2024年11月14日( 木 )

黎明期から戦国時代に突入 シェアオフィス業界に求められる変革(後)

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fabbit(株) 代表取締役社長 田中 保成 氏

 アメリカで生まれ、日本でもニーズが高まっているシェアオフィス業界。東京や大阪などの大都市を中心に供給エリアが拡大するとともに、外資系企業や国内企業の新規参入もあって市場は拡大し続けた。そんななかで起きた新型コロナウイルスの感染拡大。コロナ禍はシェアオフィス業界にさまざまな影響を与えている。コワーキングスペース 「fabbit」を運営する fabbit(株)代表取締役社長・田中保成氏に業界の最前線と今後の動向について聞いた。

コロナの影響、今後の展開

 ――新型コロナウイルスの影響はどうでしょうか。

 田中 当社は、2月に入ってからすぐにイベント等の中止を決定するなど、緊急事態宣言が実施される前から対応してきました。イベントなどは3月以降、オンライン開催に切り替えたほか、4月頃から退去される方も少なからず出たことで影響を受けました。

 新型コロナウイルスの感染拡大に対して、当社はセーフティーファーストを原則として運営を行っており、考えうるすべての対策を講じてきました。たとえば、感染者を出さないための環境づくりは必須でしたので、利用者のマスクの着用義務化、入室時の検温、アルコール消毒の徹底、換気するための空気清浄機の導入などを行っています。

 各拠点を完全に閉鎖することはありませんでしたが、席数を制限するなどの対応を現場の社員とともに全社で実施してきました。そのおかげか、現在のところ感染者は確認されておりません。今は徐々に新規の入居者も増えてきている段階で、年内にはコロナ以前の状況に戻っていくのではないかと思います。

コワーキングスペース(GG大手町)

 ――緊急事態宣言の後、サテライトオフィスが推奨されるなどの動きがありました。新規の入居者層に変化はありましたか。

 田中 退去者と入居者のそれぞれの業界に大きな違いはなかったですね。退去者も入居者もIT関連のほうが多い傾向にあります。明確な違いを見出すのは難しいですが、新規入居者の特徴の1つとして、スタートアップではない方、企業に勤めている方、フリーランスの方などが増加傾向にあるといえます。

 この事実は、注目に値すべき内容だと捉えています。働き方改革によって増えてくるだろうと予見されていた層の入居が、今回のコロナ禍によってより増えてきている状況だといえます。実証実験ではありますが、 fabbit宗像ではJAL様とワーケーション(観光地などで、働きながら休暇をとること)の取り組みを行うなど、新しいニーズも出てきていると感じています。

 ――今期の目標、今後の展開としてはいかがでしょうか。

 田中 今期の目標はトップライン(売上/営業収益)を伸ばし、前期を上回ることです。さらに質を高めていくために、組織として業務プロセスの見直しを含めたオペレーションの向上を目指しています。顧客サービスを効率的に提供することは、基本だからこそしっかりと行なっていきます。

 お客さまのニーズにきめ細かくタイムリーに対応していくこと、これを当たり前にできる組織・コワーキングスペースでなければならないと思っています。それをなるべくコストをかけず、少ない人数で効率的にできることが望ましい。そのためには、現在の業務プロセスをより効果的・効率的な方法に転換していくことが重要だと考えています。

 各拠点には入居者と近い存在であるコミュニティマネージャー(以下、CM)が在籍しています。CMが入居者の要望を吸い上げたうえで環境づくりを精力的に行い、全社でかたちにしていくことも大切です。CMやイベントなどを通じた入居者同士のマッチング、コミュニケーションも広がっています。現在、より幅広く円滑にサービスが成立するように、拠点を超えた入居者同士のコミュニティを可能にするシステムの構築などにも取りかかっています。

 いかに継続して出店するか、同時に成長にともなうオペレーションのクオリティーをいかに維持していくか、この2点は業界の変化のなかで勝ち残っていくためにも重要なことだと思います。これまで海外拠点としてハワイ、ベイエリア、フィリピンと出店してきましたが、そのほかの国や地域でもプロジェクトを進めています。コロナ禍のような変化や壁が立ちはだかったとしても、海外展開も含め、事業の量と質の両方を向上させていきます。

(了)

【麓 由哉】

<COMPANY INFORMATION>
fabbit(株)

代 表:田中 保成
所在地:東京都千代田区大手町2-6-1
設 立:2017年4月
資本金:1,000万円

(中)

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