2024年11月24日( 日 )

【カジノのタヌキ】「談合ヤラセ会見」で五輪関連質問を排除~小池都知事のお気に入り記者ランキング

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 「隠蔽改竄が常套手段の安倍政権(首相)と小池百合子知事は、新型肺炎の感染拡大を隠してでも五輪開催をゴリ押しするのではないか」

 こんな疑問が湧いてきたのは、2月14日の都知事会見。五輪中止延期について質問したロイター通信の記者の再質問を拒みながら、私にも7回連続で指さない差別的対応を繰り返した上、会見終了直後の“声かけ質問”も完全無視、都HPの会見動画から音声を消去する隠蔽・改竄まで行っていたからだ。

 消し去られた小池氏への問いかけは、以下の通りである。

小池 百合子 東京都知事
小池 百合子 東京都知事

 「知事、五輪中止・延期の時期を決めなくていいのか。判断基準を示さなくていいのか。最悪の事態を考えるのが知事の役目じゃないですか。開催ありきでいいのですか。WHOは何も保証していないですよ」

 こう叫んだが、小池氏は一言も答えないまま、会見場を後にしたのだ。

 実は、この日まで6回連続で指されない“記者排除状態(質問権はく奪)”となっていた私は、対抗手段として会見終了直後、カジノ関連質問を浴びせることを繰り返していたが、今回は急きょ新型肺炎関連に変更した。ロイター通信アンソニー記者の五輪中止延期に関する質問に小池氏は具体的に答えず、ほかの記者には認めていた再質問を拒む差別的対応を目の当たりにしからだ。

 ――【ロイター通信】(五輪中止延期の)目安、節目というか、(感染者が)何千人とか何万人とかくらいだったら、キャンセル、延期しないといけないとか、6月まで、7月までに徐々に広がりが続いていれば、延期とか、そのような目安というか節目は考えているかどうか聞きたい。

 小池知事 どれぐらい数字が上がればどのようにするということや、日程的な部分についても、いま答える立場にはありません。

 この回答で満足しないロイター通信の記者が再質問をし始めた瞬間、小池氏は「一問だけ」と言って発言を遮り、別の記者を指したのだ。

 小池氏の指名回数が多い“お気に入り記者”(「ランキング表」参照)の再質問は受けるのに、都合の悪い質問をする記者には認めないという二重基準(ダブルスタンダード)。よほど聞かれたくない内容に違いないと思って、同じ主旨の問い掛けを会見終了直後に投げかけたのだ。

 しかし小池氏の排他性は尋常ではなかった。都のホームページにある会見動画を見ると、会見が終了した途端、音声が消える編集操作が施されていたのだ。小池氏にとって知られたくない質問を隠蔽する改竄工作を行ったともいえるのだ(注)。

 「五輪中止延期の想定すらしたくない」という小池氏の胸中が透けてみえてきた。都知事の責務は、感染拡大状況をきちんと調査したうえで開催が可否かを科学的かつ総合的に判断することのはずだが、「何が何でも開催にする」という開催ありきの姿勢にしか見えないのだ。

 後手後手の対応で感染拡大を招いた安倍首相も小池氏と同じような立場になっても不思議ではない。「五輪中止なら首相辞職は免れない」という声が自民党内で出始めており、「総理大臣ポストを手放さないために、どんな手段を使っても五輪開催を強行する」という心境に陥ることは容易に想像できるからだ。

東京へのカジノ誘致でも安倍首相と小池知事が連携する可能性

古賀 茂明 氏
古賀 茂明 氏

 両者が二人三脚を組みそうなことは、ほかにもある。東京へのカジノ誘致のことだ。元経産官僚の古賀茂明氏は昨年12月22日、横浜でのカジノ反対集会でこう訴えた。

 「これ(横浜へのカジノ誘致)はまだまだ止めるチャンスがあります。東京が来年、出てきますからね。小池百合子さんが横浜の林(文子)さんのお手本を見習って、『やらない』『やりそうもない』という振りをして都知事選再選されれば、必ず立候補します。そこで東京都民と横浜市民の間でババの引き合いというか、ババの押し付け合いになりますからね。どっちが頑張るかです。皆さま、最後まで頑張りましょう」。

