【IR福岡誘致特別連載16】行政主導のIRと日本の官僚組織
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公務員にボーナスを平気で出す酷い政府
今年最後の連載は、新型コロナの再感染拡大を受けて、右往左往する政府と責任をたらい回しにする東京都を含めた行政機関について、IR誘致開発事業との関連を考察する。
先日、誰にはばかることなく、このコロナ禍(戦時下)のなかで、国家公務員に多額のボーナスが支給された。その額は65万円、昨年よりも3万円減ったのみ、平均年齢は34.6歳だ。特別給付金10万円ももらったうえでの支給である。福岡県および県内市町村の地方公務員にも、同様に支給された。
菅首相を含めた政治家にも同様の支給。首相、閣僚、知事、市長などは、ボーナスの一部を返納したものの、国民は怒りを覚えないのだろうか。全員が行政の責任者であり、全額を辞退すればよいと思う。
世間はこれだけ大変なのに、激務の環境下の看護師は給与が安い(残業をしないと年収300万円以下)、ボーナスは出ない、各地の病院は倒産寸前。医療従事者および職員に対する慰労金もいまだ大半が届いていないという。飲食業は明日をも知れない状況である。日本人の4分の1を低所得者層(年収300万以下)が占めている。ほかの国であれば暴動が起きているのではないか。ANAでさえ、ボーナスを支給せず、人員削減が予想される。そうした状況のなか、なぜ公務員にボーナスを出せるのか。
コロナ禍で、多くの民間企業は、売上がなく、利益もなく、そして資金が回らない環境にある。国の税収も例年のようには見込めないはずだ。それにもかかわらず、人員整理どころか、わずかボーナスをほぼ例年通りに支給するとは、このコロナ禍の状況下でも、政府は国民の本当の痛みを自身のこととして理解できていないのではないか。
来年度予算案の一般会計は約106兆円、歳入予測は今年度当初予算よりも約6兆円減の57兆円で、その穴埋めを国債(借金)発行で賄うことになる。民間会社でいえば、40%以上を借入金で実行し、経営者から社員に至るまで、給料・ボーナスは高給のままで下げることはないと言っているのと同じだ。問題なのは武田総務相が批判するNHKの受信料だけではない。
IR誘致開発事業も根っこは同じ
全国各地のIR誘致開発事業も、オリンピック誘致開催事業も、Go Toを含むコロナ対策も、すべての関連組織の根っこは同じである。それは、"親方日の丸"の官僚国家の行政には胆力がないということだ。
高度成長と平和ボケで既得権を得ている行政組織が、IRを促進できるわけがない。全国の各組織はガバナンス、コンプライアンスという言葉で言い訳することに終始しており、リスクを取れず、一度言い出したことを止める勇気も持ち合わせていない。延々と続いている官僚組織主導の弊害である。
後背地人口が少ない和歌山市、長崎、佐世保市では、コロナ感染拡大で海外観光客がほぼゼロにまで激減しているのが現実であるにもかかわらず、いまなおIR推進を継続し、税金の無駄遣いをしている。
この状況を生んだ原因は、一度決めたことは変えられない元官僚の政治家と行政組織にある。決めた予算を使い切るのが、日本の官僚文化になっているが、民間企業はそのようなことはできない。
このような理由から、IRの誘致開発事業を行政主導で実現することは困難であるとみている。IR大阪は、たまたま胆力のある知事と市長に恵まれ、加えてオリックスの宮内オーナーの存在のおかげで具体的に進んでいるだけである。同じく行政主導のIR横浜は、肝心の候補地の住民が反対しており、実現は難しいのではないか。
その点、IR福岡を主導するのは、行政ではなくJC福岡という若者の民間組織主導である。加えて候補地の住民側からIR誘致の要望が出されている。この戦略は近年稀に見る正しいものであり、実現の可能性は高いのではないか。来年、IR大阪においてオリックスのような役割をはたす企業が福岡でも現れれば、完璧になるだろう。筆者はこれを期待して、本年のIR福岡誘致特別連載を締めたい。
【青木 義彦】
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