【企業研究】オリックスが得意のM&Aで誤算~水虫薬に睡眠導入剤成分混入の「小林化工」を連結子会社にしたばかりった!(2)
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ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの小林化工(株)が製造した水虫薬に睡眠導入剤成分が混入し、健康被害が相次いだ。同社の筆頭株主は、総合リース大手のオリックス(株)。2020年1月、小林化工の株式の過半数を取得し、連結子会社化して取締役2人と監査役を送り込んだばかりだった。得意のM&A(合併・買収)でつまずいた。
杜撰な製造管理が発覚
小林化工は1月20日、福井県に混入の経緯や問題点をまとめたファイル2冊分の報告書を提出した。これを機に、報道各社は一斉に、その内容を報じた。「裏手順書」や「二重ミス」などの言葉が並び、「エッ!」と驚くような内容だ。報道を下記に要約する。
睡眠導入剤成分が混入したのは、皮膚病用治療薬「イトラコナゾール錠50『MEEK』」の製造中。省令違反や社内規定違反が相次いで発覚した。
国が承認した手順書では、薬の主成分をすべて入れることになっていたが、「裏手順書」では2度に分けて入れると記載されていた。錠剤を固まりやすくするためとみられ、製造現場では十数年前から採用されていた。
問題の薬では、従業員が2度目に入れようとした主成分を、睡眠導入剤成分と取り違えていた。主成分と睡眠導入剤成分は、同じ棚の上下に並べて置かれていた。2人1組で相互にチェックしながら薬の調合にあたるとする社内規定に反し、1人が作業場から離れた時間帯があったことや、離れた1人が作業の確認済みのサインをしたこともわかった。
出荷前のサンプル検査で、異物混入を疑わせるデータの反応に気づいた作業員から報告を受けた上司が問題ないと判断し、詳細な検査をせず「合格」とみなしたことも判明した。
この薬は2020年夏に製造され、約9万錠が出荷された。服用した患者は全国31都道府県に344人。6割超の214人が、意識消失や記憶喪失、ふらつきなどの健康被害を訴えた。このうち2人が死亡し、運転中に意識を失うなどして22人が交通事故を起こしている。
後発医薬品「御三家」につぐ2番手グループ
小林化工はどんな会社か。非上場会社なので、公開データに乏しく、よくわからない。
経口剤や注射剤などのジェネリック医薬品のメーカーで、誤飲を防ぐ視認性の高い製剤など付加価値の高い医薬品を扱っているほか、市場成長が見込める抗がん剤の開発も手がけていると報じられている。後発医薬品業界では、東証一部上場の日医工(株)、沢井製薬(株)、東和薬品(株)の“御三家”に続く、第2グループに位置する。ジェネリック医薬品とは、新薬(先発医薬品)の特許が切れた後に発売される新薬と同じ成分の後発薬をいう。
小林化工の小林広幸社長が、(一財)日本医薬情報センター(JAPIC)の会員向け機関誌「JAPIC NEWS」(20年11月号)で、オリックスから過半数の出資を受け入れた理由について語っている。それに基づき、同社の歴史をたどってみよう。
小林広幸氏は1963年生まれの小林化工3代目社長。祖父の小林政国氏は配置薬を売る「富山の薬売り」で、戦後の46年、福井で有志と配置薬を生産する福井県製薬所を立ち上げた。2代目の父親・小林喜一氏が61年に、医科向け医薬品事業を展開するため小林化工を設立した。
家業が「薬屋」だったので広幸氏は、大学では薬学部を専攻。卒業後、金沢大学の研究室を経て、住友製薬(株)(現・大日本住友製薬(株))に入社、MR(医療情報担当者)の営業を行った。MRは薬剤師の資格者として、医師に薬の処方や効能を説明する仕事だ。
94年、創業家の直系の長男として家業を継ぐことを決意し、小林化工に入社。当時、売上高は12億円程度、MRは全国に7人しか配置していなかった。広幸氏は営業を担当し、全国の販社や病院、診療所を飛び回った。
転機は、96年に抗ウィルス剤「ビクロックス点滴静注」を発売したことだった。先発品は凍結乾燥の粉末製剤だが、小林化工は液剤化に成功し、後発品事業への本格参入を検討していた明治製菓(株)(現・Meiji Seikaファルマ(株))との販売提携を実現させた。広幸氏は2007年、父親の後を継いで小林化工の社長に就いた。
(つづく)
【森村 和男】
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