【抗ウイルス物質松かさリグニン(2)】インフルエンザに対する驚くべき効果~サイトカインストームも防ぐ(4)
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アトピアクリニック院長 稲葉 葉一 氏
DEVNET INTERNATIONAL ASSOCIATIONより、極めて強い抗ウイルス作用を持つ物質「松かさリグニン」に関する稲葉氏の論考を提供していただいたので、掲載する。
(長谷川氏によるリグニンの抗インフルエンザウイルス効果に関する説明)
(2)リグニン(植物性IgA)はサイトカインストーム(過剰免疫反応)を回避し体を守る
従来、感染症に対する治療法として、ウイルス抗原を用いたワクチンが開発されているが、この治療には IgA 抗体が関与している。弱毒化したウイルスをワクチンとして免疫を誘導し、ウイルス特異的 IgA 抗体が産生される仕組みだ。IgA 抗体は病原微生物の粘膜からの侵入阻止、ウイルス・毒素の中和、食物アレルゲンの侵入阻止などの働きをしているため、IgA抗体濃度を高めておくことは生体防御のうえで重要である。
しかし、今般話題となっている高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5H1)のように、過去感染歴のない抗原に対しては、免疫が弱い子どもや老人以上に、健常者に対する感染防御が大切となる。
高病原性鳥インフルエンザは 2003~04年にかけてアジア地域を中心に流行し、10 ヵ国で人への感染が報告された(06 年 9 月 19 日現在で 247 人が発病、144 人が死亡。死亡率は 58.2%)。
なかでも、憂慮すべきことは、10~19歳で 73%、20~29歳で 63%の死亡率を占めたことだ。この結果は、幼児や高齢者がハイリスクとされる一般のインフルエンザとまったく異なっている。この原因は、H5N1ウイルスにより誘導される過剰免疫反応(サイトカインストーム:cytokine storms)だといわれている。「サイトカインストーム」は、「生体の防御免疫機能の過剰反応」という意味だ。わかりやすくいうと、微小異物の侵入をキャッチした免疫細胞が、異常なほどに過剰に反応し、サイトカイン(生理活性物質)を大量に放出し、それが身体の臓器にまで大きなダメージを与える現象のことで、最悪の場合、臓器不全により死に至らしめる。この過剰免疫反応はSARSのときにも現れたため、現在は回避する手段が渇望されている。
そこで、リグニンが、サイトカインストームを回避する手段となり得るかどうかを検討した。試験には、IgA 抗体産生細胞としてマウス脾臓細胞を用い、それを種々の濃度のリグニンと混合培養し、インフルエンザウイルスを感作させた場合と感作させない場合とで、IgA 抗体産生量を比較という in vitro モデルを用いた。サイトカインストームを回避できるかどうかは、免疫反応の結果として誘導される IgA 抗体産生を抑制するかどうかで評価できる。
図 4 は、リグニンがサイトカインストームを回避する様子を示すものである。図中の横軸はリグニンの添加濃度を、縦軸は IgA 抗体産生量を示す。
リグニン無添加(0.0µg/ml)時における IgA 抗体の産生量は、ウイルス存在(●:Influenza virus +)下で約 930pg/ml、ウイルス非存在(○:Influenza virus -)下で約 130pg/ml で、その間約800pg/ml の違いが認められた。
この産生量の違いは、ウイルス刺激が原因となって生合成された抗体量を指すといえる。この抗体産生には必ずサイトカインが関与し、ウイルス刺激が致死的になると、それを防衛しようとして急激な免疫反応が誘発され、サイトカインの大量放出、すなわちサイトカインストームが 発生するものと考えられる。
このような条件で、ウイルス存在(●:Influenza virus +)下で誘導される IgA 抗体の産生量は、リグニンの添加濃度が高くなるにつれて減少し、200µg/ml(200ppm)以上の濃度ではウイルス非存在のレベルにまで減少することが明らかとなった。
すなわち、リグニンがウイルスの抗原性を中和し、ウイルス刺激で誘導される IgA 抗体産生を 100%抑制したことを示している。これは、リグニン自身が IgA 様の働きをすることで、脾臓細胞が IgA 抗体を産生する必要がなくなったことを意味している。
結論として、リグニンによって過剰免疫反応(サイトカインストーム)の発生を回避できることが明らかとなった。
動物 IgA 抗体の特徴は、抗原特異的であることだ。従って、インフルエンザウイルスのように変異しやすいウイルスに対しては、ワクチンでの対応が往々にして難しくなるという課題がある。またノロウイルスのように、ワクチンすらいまだ開発されていない病原性ウイルスも多く存在する。しかし上述のように、リグニンは、ウイルスと非特異的に吸着し、その働きを失活させるため、ウイルスの種類に関係なく感染防御に奏功することが期待される。
(了)
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