2024年12月23日( 月 )

日本最大のフィクサー企業、電通の研究(後)東京五輪招致を仕切った黒幕は電通の高橋治之元専務だ!

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 フィクサーとは、「(公正ではないやり方で)陰で仲介・調停することで報酬を受け取る黒幕的人物」(『広辞苑』)のことだ。さらに黒幕とは、「陰にあって画策したり指図したりする人」(同)をいう。
 日本最大のフィクサーを生業としているのが、国内最大手の広告代理店企業、(株)電通である。黒幕は、陰にあってこその黒幕だ。だが「上手の手から水が漏る」ということか、その所業が表に出てくることがある。

黒幕の高橋氏が、姿を現した時

 新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪の「危機」が起こり、“黒幕”だった高橋氏がついに表に出てきた。高橋氏は3月11日、米ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に応じ、新型コロナウイルスの世界拡大を受け、「今夏の東京五輪の開催が難しい場合は、大会を1~2年後に延期することが選択肢になる」という見解を示した。

 総理大臣や東京都知事でもない、一介の組織委員会の理事が、東京五輪の延期という重大な事柄をマスコミに公表する。東京五輪のキーマンだと知っているマスコミは、高橋氏の取材に殺到した。だが、事情を知らない一般人は、「この人は一体何者か」と呆気にとられていた。
 組織委員会のトップにも関わらず、ないがしろにされた会長・森喜朗氏が、「大事な時期に軽率なことをおっしゃった」と報道陣に不快感を示したことも無理はないだろう。

 東京五輪招致から深く関わってきた高橋氏にとって、東京五輪は最後の大仕事だ。コロナ禍に居ても立っても居られなかったようだ。
 本来は影にかくれて画策することを本分とする“黒幕”が、姿を現した瞬間だった。

不磨の大典『鬼十則』が行動原理

 広告会社の電通は、いかにしてフィクサー企業に大化けしたのだろうか。
 かの有名な不磨の大典『鬼十則』が、推進力になってきた。
 電通「鬼十則」は次の10項目(原文はカタカナ)である。

1.仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
2.仕事とは、先手先手と働き掛けて行くことで、受け身でやるものではない。
3.大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4.難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは・・・。
6.周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7.計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8.自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらない。
9.頭は常に「全回転」、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10.摩擦を恐れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

 「鬼十則」とは、4代目社長で「広告の鬼」「電通中興の祖」と呼ばれる故・吉田秀雄氏が1951年に定めた10カ条である。吉田氏の最大の仕事は、民放ラジオ放送の立ち上げだ。吉田氏がお膳立てした民放ラジオは51年9月、名古屋市の中部日本放送(株)を皮切りに放送を開始した。当時、地方新聞社が民放ラジオ局を開局のために「人材援助」を求めてくれば、優秀な社員から次々と出向させて、出資にも応じた。民放ラジオ局の仕事を得るための実践論が、『鬼十則』である。

 民法ラジオ開局時の吉田氏の先行投資は、テレビ時代に花開いた。「時間を売る」電波媒体を握った電通は、広告業界首位を不動のものにした。役所の仕事を請け負うようになっても、同じスタイルを踏襲した。裏方を送り込んで組織を舞台裏から仕切るのが、フィクサー企業電通のお家芸なのだ。

大マスコミにとって電通は最大のタブー

 持続化給付金再委託問題、東京五輪の招致不正問題で、電通が一連の疑惑の中心にいることはわかっていても、マスコミが電通を追求することはない。広告収入に依存するマスコミにとって、電通は最大のタブーだからだ。電通には、クライアントに都合の悪い報道をコントロールする「裏の顔」がある。

 企業は、自社のイメージダウンになる記事を差し止めたいが、めったなことで実現することはない。そこで、企業は電通にお願いする。電通マンは東奔西走し、差し止めが不可能なら、社名をイニシャルにしたり、見出しや広告から社名を消したりということを、マスコミの編集幹部に会って頼む。「記事の揉み消し業」も、電通の裏の仕事だ。

 マスコミは、「電通の闇」を取り上げることはない。現場の記者がやりたいと考えても、営業から「待った」がかかるからだ。電通は、クライアントの広告をストップできる力をもつ。兵糧攻めに遭わないために、マスコミは「電通の闇」の報道を自主規制している。

 電通は政界にウイングを伸ばし、政権与党である自民党の選挙向けの政党PRを一手に引き受けた。経産省や総務省の仕事も請け負っている。フィクサーを生業とする電通は、政官財界に隠然たる力をもつ「モンスター」に大化けしたのである。

(了)

【森村和男】

(中)

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