2024年11月22日( 金 )

日本最大のフィクサー企業「電通」の研究(前)~持続化給付金事業は元電通社員・平川健司氏が「仕切った」!!

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 フィクサーとは、「(公正ではないやり方で)陰で仲介・調停することで報酬を受け取る黒幕的人物」(『広辞苑』)のことだ。さらに黒幕とは、「陰にあって画策したり指図したりする人」(同)をいう。
 日本最大のフィクサーを生業としているのが、国内最大手の広告代理店企業、(株)電通である。黒幕は、陰にあってこその黒幕だ。だが「上手の手から水が漏る」ということか、その所業が表に出てくることがある。

持続化給付金事業を受注した「協議会」の背景

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で売上が半減した中小企業などを支援する持続化給付金の再委託問題は、事業を国から受注した一般社団法人サービスデザイン協議会(以下、協議会)が「トンネル会社」の可能性があると報じられたことが発端だった。

 協議会は2016年に電通が中心になって設立。電話番号は7月時点で公表されておらず、法律で義務づけられている決算公告の開示も怠っていた。その協議会が、経産省の外局にあたる中小企業庁から持続化給付金事業を769億円で受託し、受託費の97%にあたる749億円で電通に丸ごと再委託。電通はさらに電通ライブなど子会社5社に外注していた。こうした実態が『週刊文春』などの報道で明らかになると、にわかに協議会の実態に注目が集まっている。

 かつて公共事業「丸投げ」の対象は独立行政法人だったが、天下りの温床と批判されたことで新たな隠れ蓑が必要になり、役所主導で作られた社団法人が急増したとされる。いびつな利害関係を隠す目的で編み出したのが、トンネル会社を経由させる奇策だった。本来なら官から民に直接発注して競争入札すれば済むことだが、そうするといつも同じ顔触れが受注していることがわかってまずい。批判をかわすために、金の流れを浄化する「別の顔」(トンネル会社)が必要になったのだ

平川氏は、電通から協議会に送り込まれた“黒幕”

 6月8日、笠原英一・アジア太平洋マーケティング研究所所長が、協議会の代表理事を退任した。「持続化給付金事業については一切知らない。電通に聞いてほしい」と言い、「お飾り」であったことを認めて、笠原氏は辞めた。

 これを受けて、協議会を“隠れ蓑”にしていた電通が前面に出てこざるを得なくなった。同日、協議会側が事情を説明するために記者会見を開いた。
 席に現れたのは、大久保裕一氏、榑谷(くれたに)典洋氏、平川健司氏の電通出身の3名だ。
 新しく協議会の代表理事に就任する大久保氏は、電通の執行役員。榑谷氏は、電通の取締役副社長執行役員(COO)。平川氏は、協議会の業務執行理事だ。

 注目すべき人物は、平川氏だ。協議会の設立時に、電通のプラットフォーム・ビジネス局事業企画部長から協議会の理事に就任した。19年6月に電通を退職した後も、引き続き、協議会の業務執行役員を務め、給付金事業の実務を仕切ってきた。

 平川氏が、「陰にあって画策したり指図したりする」“黒幕”として電通が送り込んだ人物であることが明らかになった。陰にあった平川氏は、どのような画策をしたのだろうか。その一端が暴かれた。

米テキサス州の「前田ハウス」で連日の宴

 6月11日発売の『週刊文春』は、持続化給付金を担当する中小企業庁の前田泰宏長官が経産省大臣官房審議官だった17年当時に米テキサス州のイベントに参加した際、近くのアパートを借りて「前田ハウス」と名付けて、パーティーを開き、そこに平川健司氏が同席していたと報じた。

 この報道を受けて、11日の参院委員会では、立憲民主党の蓮舫氏が報道の真偽を前田氏に問うた。「パーティーは毎日(開かれていて)、関係者との意見交換はそこでやっていた」と前田氏は釈明し、平川氏がパーティーに参加していたことや、別の場所でも平川氏と会っていたことを認めた。

 朝日新聞デジタル(6月12日付)は、委員会で明らかになった点をこう報じた。

「前田氏は15年から大臣官房審議官として協議会と関わるサービス業を所管する商務情報政策局を担当していた。前田氏と平川氏は、その前から交流を始めたという。協議会は平川氏ら電通が中心となって16年に設立され、設立当日に経産省が公募した事業をその後受注した。その後も経産省発注の事業を次々と引き受け、これまでに計14件約1,576億円分を請け負い、その5割にあたる808億円分が電通などに再委託されている」

 なんていうことはない。前田氏と平川氏、つまり経産省と電通が結託した“出来レース”だったのだ。電通から送り込まれた黒幕の仕事を、平川氏は完璧にこなしたことになる。だが、米テキサス州の「前田ハウス」での乱痴気パーティーを腹に据えかねる出席者がいたのだろう。週刊文春へのタレコミで、癒着が暴露されてしまった。

(つづく)

【森村和男】

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