ソフトバンクの半導体企業ARM売却は、はたして成功するのか(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
将来有望なユニコーン企業に投資してきたソフトバンク
ソフトバンクグループ(株)(以下、ソフトバンク)が7月13日、傘下の英国のARMホールディングス(以下、ARM)をIPO(株式公開)または売却する計画だと発表したことにより、半導体業界に緊張が走っている。ARMの知名度はそれほど高くないため、ニュースの重大さを実感しづらいかもしれないが、半導体設計で世界最大の企業ARMがもつ影響力はかなり大きい。なぜ半導体業界で今後のARMの動向に注目が集まっているのかを見てみよう。
ソフトバンクの孫正義会長は今まで、さまざまな企業への投資、買収により企業を成長させてきた。米国のヤフーや中国のアリババへの投資、ボーダフォン(株)やARMの買収はと代表的なものである。なかでもアリババへの投資は結果としてソフトバンクに数千倍の利益をもたらし、投資家としての孫氏の名声を高め、ソフトバンクが成長するための大きな原動力となった。
アリババ投資のような成功をもう一度実現したいと考えた孫氏は、サウジアラビアから450億ドルの出資を受けるなどして、10兆円を超えるソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立し、AI分野など将来有望なユニコーン企業を中心に投資を続けてきた。孫氏から投資を受けた企業は一躍有名になって株価が上昇し、その結果、企業が余裕をもって事業を展開できるようになったことは事実だ。だが一方では、孫氏はベンチャー投資を必要以上に行ってバブルを生み出し、結果的には企業の健全な成長を損ねてしまったという意見もある。
IoT市場の成長のスピードは、ソフトバックの期待通りにはならず
ARM売却の本題に入ろう。ソフトバンクは2016年に、320億ドルという莫大な金額でARMを買収することに成功した。近い将来にIoTが普及すると、チップの販売数は1兆個に上ると予想されているため、半導体設計会社のARMの売上が伸びて企業価値が増大すると判断したようだ。
孫氏は周囲の反対を押し切って、PER(株価収益率)の70倍に相当する金額でARMを買収した。本来、半導体設計会社のPERは通常12倍~15倍であったうえに、ARMは当時10兆円近い負債を抱えており、高い買い物であったが、孫氏は「ARMの買収は安いもので、大満足だ」と言っていた。しかし、IoT市場の成長のスピードはソフトバックの期待通りにはならなかった。その結果、ARMのIoT事業部門はソフトバンクに移され、ARMには半導体設計部門だけが残った。
加えて、ARMの経営に関しても判断ミスを犯した。中国で生産される半導体の95%は、ARMアーキテクチャを採用していた。ARM売上高のうち中国が占める割合は2017年では20%で、毎年増加していた。ところが、ソフトバンクは高額の買収金を早期に回収するため、2018年に中国事業の持ち株51%を中国政府に7億520億ドルで売却している。その結果、一時的に資金を入手したものの、中国での売上から生まれる利益は減少することとなった。
(つづく)
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