古賀茂明氏も参加したカジノ反対集会の様子
古賀茂明氏も参加したカジノ反対集会の様子

 この発言を機に私は、都知事会見取材を再開した。2017年総選挙での希望の党敗北の後、徐々に自民党寄りになった小池氏を取材する価値を感じない状態が続いていたが、12月27日からできる限り都知事会見に参加すると同時に、会見終了直後の声掛け質問を繰り返すようにもなった。ちなみに復帰初回は、古賀氏発言に沿った内容だった。

 「知事、都知事選後にカジノ表明をするのではないのですか。林(文子)市長と同じように都民を騙すのですか。争点隠し選挙をやるのではないのですか。未来永劫、カジノをやらないといえますか」。

 年明けの1月10日も指されなかったので、内容を多少変えた。「都民ファの樋口都議の父親がカジノ管理委員会メンバーで問題ではないか。カジノ誘致表明の布石か」と質問したが、同じく無回答だった。

 しかも新型肺炎関連の私の質問と同様、カジノ関連質問の音声も都HPから消されていた。皮肉なことに「自民党都政はブラックボックス」と批判して都政透明化を一大公約にして当選した小池知事だが、会見動画を改ざん隠蔽、ブラックボックス化に励んでいたといえるのだ。

 これ以降も、「京都市長選(2月2日投開票)」の取材で東京を離れていた1月31日を除いて4回(1月17日と24日と2月7日と14日)、毎週金曜日の都知事会見に通ったが、“お気に入り記者”を優先的に指す記者排除状態が続いたので、2月14日には「カジノのたぬき」という挑発的文言を入れてみた。

 「知事、カジノについて一言。6回連続で指名なしですよ。談合やらせ会見じゃないですか。安倍総理と密約があるのではないですか。再選を認める代わりにカジノ誘致表明をするのではないですか。今度は『カジノのたぬき』と呼ばれますよ」。

 最も響くとにらんだ表現だったが、それでも小池氏は立ち止まることも一言も発することもなかった。

 2017年9月29日の都知事会見での私の質問に対し「(公認申請をした民進党衆院議員を)排除いたします」と明言した小池氏は、憲法改正と安保法制容認を“踏み絵”にする右旋回をしたことから「緑のたぬき」とも呼ばれた。元環境大臣の小池氏のシンボルカラーがグリーンであることと安倍政権打倒の旗印が詐欺的だったことを合体させたネーミングだったが、今夏の都知事選では「カジノのたぬき」という呼び名がつくかもしれないと考えた。林市長と同様、カジノについて語らない争点隠し選挙で有権者(都民)を騙す可能性があると思ったのだ。

小泉 進次郎 環境大臣
小泉 進次郎 環境大臣

 しかし会見終了後、幹事社の産経新聞の記者から「品位を汚す」と抗議された。私が橋下徹市長会見に出ていた2012年に大阪勤務であったことから、「橋下市長会見ではあんな発言をしなかった」とも批判された。これに対し私は「橋下さんは毎回指してくれた」「小泉進次郎大臣会見でも半分以上指されている」などと反論した。実際、小池氏と両氏の違いは歴然としていた。

・小池知事会見 7回中ゼロ回指名
・小泉大臣会見 7回中 5回指名
・橋下徹大阪市長 指名率100%

橋下 徹 氏
橋下 徹 氏

 一方、小池氏に頻繁に指される“お気に入り記者”もいた。私が年末から2月21日まで参加した7回の都知事会見で、最も多く指されたのはNHKの成澤記者。以下の4人の記者が続いていた。
「都知事会見指名回数順位=“小池知事お気に入り記者”ランキング」

1位 NHK成澤記者 5回
2位 時事通信真島記者 4回
2位 新宿新聞喜田記者 4回
4位 朝日新聞軽部記者 3回
4位 フジテレビ小川記者 3回
(番外 フリー横田一 0回)

 2月29日の新型肺炎会見で質問内容を事前に調整する“やらせ”がばれた安倍首相と、不都合な質問をする記者を排除する小池氏はまさに瓜二つだ。隠蔽改竄も得意という共通点もある似た者同士が、五輪開催ゴリ押しや東京へのカジノ誘致で足並みをそろえることは十分にあり得るに違いない。今後の2人の言動から目が離せない。

【ジャーナリスト/横田 一】

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