【IR福岡誘致特別連載14】ハイローラーとジャンケットとは
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著名なカジノ専門誌『Inside Asian Gaming』は、マカオのVIPゲーミングセクターが2013年に、2,385億4,000万パタカ(約3.2兆円)というゲーミングによる過去最高の粗利益を記録したと伝えた。この最高利益の記録はいまだに破られてはいない。これは、中国本土からマカオを訪れる超富裕層のプレイヤー「ハイローラー」の存在が背景にあることが大きな影響を与えている。今後は日本のIRについても、この富裕層の集客策が非常に重要である。
カジノビジネスでは、ラスベガスとマカオが比較され、マカオが世界一だと評されている。しかし、双方のビジネスは根本的に手法が異なっており、比較すべきものではない。また、米国と中国では国民性、文化、歴史に大きく異なっている。
マカオでは、今年亡くなった世界的に著名な「カジノ王」スタンレー・ホー氏の「ホテル・リスボア」(SJMホールディングス)、人いる妻の1人の実子のローレンス・ホー氏が経営するMelco Resorts(メルコリゾーツ)などの中華系カジノホテルがその代表格である。そのため、マカオではIR施設といってもカジノから上がる利益率が全施設収益の90%以上を占め、異常に高いと言われている。
一方、ラスベガスでは、MGM Resorts(MGMリゾーツ)グループに代表される米国一のホテル部屋数、約5000室をもち、エントランスに巨大なライオンの像を設置しているMGM グランド、噴水のショーのあるベラージオ、ピラミッド型ホテルのルクソール、エッフェル塔のあるパリスなど、数えきれないホテルがカジノエンターテインメントを併設している。これらの施設のカジノビジネスによる利益率は施設収益の40~60%と言われている。
MGMは、よく知られるようにハリウッドの老舗映画スタジオ(映画の最初に登場する吠えたライオンのロゴが有名)であり、すべての施設において、古くからスターのショー、マイク・タイソンのボクシング世界戦、海賊や火山の噴火のショー、アーケードの天井の音楽、最近では噴水のショー、シルク・ドゥ・ソレイユによるショービジネスの「O(オー)」などの無償または有償のエンターテインメントが併設されてきた。これらの家族で訪れて遊ぶことができる総合施設群は、現在のIRの形態に近く、これが米国のカジノビジネスの歴史なのである。
一方、マカオではカジノ王スタンレー・ホー氏の戦略と主導により1970年頃から、新たに「ジャンケットビジネス」が出現し、それらにライセンスを付与して、上記のようにカジノ収益性を大幅に増大させた。しかし、ジャンケットの企業数は2013年の235社をピークとして現在は95社にまで激減している。これは、中国の習近平国家主席による「虎もハエもたたく」という綱紀粛正による当然の結果である。
ジャンケットビジネスとは、ラスベガスには存在せず(カジノホストという類似した人々はいる)、マカオのみで認可されたカジノビジネス関連の業態であり、中国の共産党員を含めた超富裕層「ハイローラー」を集客対象としたゲーミングプロモーターと呼ばれる組織である。
ちなみに、今年逮捕された秋元司衆議院議員の贈収賄相手「500.com(500ドットコム)」はこのジャンケットであり、オンラインカジノ業者でもある。
ジャンケットは、カジノ専門の超富裕層「ハイローラー」向けのツアーや金融を取り扱う会社と考えるとわかりやすい。マカオで提携するカジノホテルの宿泊予約から、送迎、個々のプレイヤーへの賭け金の貸付、回収に至るまでの「夢のようなおもてなし」のサービス業務を請け負っている。
ジャンケットは、プレイヤーから得た収益を基に提携しているカジノビジネス企業から手数料を受け取る。中国には莫大な数の富裕層がおり、彼らにとって一晩に1,000万円以上をカジノで賭けることは日常茶飯事だ。
IR福岡誘致開発を含めたカジノ施設から上がる利益の大半は、この「ハイローラー」と呼ばれる富裕層の人々から得られるものであり、それらによりビジネスが成り立つと想定される。
また以前にも述べたように、オンラインカジノゲームなど、カジノが世界的に拡大しているなかで、IRは一般の人々に大きく経済的に貢献するものであり、「IR=ギャンブル依存症」という認識は完全な誤りである。
日本の地方のIR候補地(長崎、和歌山)を対象とする海外からのIR投資には、このジャンケットが中心となって参加していることが発表されている。香港に拠点がある開発金融と記載されている組織は、ここから派生した業者であり、上記の米国のGaming Operator(ゲーミングオペレーター)ではなく、前述したマカオカジノビジネス提携先の各関係者だ。
「安倍・トランプ密約」の経緯と、ジャンケットビジネスの歴史などを考慮すると、日本ではジャンケットが主体的に関わるカジノビジネス先行ではなく、米国のエンターテインメントが必須である。日本政府の方針に従うと、筆者はIR誘致開発の可能性があるのは、後背地人口のある巨大都市圏であり、先行するIR大阪(MGM)、IR福岡(米国系2社)とIR横浜の3カ所のみとの結論に達している。
【青木 義彦】
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