麻生グループの御曹司、麻生巌氏は、投資家・孫正義氏になれるか~日本の台所・豊洲市場の東都水産に友好的TOBを実施(1)
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ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は投資家であり、10兆円ファンドを組成して、スタートアップ企業に次々と投資し、活躍の場を世界に広げている。筑豊の名門、麻生グループの御曹司、麻生巌氏は株式市場で活躍しており、日本の台所、豊洲市場の東都水産(株)に投資する。麻生氏は第2の孫正義氏になれるか。
麻生、東都水産の連結子会社化を想定
東証一部上場の水産卸大手、東都水産は11月9日、九州の複合企業、(株)麻生(福岡県飯塚市、麻生巌社長)の子会社が実施するTOB(株式公開買い付け)に賛同し、資本業務提携を締結したと発表した。
買付主体は麻生が全額出資で設立した(合)ASTSホールディングス(東京・千代田)。東都水産株の買付価格は1株4,550円で、TOB公表の前営業日(11月6日)の終値4,045円に12.48%のプレミアムを加えた。買付代金は最大約181億円。買付期間は11月10日から12月22日まで。
麻生は3分の1超の株式取得を目指すが、買付予定数の上限を設けておらず、50%超を取得し、連結子会社化することを想定している。
水産業とは畑違いの麻生グループが、なぜ東都水産のM&A(合併・買収)を決意したのか。これまでの動きをたどってみよう。
東都水産は水産加工メーカーに属さない独立系の大卸
東都水産の前身である東京魚市場(株)は、1935年「東京の台所」として知られた築地市場の開場とともに設立。戦時中は統制会社に統合され、48年に東都水産として業務を開始した。
農林水産省と東京都から、豊洲市場における”大卸”(卸売業者)との認定を受け、国内全域および世界各地から集荷した生鮮・冷凍魚介類や水産加工品を、仲卸業者や市場参加者に販売している。
水産加工メーカーなどのグループに属さない独立系の水産卸業者として80年以上の歴史をもつ。現在、豊洲市場には7社の大卸があり、そのうち4社が上場しているが、東証一部に上場しているのは東都水産のみだ。
新型コロナウイルスの影響で、すし種など高級商材を中心に取引が激減。東都水産の2021年3月期の連結決算は、売上高が前期比15.2%減の1,000億円、純利益は同33.8%減の9億円と減収・減益の見込み。
水産界の門外漢である麻生と資本提携したのは、東都水産の強い危機感の現れである。高級魚は市場外流通が増加
東京都中央卸売市場の豊洲市場(東京・江東区)は、18年に築地を離れ最新施設として開場した。国内外から500種以上の魚介類が集まり、毎日1万人以上の大卸や仲卸、買参人(市場で卸業者から買うことを認められた人)ら、プロが往来する世界最大の魚市場だ。
市場開設者の東京都は、5年間で水産物の取扱量を1.5倍に増やす目標を掲げたが、現状は厳しい。豊洲の19年の取扱量は34万トンと築地のころより1割少なく、ピークの1987年の半分に減った。
これは市場外流通が増えたことによるものだ。商社や大手水産会社が、海外から大量に水産物を買い付け、卸売市場を通すことなく、直接外食チェーンやスーパーに販売しているためだ。
商社は漁船と直接契約を結び、マグロなどの高級魚では、漁船がとってきた魚を一隻分すべて買い取る。買い取ったマグロを自分の会社で解体し、インターネットで直接消費者に販売する水産会社もある。
このような卸売市場を通さない流通を市場外流通といい、その量は市場流通に匹敵するまでになっている。マグロの場合、半分が市場外流通だという。我々が、回転寿司で安くておいしい魚を季節に関係なく堪能できるのは、市場外流通のおかげである。
そのため、卸業者は魚介の取り扱いが減って、苦しい立場に陥った。市場外流通が増えると、市場から仕入れている小売店は、水産物を手に入れるのが困難になる。結局、消費者に跳ね返ってくる。
(つづく)
【森村 和男】
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