウイルスがどれほど強くて、どれほど持続するかは、まだわかっていない。

 各国は感染症の原因と感染ルートを追跡すると同時に、拡散防止に注力しているので、中世の「黒死病」のようになることは、おそらくないだろう。情報共有と国際連携を通じ、この感染症が解明され、事態が早く解決されることを願っている。

(了)

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