麻生グループの御曹司、麻生巌氏は、投資家・孫正義氏になれるか~日本の台所・豊洲市場の東都水産に友好的TOBを実施(3)
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ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は投資家であり、10兆円ファンドを組成して、スタートアップ企業に次々と投資し、活躍の場を世界に広げている。筑豊の名門、麻生グループの御曹司、麻生巌氏は株式市場で活躍しており、日本の台所、豊洲市場の東都水産(株)に投資する。麻生氏は第2の孫正義氏になれるか。
長谷氏が仲介し、東都水産と麻生の資本業務提携が成立
改正卸売市場法施行で、規制が緩和され、水産界に風穴を開けてきた三陽社長の長谷氏に好機が到来した。長谷氏は従来営業本部、海外事業本部を担当していたが、東都水産が6月17日に開催した定時株主総会を経て、取締役会長に就いた。
長谷氏の仲介で、東都水産と麻生の資本業務提携が成立した。
「安定した株主のもと、自由に成長戦略を描くことができる。豊洲でナンバーワンになる」。東都水産の江原恒社長は提携発表の翌10日朝、全社員に宣言した。魚介類の宝庫で輸出拠点である九州の漁師らと日本最大の魚河岸(※)を結び、成長を目指すという。
東都水産が麻生と組んだ狙いは、物流改革だ。年間を通じて多種多様の魚があがる長崎や佐賀などの主要港に、麻生と共同で魚の自動選別装置を導入し、出荷にかかる時間と人件費を抑える。「全国の消費者にピチピチの魚をよりお得に提供できる」と仕掛け人の長谷会長は力説している。
東都水産は、和食やすし用の魚はもちろん、アジフライなど加工品も凍結技術を用いて九州を拠点に世界に輸出する。国内では麻生グループの病院や学校が販路になる。
三陽が武器にしているのが、水産物を瞬時に凍結する技術だ。高い鮮度を維持したまま冷凍保存できる。製氷機製造のアイスマン(株)(久留米市)が開発した。
水産物の輸出には品質保護の観点から、空輸を用いるのが一般的。しかし、空輸はコンテナを使った海上輸送と比べて、コストが高い。この凍結技術を使うことで、品質を保持したままで海上輸送できる。長谷氏が、東都水産の筆頭株主になったのは、凍結技術を使って、東都水産から海外に輸出することにあった。九州の魚を海外に輸出する念願が一歩近づいた。
第2の株主ヨンキュウが筆頭株主に躍り出る
麻生と東都水産の資本提携には、もう1つの狙いがある。三陽に対抗して、2位株主のジャスダック上場、養殖魚を販売する(株)ヨンキュウが東水株の買い増しを強めたためだ。東水と麻生の提携が発表直後の11月25日、ヨンキュウは財務局に変更報告書(5%ルール)を提出。東都水産株式の保有比率を14.02%に高めたことを明らかにした。
東都水産の9月30日時点の大株主は、13.24%を保有する三陽が筆頭株主で、ヨンキュウは保有比率が10.16%で第2の株主だったが、買い増して、筆頭株主に躍り出た。
愛媛県宇和島市に本社を置く養殖魚販売のヨンキュウは、大分県佐伯市に種苗センターを構え、マダイの養殖技術を確立。今年3月、マルハニチロと資本業務提携し、全国への販路拡大を目指しており、東都水産への出資を拡大した。
マルハニチロは9月30日時点で、東都水産株の8.08%を保有する3位株主。ヨンキュウとマルハニチロと合わせると保有比率は22.10%になる。
筆頭株主だった三陽の保有比率を大きく上回る。長谷氏が仲介した麻生が東水株の3分の1超を取得すべく、友好的TOBは実施するのは、ヨンキュウ=マルハニチロに対抗する狙いがある。麻生のTOBに、ヨンキュウとマルハニチロがどう出るかという点に最大の注目が集まる。
(つづく)
【森村 和男】
※:産地から送って来た魚などを取引する市場。 ^
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