【IR福岡誘致開発特別連載27】なぜ、IR長崎には中国の富裕層の国外カジノ観光禁止規制が致命傷となるのか?
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中国人富裕層の国外カジノ観光禁止規制
IR福岡誘致開発特別連載25、26で中国の習近平政権が近く実施するであろう「中国人富裕層の国外カジノ観光禁止」規制を報じた。『西日本新聞』を含めた各紙も一斉に、同様の報道をしている。当初からの筆者の懸念が、また的中したのだ。
なぜこの問題がIR長崎にとって大問題であり、“致命傷"となるのか。おそらく、ほとんどの一般人にとって、感覚的には理解できても具体的な内容はわからないだろう。もちろん、IR長崎を推す各関係者も同様の認識かもしれない。そのため、詳しく説明したい。
筆者は、IR福岡の誘致を積極果敢に実施しているJCI福岡とその関係者に、再度、取材を試み、この中国の規制がIR福岡とIR長崎におよぼす影響とその違いを聞いた。この問題が及ぼす影響は、片方の候補地にはプラス、もう一方にはマイナスという大きな違いがある。
IR福岡の集客予測~中国人富裕層の観光客は多いのか?
まず、JCI福岡関係者が、昨年、福岡市行政などの各関係機関に提出した上申書と本件計画書のなかのFeasibility Study Summary(事前の可能性調査概要、米国調査企業作成)の一部の調査項目を見せながら、詳しく説明してくれた。
IR福岡の集客予測はコロナ前で年間1,280万人。アジア諸国を中心とした海外観光客の集客予測は、首都圏、関西都市圏、福岡都市圏で年間約3,700万人(2026年)と記されている。そのうち、首都圏が60%、関西都市圏が30%、福岡都市圏、北部九州は10%の370万人としている。
海外観光客のうち、中国人観光客は全国で年間2,500万人、韓国は年間370万人、台湾は年間230万人、残りはベトナム、タイ、その他となっている。圧倒的に中国人観光客が多いが、前述の北部九州都市圏に来るのは、このなかの10%、250万人なのだ。加えて、これらのすべてを習近平政権が国外カジノ観光禁止として規制するのではない。
この調査概要には、さらに詳しいMarket Potential VIP Segment(ハイローラーと呼ばれる超富裕層のカジノ観光客)調査がある。これが、中華系が主体となる本件計画でとても重要な富裕層のカジノ観光客の数値である。北部九州都市圏の中国富裕層の観光客のうち10%の年間25万人(VIPのハイローラー)が規制対象の"国外カジノ観光客"になる。この数値は、IR福岡全体の集客予測のわずか2%にも満たない。いうまでもなく、巨大な"後背地人口を保有する福岡市都市圏"だからこそ、このような数値になり、今回の中国の規制には大きな影響を受けないのである。
IR長崎の集客予測~中国人富裕層の観光客誘致が要
では、IR長崎ではどうか。長崎市行政がお上を忖度して作成した本件誘致開発計画(国内調査企業作成)では、14年の海外観光客は年間1,034万人、ちなみに中国本土と香港からは年間334万人となっている。これは上記の福岡都市圏と比較して、海外観光客数は年間664万人、中国本土と香港からは年間84万人も多いという驚きの数字である。
IR福岡とは大きく異なり後背地人口のないIR長崎は、海外観光客のうち、中国からの富裕層の観光客誘致をどのくらい見込めるのかということが、本件誘致開発事業の要となる。さらに、1,000万人といわれる超富裕層のカジノ観光客ハイローラー、香港、マカオをビジネスの中心として、そのリストを保有する中華系のOshidori International Holdings、その他のRFP(提案依頼書)を提出する候補者が、本件ビジネスの重要なファクターになっているのだ。
この中国人超富裕層のハイローラーがカジノで落とす莫大な"お金"が、IR誘致開発事業の主たる収益源であり、これがないと採算は取れない。ちなみに、今回の習近平政権による規制のIR福岡への影響は、国内からの集客計画を主とする全体の収益のうち、多くても7%程度にすぎないと聞いている。
前述の通り、コロナ前に作成された26年の全国の海外観光客誘致予測は年間3,700万人、上記の長崎では、その約30%弱の1,034万人としている。この数値に信憑性はあるのか、これを本件計画にどの程度、反映するのかについて、注目が集まっている。加えて、今後、中国人富裕層の観光客をどのくらい計画数値に含めるのかということが、最大の要である。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、この計算の根拠がすべてにおいてなくなったはずだ。
IR誘致開発事業計画では、海外観光客を頼らずに運営できるように、IR大阪やIR福岡のように候補地周辺に巨大都市圏の後背地人口があるかどうかに左右される。また、IR福岡が先行して具現化すれば、アジア諸国を中心とした海外観光客の全国の集客予測における割合も10%を超える可能性がある。誘致開発を早くすればするほど、有利になるという訳だ。
従って、海外観光客に集客を頼らざるを得ない地方都市は、残念ではあるが、これを機にIR誘致計画を白紙に戻し、これ以上の税金の無駄使いをすべきではないのである。
【青木 義彦】
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