県民に寄り添いながらコロナ禍を乗り切る(前)
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第70代福岡県議会議長 吉松 源昭 氏
昨年6月24日、第70代福岡県議会議長に須恵町出身の吉松源昭氏(52)が就任した。2003年の県議初当選以来4期16年にわたって県政若手リーダーの1人として、常に名前のあがっていた吉松氏。飾らない人柄から、地域住民だけでなく政界関係者で吉松議長を慕う者は多い。「県民に寄り添う」を政治信条とする吉松氏にコロナ禍など県政のさまざまな課題について聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)
コロナ禍に打ち勝つために
――吉松議長のことは、県政若手リーダーの1人として注目していました。県議会議長になられたことで、さらに県政に対しての責任も増したと思います。まずは福岡県政の当面の課題などをお話しいただけますか。
吉松 ありがとうございます。まずは議長としての重責を感じているところで、とくに昨年は全国的にコロナ禍が全国で猛威を振るい、福岡県も少なからぬ影響を受けました。コロナ禍への手当は避けて通れない部分だと思います。
昨年4月7日に緊急事態宣言が発令されて5月6日に解除された後、7月中旬からの感染者急増を受け、8月5日から10月8日まで、「福岡コロナ警報」を発動しました。県内の感染状況は比較的落ち着いていると評価していますが、昨年11月以降には感染者が増加しており、いまだ予断を許さない状況にあります。
これまでも、県民や事業者の皆様、とくに医療関係者をはじめ各分野で社会を支えていただいている皆さまにはご理解とご尽力をいただいてきました。季節性インフルエンザの流行期もみすえながら、県議会としても各方面にさらなる注意喚起をお願いしなければならない状況です。また、コロナ禍のなかで不幸にも職を失われたり、経済的困難に直面している方もたくさんいらっしゃいます。こうした方々への支援と県経済回復の取り組みを進めていかなければなりません。
また、コロナ禍が1年にわたって継続しており、「Withコロナ」とも表現されるように、ウイルスとの戦いは決して一過性のものではありません。新型コロナウイルスをはじめとする人と動物の共通感染症にどのように向き合っていくのか、これは人類共通の課題でもあります。人や動物の健康、そして環境の保全は一体のものとしてとらえるべきで、医学や獣医学の垣根を越えて取り組むべきという「ワンヘルス」の理念が世界で提唱されています。とくに福岡県は、(公社)日本獣医師会の会長である藏内勇夫県議のリーダーシップのもとでワンヘルスに関する国際会議を開催するなど、早くからこの問題に取り組んでまいりました。
その取り組みの一例として、「アジア防疫センター」(仮称)の県内誘致があります。地理的特性から、福岡県は古来より大陸との人的・物的交流が盛んであり、伝統的にアジア各国との強い結びつきがありました。こうした歴史的背景のもとで感染症の水際対策(防疫)を担い、人と動物の共通感染症対策の拠点となり得る新たな機関を誘致するというものです。ここでは各種研究とともに人材育成も行う計画です。すでに九州地方知事会や九州各県議会議長会などで提案し、方向性については承認をいただいています。今後は、議会と知事が一体となって、国に早期整備を求めていきます。
――コロナ禍への対策はもちろんですが、近年の豪雨被害の多発状況などをみますと、県民としては防災対策の進展についても気になるところです。
吉松 福岡県では、平成29年7月九州北部豪雨から令和2年7月豪雨まで、4年連続で災害に見舞われました。
被災地の復旧・復興の取り組みは、県として当然進めていかなければなりません。これまで、県南を中心に何度も浸水被害が発生しており、昨年はとくに大牟田市や久留米市などで大きな被害が発生しました。県議会としても県や国に対して必要な予算の確保や復旧工事の早期着手を進めるとともに、被災者や被災企業、農業者などへの支援を引き続き求めていきます。
17(平成29)年7月の九州北部豪雨で被災したJR日田彦山線の早期復旧・復興の問題もあります。県議会と「九州の自立を考える会」の取り組みによって、ようやくBRT(※)での復旧ということで落ち着きましたが、これで終わりではありません。今後は沿線地域の振興が課題ですので、引き続き議会と執行部が連携したうえで取り組んでいきます。
検査体制、医療提供体制の拡充で感染拡大に立ち向かう
――新型コロナウイルスは、福岡県内でもとくに昨年12月以降に1日の感染確認数が増えるなど、収まる気配がありません。全国に目を向ければ、北海道や東京都、大阪府などが医療崩壊の危機にあります。
吉松 もちろん、医療崩壊は絶対に避けなければならないことです。新型コロナウイルスの感染拡大をどう食い止め、どう収束させるかという問題はもちろん重要ですが、今回の経験を踏まえたうえで今後発生する可能性のある新たな感染症にどう対処するかということも考えなければなりません。
福岡県では昨年2月20日に初めて感染が確認され、全国の感染拡大とほぼ同じように2度(3~6月、7月中旬以降)の感染拡大が起きました。11月12日時点で、県内の1日当たりの新規感染者は7月31日の169人が最多で、県内の感染者累計は5,000人超、都道府県では7番目の多さとなっています。
4月から5月の緊急事態宣言の際には外出自粛や休業要請などで感染拡大を防ぎましたが、こうした強い措置は「自由や権利の制限」という側面もあるため、長くは続けられません。検査体制の充実や医療提供体制の維持、確保を中心に据えて、社会全体で感染防止を図りつつ社会経済活動のレベルを上げていくことが必要です。
県では、1日当たり4,208件のPCR検査体制を確保しました。今後は季節性インフルエンザの同時流行も懸念されており、かかりつけ医でどちらの検査も受けられる「診療・検査医療機関」を指定しています。さらに、新型コロナウイルス感染症の患者さんを受け入れる療養病床は551床を確保し、無症状者や軽症者を受け入れる宿泊療養施設も4施設1,057室を確保しています。現状はこうした取り組みで十分対応できる見込みですが、今後も引き続き、患者数の状況に応じた医療提供体制の確保に努めていきます。
(つづく)
※:Bus Rapid Transit=バス高速輸送システム ^
<PROFILE>
吉松 源昭(よしまつ・もとあき)
1968年糟屋郡須恵町生まれ。87年福岡大学附属大濠高校を卒業。88年司法書士事務所入所。92年に行政書士事務所を開業。96年衆議院議員秘書、2002年福岡県議会議員秘書を経て、03年に福岡県議会議員初当選。08年障がい者施設理事、更生保護施設理事。17年自由民主党福岡県支部連合会政務調査会長、県土整備委員会委員。関連キーワード
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