孫正義氏の究極の選択~ソフトバンクグループの株式の非公開化はあるか?(1)
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投資会社ソフトバンクグループ(株)(SBG)の「株式非公開化」観測が駆けめぐる。株式非公開説は今回が初めてではなく、危機に直面すると噴出してきた。孫正義会長兼社長は2009年と15年にも、株式非公開化を検討した。今年は「3度目の正直」となるか。
SBGの株式非公開化計画は仕切り直し
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は9月13日、SBGが株式非公開化を検討していると報じた。それによると、株式非公開化を検討している理由はSBGの保有資産の価値と実際の株価の隔たりに不満があるためだという。運用額10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を設立以降、事業会社よりも投資会社としての性格を強めていることも背景にある。
米通信社ブルームバーグは9月14日、具体的な内容に踏み込んで報じた。
「SBGは傘下の英アーム売却で合意した後、株式非公開化について協議を再開する方針だ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。SBGの幹部は、先に社内で反対された経営陣による自社買収(MBO)計画を再開する方針だ。(中略)株式非公開化の検討は初期の段階であり、実現しない可能性もある。この計画に対する同社幹部の見解はばらばらでまとまっておらず、多くのベテラン幹部が反対していると関係者の1人は述べた」
株式非公開化は仕切り直しという報道だ。半年前にも、株式非公開化の報道があった。英FTは3月24日、SBGの孫正義会長兼社長が、同社の株式非公開化を検討したが、断念したと報じた。
FTによると、「孫氏はエリオット・マネジメントやアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の政府系ファンド、ムバダラなどの投資家と株式非公開化について過去1週間協議したが、代わりに資産売却計画を進めることを決めた。(中略)孫氏がレバレッジバイアウト(LBO)を考え始めたのは、エリオットのロンドンオフィスのゴードン・シンガー氏がSBGの買い増しに関心を示した後だと関係者の1人は話した。ただ、投資家コンソーシアムを速やかに編成する困難に加え、東京証券取引所の上場ルールや税制上の要因などいくつかの理由から最終的に断念した」という。
SBGの株価は過小評価されていると不満
コロナ・ショック以前から、孫社長は、決算発表や経営説明会の場でSBGの株価が過小評価されていると再三不満を募らせてきた。決算説明資料によると、2月12日時点で、保有する株式価値(時価総額)は、中国のアリババ集団(16.1兆円)、国内通信子会社ソフトバンク(株)(4.8兆円)、米携帯電話会社スプリント(3.2兆円)、英半導体設計会社アーム(2.7兆円)など31.1兆円あったが、SBGの時価総額(12.2兆円)はそれを大幅に下回る。
昨年は、投資先の米ウィーカンパニーの経営が悪化し、約1兆円の金融支援をするなど投資の失敗が顕在化し、SBG株は下落した。それでも、「厳しい冬の後には春が来る」と孫氏は強気だった。
(つづく)
【森村和男】
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