2024年11月21日( 木 )

【「ブラモン」知っとう?】災害に備えて首都圏の企業をM&A 『ブラックモンブラン』の竹下製菓

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■ねらいは「リスク分散」

アルプスを連想させる風車をあしらった
竹下製菓本社工場
(佐賀県小城市小城町池の上)

 “九州のソウルアイス”『ブラックモンブラン』で知られる竹下製菓(佐賀県小城市)が、M&Aで埼玉県幸手市のアイスメーカー「スカイフーズ」を傘下に収めた。1969(昭和44)年5月の『ブラックモンブラン』誕生から半世紀経っての関東進出。背景に何があるのか。

 「マスコミは首都圏への本格進出と取りざたしていますが、違います。生産拠点を分けたかったのです」と竹下真由社長(39)。頻発する自然災害に備え、生産拠点をもう1カ所確保してリスク分散するのが狙いと強調する。

 事実、20年8月の佐賀豪雨では工場兼本社を置く小城市でも、近くの牛津川が越水して被害が報告された。同社は小高い丘に立地しており、浸水の可能性は低いとみられるが、竹下社長は「工場は1カ所のほうが効率はいいが、被災したら生産はすべてストップする」と話す。

■リケジョ社長のM&A戦略

 同社は1927(昭和2)年の設立。竹下社長は東工大工学院経営工学系修了後、外資系コンサル会社で4年間勤務。5代目社長に就いたのは16年4月だった。

 竹下社長はM&Aするにあたって、〈現工場から離れた地域の同業他社〉と声掛けして、M&Aセンターや金融機関に会社探しを依頼した。「新工場をゼロから立ち上げるよりも、同業他社の工場を譲り受けた方が効率的」と判断したためだ。

 その結果が、相手先ブランドでアイスを受託生産する「スカイフーズ」(埼玉県幸手市)だった。得意とする商品は、竹下製菓が手がけていない一口サイズの小粒アイスやカップアイスで、しかも大消費地に立地する。願ってもないような会社買収にも思えるが、竹下社長は堅実だ。

 その考えを反映してか、10月13日付で買収を終えたが、スカイフーズは社長が竹下社長に交代しただけで工場長以下のスタッフはそのまま。社名もそのままで、相手先ブランドの受託生産を続けている。

 「アイスメーカーは装置産業だから、つくるだけなら、いっぱいつくれます。しかし、つくった商品をお店に置いてもらい、お客さまに買っていただかないと」と竹下社長。当面は生産ラインの非稼働時間を減らす一方、メーカーと小売店の間に入る卸売商社対策に取り組むという。

■10年で首都圏浸透を目指す

 最大消費地の東京都で『ブラックモンブラン』を扱うのは、スーパー「サミット」や「ライフ」、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」など限られる。九州出身者を中心に高い知名度の割に街中では手に入れにくい。その分、商機は眼前に広がる。

 日本アイスクリーム協会が6月に発表した「アイスクリーム類・氷菓」販売実績によると、19年度は5,151億円(メーカー出荷額)。11年度以降は拡大基調で人口減少に逆行する珍しい市場の1つ。「会社の体力に見合った〈草の根活動〉で10年くらいかけて、首都圏のお客さまを増やしていきます」。冷静にそう話す竹下社長は、10年後の会社像をすでに描き切っているのかもしれない。

アルプス最高峰のモンブランにチョコレートをかけたイメージから生まれた『ブラックモンブラン』は、
累計販売本数が10億本超。竹下製菓のHPでは、大人買い「31本セット」を購入できる(竹下製菓HPより)

 

【南里 秀之】

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