【インタビュー/加谷 珪一】オリンピック後、2020年代日本の未来図~祭りの後の日本経済発展のために(4)
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経済評論家 加谷 珪一 氏
――米中貿易摩擦、中国の成長鈍化などの影響をどう見ますか?また、2020年の交渉の見通しや中国ビジネスへの影響は如何でしょうか?
加谷 先日の米中間の部分合意(2019年12月13日)で市場関係者は一安心したと思います。貿易摩擦がこのまま続くと中国経済がスローダウンし、米国経済も影響を受けるところでした。中国の輸出が減りましたので、日本から中国への部品の輸出も減ったと思います。
しかし、中国には10億人の巨大な内需市場があり、内需経済でそれなりの成長を達成できるため、仮に米中摩擦が今の程度で甚だしくならなければ、交渉が進展しなくても、あまり心配しなくてよいと思います。
2020年には米国大統領選挙があり、トランプ大統領としても下手なことはできません。譲歩しすぎると保守派の突き上げに遭い、強硬策に出ると自由市場経済派から批判を受けます。あくまで推測ですが、しばらくは大きな変化は発生せずに、おそらく若干緩和されるという状況で留め置かれると思いますので、心配しなくて良いでしょう。ただ、大統領選挙後に民主党政権に交替する場合はまた変化が生じるでしょう。
アジアでは良いにしろ悪いにしろ中国の影響力は大きく、中国を中心にしたアジア経済圏が近い将来出来上がると予測しています。意見はあるでしょうが、ビジネスチャンスであり、九州の企業にとって取りに行くべき市場だと思います。九州で中国への進出を考えている企業は、悲観的にならず、攻めの姿勢を強めて良いと思います。
九州での具体的な影響は
――九州北部は自動車の一大生産拠点ですので、自動車業界の今後についてもう少しうかがえますか。
加谷 パソコンのように水平分業が進みます。部品メーカーの系列が縦割りできちっとしていて、トヨタなどに納入するという従来の図式が崩れていきます。たとえば、モーターは日本電産、バッテリーは中国メーカーということなると、トヨタ、日産の系列に入っているから安心ということではなくなります。自動車産業への依存は要注意かと思います。
自動車のつくり方、売り方の両方が変わることを意味し、付帯するビジネスの在り方も変わっていきます。トヨタなどに売り込むという時代ではなくなり、発想の転換が必要です。工場を誘致して雇用を生むという考えは成立しなくなります。メーカーがどのように自動車を売ろうとしているかを考え、その生産体制のシフトに合わせ、どのような工場を誘致するのが良いか、どのような企業の売り込みをしていくかを考えないといけません。
先手を打てれば、大きなビジネスチャンスとなります。トヨタなどは、場合によってはディーラーに介護施設としての機能をもたせるという計画をもっているようで、今後新しいビジネスチャンスが生まれると考えることもできます。
――地域の雇用は維持できるのでしょうか?
加谷 地方の中小都市では自動車のディーラーは地方の名士が経営していることが多く、自家用車の販売台数が2、3割減るとなると大変です。地域社会に大きなインパクトをもたらすでしょう。とはいえ、トヨタは毎年1,000万台売っている会社であり、すぐになくなるということではないです。本当に雇用がなくなっていくのは7~10年でしょうが、その間に準備をしていくことが大事です。これはあっという間ですので、いますぐ対応していくことが必要です。もちろん九州北部に限らず、日本全国同様です。ただ、商業、ビジネスが活発な九州はほかの地域より相当有利に展開できるはずで、自信をもっていただければと思います。
(了)
【聞き手・文:茅野 雅弘】※インタビューは昨年12月に行いました
<プロフィール>
加谷 珪一(かや・けいいち)
経済評論家。仙台市生まれ。1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、ニューズウィークや現代ビジネスなど数多くの媒体で連載をもつほか、テレビやラジオなどでコメンテーターを務める。関連記事
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