2024年11月13日( 水 )

【追及:小池都政】女帝気取りで特定記者を排除指示~「オリンピックありき」だった小池都政の情報隠蔽体質

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■「幹事社さん、よろしく」~日経記者に指示

小池百合子・東京都知事
小池百合子・東京都知事

 新型コロナウイルスの感染が世界的に広がったことを受け、24日夜、安倍首相はIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長と電話会談を行い、開催を「1年程度」延期することで合意した。組織委員会とIOCは共同声明を発表し、7月24日に始まる予定だった東京オリンピック2020の延期を正式に発表している。

 当初は「完全な形での開催」に固執してきた安倍首相も、WHOのパンデミック(世界的流行)宣言を受けて発言内容が徐々に変化していた。安倍首相とともに予定通りの五輪開催に固執してきた小池百合子知事も3月23日、一転して延期容認へと傾いた。安倍首相が延期を認める国会答弁をした途端、都の対策会議後の会見で足並みをそろえる考えを述べたのだ。

 しかし19日の記者会見での発言はまったく違った。幹事社(日本経済新聞)から「延期論が頭の中にあるのか」と聞かれても小池氏は「具体的にどうこうと言う段階ではない」と答えるだけ。その後も関連質問が相次いだが、「(延期などの判断時期は)答えるタイミングではない」と具体的な回答を避けた。

 私(横田)も手をあげ続けたが、小池氏はわずか34分(冒頭説明と幹事社質問を含む)で会見終了を宣言、10回指名なしの記録を更新した私は差別的対応への抗議を兼ねて声をかけた。

 「知事、もっと長くやりましょうよ。五輪(開催)ありきでいいのですか。中止しなくていいという根拠はあるのですか。専門家から聞いたのですか」「安倍総理と密約でもあるのですか。情報隠蔽じゃないですか」

 根拠も示さずに「五輪開催ありき」の楽観論を繰り返すだけの姿勢を問題視したのだが、小池氏は質問にはまったく答えない一方、最前列に座っていた日経の記者に向かって、「幹事社さん、よろしくお願いします」と一声発して会見場を後にした。

 この瞬間、私は都知事会見出入り禁止の瀬戸際に立たされたと思った。都知事会見は毎月幹事社が交代していくのだが、先月までは質疑応答前の注意事項が「会見中の不規則発言は控えてください」だったことから、「会見終了直後なら不規則発言には該当しない」と解釈して“声かけ質問”を続けてきた。もちろん1月の幹事社(毎日新聞)とも2月の幹事社(産経新聞)とも議論にはなったが、会見時間が短いことと“お気に入り記者”が優先的に指される差別的対応で質問権を“はく奪”された状態にあることを訴えて、両社の記者には納得してもらっていた。

■ブラックボックス化する小池都政

 ところが3月に幹事社が日経になると、「知事が退出するまで不規則発言を控えてください」という注意に変わったのだ。私の声かけ質問対策であることは明白で、実際に小池氏は幹事社に対して「よろしくお願いします」と要請した。「注意喚起違反だから出入禁止にしておいてね」という指示であることは明らかだったので、知事の意向を受けたように見えた日経の筒井恒記者と名刺交換を終えた際、私の考えをまず述べた。

 「(知事に)指されるようになったら声かけはしないが、特定の記者を指す恣意的な“談合やらせ会見”が続いている。時間も短すぎるではないか。まだ34分しか経っていないではない。新型コロナウイルス問題が起きているのに30分少々で終わること自体、おかしいではないか。記者会見でちゃんと発信をして、『五輪を中止しなくても大丈夫』という根拠や、専門家からヒアリングした結果など、中止にならない見通しぐらいは語らないと」

 続いて、「さっきの小池知事の挨拶(「よろしくお願いします」)は何ですか」と問い質すと、筒井記者は本題を切り出してきた。

 「不満ならば、もう横田さんは残念ながら(都知事会見に)お越しいただけないことになってしまいます。われわれ幹事社が主催者なので」

 そこで私は、前月の幹事社だった産経の高久清史記者との議論内容を紹介したうえで、議事録提出を求めた。「前月の幹事社とは『3回に1回指してくれたら声かけは止めるが、そうでない場合は続けても出入禁止にはしない』で話がついた。方針が変わった議事録を見せてください」。

 すると、日経の筒井記者は態度を軟化させ、3回に1回程度は当たるようにすることと会見時間延長を「報道課を通じて知事に伝える」と約束してくれた。私の主張に耳を傾けて小池氏の出入禁止要請を跳ね除け、私の“声かけ質問権”をはく奪することもせずに一件落着となったのだ。

23日の会見
23日の会見

 こうして都知事会見参加を続けられることになった私は、23日の臨時知事会見でも、“声かけ質問”をした。この日の質疑応答でも指されなかったため、退席する知事に向かって叫び続けたのだ。

 「知事、中野ドコモコールセンターの集団感染について一言、なぜ地名を公開しないのですか」(司会者の『不規則発言は止めてください』を聞き流しつつ)「中野区に隠蔽要請していると聞いていますよ。ドコモは五輪スポンサーだから公開しないのですか。(記事で「都内のコールセンター」と書いた)毎日新聞にも圧力をかけたのですか。(中野駅)北口商店で消毒されているじゃないですか。なんで隠蔽するのですか。なぜ、都のホームページに公開しないのですか。隠蔽じゃないですか。透明化はどうしたのですか」

 しかし小池氏は無言のまま会見場を後にした。クラスター(患者集団)発生の所在地を隠し続けるなど新型肺炎関連情報をブラックボックス化する小池都政に対しては、徹底取材が必要のようだ。

【ジャーナリスト/横田 一】

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