2024年11月25日( 月 )

ユニゾ、上場企業初、従業員による買収が成立~策士、小崎社長が「好んで事をたくらんだ」大立ち回りの顛末(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

小崎社長が従業員に「踏み絵」を迫る

 「東洋経済オンライン」(20年2月)が、日本初のEBOの舞台裏を報じた。2019年11月、ユニゾの社員は、部署ごとに会議室に呼び出された。

 〈部屋に入ると、目の前には小崎哲資社長を始めとする幹部4人が待っていた。座るや否やペーパーを差し出され、こう迫ってきたという。
 「右と左、どちらを選ぶのか。一晩考えて明日までに回答しろ」〉

 「左」は、フォートレスやブラックストーンなどが仕掛けたTOBが成立し、ユニゾが買収されたケースを想定したものだ。外資系ファンドの傘下に入り、ビル61棟、ホテル27棟を保有し、総資産で6,500億円程度になる。
 「右」は、ファンドによる買収を回避するために会社を2つに分離。ビル10棟と、浅草、横浜、名古屋駅前のホテル3棟を譲り受けて運営する総資産600億円規模の会社になる。この会社は小崎社長らが運営する。

 〈この2案を示したうえで、小崎社長は「左なら、雇用は2年間保証されるものの、ファンドの下で不自由な生活を強いられる。右なら雇用は保証されないが、縛られない自由な生活を送ることができる」と説明。そのうえで「俺の会社に来るか」と迫ったのだ。
 「小崎社長についていくのか決断を迫る、まさに踏み絵だった。詳細がわからないので詳しい説明を求めたら、『あ、君は左ね。帰っていいよ』と言われた」と、ユニゾの社員が明かす。
 結局、約300人のうち、「右」を選んで小崎社長についていくと決めたのは100人程度だったという〉

(前出、東洋経済オンライン)

小崎社長に、従業員が反乱を起こす

 小崎社長の強引なやり方に、従業員が反乱を起こした。日経ビジネス電子版(20年3月9日付)が、従業員による買収(EBO)の内容には虚偽記載があるとして、小崎哲資社長を東京証券取引所や証券取引等監視委員会に告発したと報じた。
 記事によると告発内容は、(1)小崎社長が主導しており、真のEBOではない、(2)資産売却が進められて従業員利益が害されようとしていること、の2点である。

 ユニゾ側は表向き、「外資系ファンドの案は資産を切り売りし、従業員の雇用も守れない」として、従業員が設立したチトセア案を支持していた。
 だが、チトセアは従業員が設立したのではなく、小崎社長がシナリオを描いたもの。小崎社長はファンドの買収提案に、資産を切り売りして「企業価値の向上」が完全に担保されないことを反対理由に挙げたが、実際にやっていることは、ビルやホテルも半分近く売りに出していること。
 なぜ、ドル箱のビルやホテルを売り急いでいるのか。

 〈「EBOのための資金を提供してくれる米ローンスターにお金をEBO成立から半年後に返さなければいけないから、そのお金を確保しようとしている」(ユニゾ幹部)という〉

(前出、日経ビジネス電子版)

 会社の資産を売却して、そのカネでユニゾを買収。非上場化したユニゾを小崎社長が自分の会社にしてしまおうというシナリオを描いていることが読み取れる。いかにも、策士家、小崎氏らしい鬼面人を驚かす策略だ。

(つづく)

【森村 和男】

(前)
(後)

関連記事