新型肺炎、韓国の輸出に深刻な影響(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
3月8日現在、韓国の新型肺炎の患者数は7,134名(前日対比21名増加)、死亡者は50名となっている。ここ2、3週間の間、韓国では一日に数百人ずつ患者数が増加し、発生源の中国を除くと、世界最多となった。昨年の世界保健機構の発表によると、韓国は伝染病に対応する能力が優れている国として、世界195カ国中、世界10位以内に入っていた国である。
それでは、そんな韓国で、なぜこれほどまでに感染が広がるようになったのか。武漢から入国した新興宗教団体の人が、集会に参加し、それが一気に感染を拡大する原因となったことは前回の記事(新型肺炎急増~韓国で広がる不安と恐怖)で触れた。それ以外にも、韓国政府が中国の顔色をうかがって、中国人の入国制限をできなかったことが、感染拡大を防げなかった原因であるとされている。
韓国政府は、感染拡大が明白となった中国人の入国制限を検討していたが、韓国駐在の新任の邢海明中国大使から強硬な抗議を受けて、入国制限に踏み切ることができなかった。その結果、現在のような結果を招いている。野党は感染の拡大について、中国人の入国規制をしなかった文在寅政権を激しく非難している。しかし、中国に経済的に大きく依存している韓国としては、そのような決断をすると、第2の「サード事態」になりかねないので、難しかっただろう。中国人の規制で感染は防いでも、一方で経済が冷え込んだら、その時野党は経済失策を非難していただろう。
新型肺炎の拡大で、韓国では生活風景が一変している。マスクをかけていない人を見つけるのが難しいほど、みんなマスクを着用している。レストラン、カフェ、映画館など、人が多く集まるところは、以前と違って、活気を失い、閑古鳥が鳴いている。教会なども自粛規制で集会を開かないようにしているので、インターネットで礼拝を捧げるようになっている。
一部では、「今回の新型肺炎は、伝染力は強いかもしれないが、致死率はそれほど高くない。感染しても、それほど重篤になるわけではなく、度を過ぎた対応をしている」と指摘する向きもある。新型肺炎は4月頃には終息するだろうという楽観的な観測のもと、人々は今は何とか我慢しているが、これがもし長期化した場合には、どのようになるかを想像しただけでも恐ろしい。
このような状況下、韓国の輸出に新型肺炎による深刻な影響が出ている。韓国経済の大きな特徴を3つ上げるとしたら、(1)中国依存が高いこと(2)輸出依存が高いこと(3)財閥依存が高いこと、である。ところが、昨年は米中貿易戦争の影響をもろに受け、韓国の輸出は対前年比で10.3%減少した。輸出の減少率が二桁になったのは、世界金融危機の影響が激しかった2009年(13.9%)以降初めてのことだ。
昨年の輸出減少は、韓国の輸出の稼ぎ頭である半導体価格が下落し続けた影響が大きかった。メモリ半導体は、供給過剰になり、8GB・DRAM価格が、2018年11月には7.91ドルだったが、1年ぶりに2.81ドルまで下落している。その結果、半導体の輸出は25.1%減少した。今年は米中貿易戦争も合意し、半導体価格も回復が見込まれていたが、新型肺炎というさらにインパクトが大きい悪材料により、世界経済が振り回されている。
(つづく)
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